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悪魔な俺とゾンビな嫁の子育て日誌  作者: ぐでんぐでん
幼年期まで 開拓地
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東部開拓史の始まり

 モンテグリュンは砦と言ったほうが似合うかもしれない開拓者の町だった。

やたら頑丈な石造りの防護壁に囲まれてはいるが、建物は木造で最高で3階建てまでしかない。

ど真ん中で建設中の塔はさらに大きいが。

西部劇と違うところは住民の武装が銃ではなく剣や槍だというだけだ。


「あの塔が出来上がったら本国と直接結ぶ転移門になるんだって」

「へ~」


 ここはルルの居た本国から帆船で3か月東へ行った大陸の端。

海流の関係で容易く来れるが、帰るのは非常に困難ということらしい。

そういうことで、この本国からはるかに離れた町は今現在一方通行の開拓者の町になっている。

なぜ悪魔の俺がこいつのご機嫌を伺わにゃいかんのかよくわからんが。


「この銅像が、この大陸を発見したコロン・ダ・ガマだ。たまたま帰還の魔道具をもってここに漂着したらしい」

「その話は聞いたことがありますけど、こんな顔してたんですね」


 ルルの記憶には無機質の石造りの神殿しか無かった。

ここのような人間くさい生活も無かった。

子供の用に目を輝かせてきょろきょろしているルルに仕込んだ知識を披露する。

住民の記憶を覗いて仕入れたやつだけどな。


「これから行くのは開拓管理局ってとこだ。登録するだけで開拓地がもらえるんだとさ」

「へ~」


 町で唯一の3階建てが開拓管理局、奥にはカウンター式の受付があって右には喫茶っ点を兼ねた待合、そして左の壁にはでっかい地図。

ルルたちを引き連れた俺は地図の一番奥へ、待合にたむろしていた男たちの視線が地図の半分を超えたところから集まる。

そして俺は男たちの期待に応えて一番端に一枚だけ離して赤いピンで留めてあった紙を取った。

そして俺が窓口でその紙を差し出すのと同時に一人の男が立ち上がり、俺が捕った紙の横のやはり赤いピンで留めてある紙をはがして俺の隣の受付へ。

受け付けのおばさんは、隣の綺麗なお姉さんのところに行こうとしたらルルが睨んだんだよっ、事務的な声で説明を始めた。


「供託金を銀貨一枚お支払いいただきますと開拓地が1家族に1区画支給されます。3年間非課税ですが4年目から年に銀貨1枚の課税となります。滞納された場合、1年だけは延滞税を払うことで猶予されますが、猶予期間が切れますと開拓地は没収させていただきます。なお供託金は開拓地から離れるときのみの返却となります。ここへご署名をどうぞ」


 俺とルルは名前を書き、リルは指先にインクをつけて名前に代えた。

おばさんは表情を隠そうとしているが、珍しいことをさせられて喜んでいるルルを見る目が全力でかわいそうにオーラを放っている。

未開の新大陸で本来土地なんて只でも当然というものだ。

それを約1km四方で区切って1区画として分配し、手数料に供託金を取って利益が出だしたら税を取る。

自然と戸籍も整うし、開拓者が開拓した土地なのに開拓管理局を運営する本国が主権を主張する。

なんとも頭のいいやり方だと俺は思う。

ちなみに銀貨1枚は受け付け担当のひと月分の給与にあたる。


「ねぇあなた、なんとなくかわいそうな目で見られてなんか感じ悪い」

「かわいい嫁さんと子供がいるのに特級危険地帯の開拓地を申し込んだからだよ」


 俺が申し込んだ開拓地は最も危険とされていて、そのため面積が100km四方もある。

そのくらいの広さでもないと無謀な開拓者が釣れなくなってきているわけだ。


「大丈夫よね?」

「もちろん」


 そんな会話をしていると先ほど隣の窓口にいた男とその連れが近寄って来た。


「初めまして、隣で開拓することになります。俺がジョンで妻がメアリー、この子がレオです」


 いかにも偽名っぽい名乗りを上げたのは俺の次ぐらいにいい赤い髪の男、どこかの王子様と言っても通用するだろう。

そして連れているのはやはりどこかの王女様だといわれて納得できる蒼い髪の女性。

この二人の赤ちゃんなら将来期待できそうだが、リルは嫁にやらんからな!

笑い出すルル、ジョン、メアリー。

おっと声に出してしまったようだ。


 ジョンたちとは明日の正午に出発の待ち合わせを約束して別れ、その夜。


「キャー、また私が二人になった」


 たぶんそうなると思ってたよ。


「キャー、私が生肉食べてる」


 だから先に夕ごはん食べようと言ったんじゃないか。


「キャー、私がリルの手かじってる」


 甘噛みしてるだけだろ、痛けりゃリルが泣くだろ。

もっと自分を信じろ。


「キャー、トムチンが私の服脱がしてる」


 トムチンいうな。

夫婦だろ、俺たち。

まったくバンシールルがうるさい、音の洩れない結界張ってて良かった。


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