そう簡単にいくはずが無かった
タプランさん改めソニアさんは真剣な表情でもう一度繰り返した。
「ですから私たちの結婚式は開拓に一区切りしてからでいいですよね。「俺と結婚しよう。なんとかしてやる。」って確かに言いましたよね。私に掛けられた呪いを解いてください。何とかしてください」
「呪いは解けたんじゃないの?」
ルルの言う通り、ソニアさんには呪いなどもう掛かっていない。
「もう嫌なんです。自由に飛びたいんです」
見上げると体のわりに弑さなまん丸い目が俺を見下ろしていた。
「お前ホゲラか」
「ショコラです」
「え?」
ルルが驚くのも無理がない、ソニアさんの心は何者の干渉も受けていない。
俺にもわからない。
しかし今ソニアさんの体を使って話しているのは間違いなくこの鳥だ。
呪いを解けというがホゲラにも呪いの気配はない。
「詳しく調べる、俺を受け入れろ」
「はい」
俺は抵抗の亡くなったホゲラに心を重ねる。
俺は今俺でありホゲラでありソニアさんでもある。
そして心が離れる。
「自由に飛べればいいんだな?」
「はい」
俺はソニアさんを抱きしめて見つめる。
「何とかしてやる、俺の嫁になれ」
「はい」
俺はソニアさんに軽くキスして手をつなぐ。
「それじゃ行こうか」
「ねね、どこいくの? 何がどうなってるの?」
俺たちが向かったのは開拓管理局の支所。
俺とソニアさんの婚姻届けを出してソニアさんは晴れて寿退社となった。
めでたい!
「俺たちを目的地に届けたらあとは自由に飛び回っていいぞ」
心がつながっているホゲラは俺のしたことを理解している。
「ありがとございます、トムちん」
俺はトムちんで確定か、なんてことはどうでもよくとにかくこれで一件落着となった。
その夜はソニアさんが俺たちの部屋へ押しかけてきて日没と同時に寝てしまった。
「結局何がどうなったの?」
まだ訳が分かってないのが一人居た。
そういえばホゲラに同調するために心の波長を変えてたんだっけ。
俺はリルをあやしながらルルにも心が読めるようにしてやった。
説明がめんどくさい。
「ええっ! ソニアさんってもう死んでるの?」
「あいつに呪われたせいで精神的にな。ルルよりもむしろソニアさんのほうがゾンビなんだ。ソニアさんの職業的使命感なんてものが記憶とともに体に残っていて自由に飛び回りたいホゲラを縛っていただけなんだ」
俺たちの前に転がっているのは動かしていたホゲラが寝てしまったので、生命活動はあるが意思がなくて動くことのできないソニアさんの死体。
2番目の嫁さんまでゾンビだったとはなんという確率のめぐりあわせなんだ。
「なぁ、ルル」
「なに?」
「この体ルルが使ってみるか? 自由になったらもういらないってホゲラが言うんだ」




