ゾンビに申し込みました
あ・な・た なんて透明女に言われて俺はかっと頭に血が上った。
この辺、俺が悪魔でも人と同じようになるのが面白い。
そんなことより、俺は子供まで生んだ女が別の男に媚を売るなんて許せない、悪魔だけど。
死が二人を分かつまで、死んだらどうでもいいんじゃないかってはっそうがゆるせねえ、悪魔だけど。
「お前夫持ちだろう、なに言いやが……ちょっとその頭の中みせてもらう」
透明女の軽い言動とその真摯な目のギャップに違和感を覚えた俺は、直接心に聞いてみることにした。
逃げようとする透明女を、触手のように分かれて伸びた俺の影がからめとる。
何度目かのランクアップの時に出来るようになったのだが原理とか難しいことは俺にもわからん。
とにかく、怯えた、そそるねぇ、透明女の額にその一本が突き刺さり記憶を吸い出す。
……。
確認のためにゾンビ女を寝かせて。
「悪かった、すまん」
「最低です」
真っ赤になって、幽霊がなぜ赤くなるのかその辺の理屈もわからん、プンスカ怒っている透明女にひたすら謝った。
子供産んでんのに処女とかありえねーだろと、目で見て確認してしまった俺って普通だよな。
ごめんなさい、確かにスケベが混じっておりました。
しかし、お前も嘘ついただろう。
ルルフェリーナって立派な名前がちゃんとあるだろうが。
まぁビッグネームだから隠したかったってのも理解できるけどよ……。
透明女が落ち着いたところで真面目モードで話し合うことにした、俺悪魔だけど。
「お前って聖女様候補なんだって?」
「はい」
「女だけの神殿の奥にいたはずなのにおなかが膨れたと」
「はい」
聖女が子供産んだら神に対する不義だって処刑されるってか。
「それで大きくなっていくおなかを隠すのに病気だと閉じこもっていたけど、ある日魔法でここに連れてこられて縛り付けられて今に至る」
「はい」
結構重い、な。
「仕方がない、赤ん坊ごとめんどう見てやる」
「ありがとうございます」
「ルルフェリーナ、お前は俺の嫁だ」
「違います、それって絶対違います」
ゾンビ女を赤ん坊ごと抱きしめた俺の後ろで透明女がおたおたと浮かんでいた。