笑顔の後ろで
グレゴリウスだっけか、爺さん牧師は俺の目線が後ろのシスターに集中して挨拶もそちらに掛けたのを苦笑いしながらさりげなく流して彼女を紹介してくれた。
「マグマリアさんだ。彼女はうちのお向かいの教会のシスターで……。」
爺さん牧師の紹介をろくに聞きもせず、俺は電光の速さでそのシスターに襲い掛かり裸にひん剥いていた。
……。
そうやっちまったぜぃ。
……。
俺はそのいかにもおとなしそうな優等生タイプの美人をスッポンポンにむしった。
……。
へっへっへ、俺って悪魔だぜぃ。
……。
いてっ!
いたたたたたっ!
ごめんなさい、じゃなくて必要不可欠なんですよルルさまっ!
「どうされました?」
いきなり顔をしかめた俺にきっちりと服を着込んだシスターは怪訝な顔をする。
もちろん俺がひん剥いたのはシスターの心のガードでスッポンポンってのは比喩、わかるだろ?
ルルのいる場所で実際に女性の服なんぞに手を出せるかい。
悪魔だって命は惜しいさ。
それに俺は両手でレオをだっこしてるというアリバイがある。
性的犯行は不可能だ、うん。
言い訳してるのはルルが ”何してるのよ” なんて声を出さずに……いてぇっ!
俺は大慌てでシスターから得た情報を整理してルルに送り付ける。
マグマリア ♀ 18才 本国エルブライト州出身
・十字教聖母教会修道女
・ファーエステンド地区担当司祭代理
……。
自慢じゃないが俺は臆病だ。
だから、あの地獄で危険を避けて生き延びることができた。
今回俺が開拓管理局の支局で喧嘩を売った相手のバックにはあちらの教会が付いていたんだぜ。
だから敵性人物は遠慮なく心を覗かせてもらう。
グギャァ。
た、たしかにお向かいの教会って聞く前にこのシスターに襲い掛かりましたデス。
し、しかし教会関係者は危険なのです。
だって俺 『悪魔なんでしょ』 はい、スケベ無いです。
心がつながっているルル様に見られた下心の言い訳しながら痛みをこらえる。
態度に出さず普通の顔をしている俺、役者やなぁ 『悪魔でしょ』 その通りでございます、ルル様。
ふぅ。
マグマリアさんが信仰しているのは、この世界でメジャーな地球のキリスト教によく似た十字教。
唯一絶対なる神と神の子と聖霊の三つを信仰の対象としていて、ルルは聖霊の中心たる光の聖霊に仕える巫女たちのトップ、光の聖女だった。
まさにルル様だったんだ。
そして爺さん牧師、グレゴリウスさんが信仰しているのは十字教から分かれて異端とされた一派。
決して相いれることのないはずの二人が仲良く市場で露店なんてしているのは……ぷっ……おもろぃ。




