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War  作者: kame
5/6

イザ

歩きながら話した。



「これからどこに向かうの?」


「いまからイザという街に行くの」


「イザ?」


「そう。

陸の軍隊基地がある街でね、地上では一番大きな街。

でも街に活気はなく、あるのは軍服を着た恐い男の人と火薬の臭いだけ。

その街の中央に基地があって、物資はそこでもらえるの。」


「イザ‥」


「そして空軍と戦争している陸の軍隊のことを[アスラー軍]、

私たちの敵、空軍のことを[ピアーズ軍]と呼んでるの。」


「そこにピアーズ軍は攻めてこないの?」


「わからない、でもいつ来てもいいようにアスラー軍も万全の準備で防御を固めているわ。

だからピアーズも簡単には手を出せない。」


「そうなんだ。

俺にはちょっと、

難しいや‥」


「大丈夫。

記憶が戻れば全部思い出すよ。

スカイ、大丈夫。」


「うん、ありがとう」






「あと30分程で着くはずだから。

着いたらスカイの記憶も戻るかもしれないね、ふふ」



エリは優しかった。

優しい笑顔を誰にでも惜しみなく振りまいていた。





「見えたわ。

あそこ、見える?」


エリが遠くを指差しながら言う。


距離にしたらかなりあるが、そこにははっきりと、

巨大な要塞に囲まれた大きな街がある。






「ここがイザ。

陸一番の街、イザよ。」


エリはなんだか得意げに言ってみせた。


「大きい。

すごく大きな街だ」


「私たちの目的は街の中よ。

入りましょ。」


大きな扉を開けると軍服を着た男性が近づいてきた。


「何のようだ?」


少し威圧するような喋り方。


「物資を受け取りにきました。

L52地区、Aシェルターの者です。」


エリはそう言って、ドクにもらったチケットを取り出し、衛兵に見せた。


「そうですか、最近はこの辺もピアーズの連中がうろついているという情報が入ってきています。

女性は特に危険です、くれぐれもお気を付けください。」


「はい。」


 


エリの横を歩きながら街を見ていた。

この街はエリの言ったとおり、軍の人間しかおらず、

火薬の臭いと煙が立ち込めていた。


でも、なんなんだろう。

少し、懐かしい気持ちになる。

この香り、この景色、この環境。

なんだか不思議だ。

落ち着いてしまう。





「ここが基地よ。」


ウィーン


扉が開きエリは受付まで行った。


「L52地区Aシェルター、エリ・アルファベストです。

弾薬と医療キット、食料を少々いただけませんか。」


チケットを受付嬢に見せながら言う。


「腰を掛けて少々お待ちください」


ロビーの椅子に座ってホッとしていた。


しかしこのロビーよく見ると軍の人間はおらず、椅子に座っている10~20人の人間全員が民間人だった。



「この人たち‥」


「この人たちは私たちと同じ、

近くのシェルターから物資を求めてやってきた人たちよ。

そして横の扉の奥の人たちは親を失ったり、入るシェルターが決まってなかったり、アテの無い人たちが助けを求めて軍に来たの

入るシェルターが決まるまで、軍はこの人たちの面倒を見るの。」




その扉の向こうには、腕や脚のない者、おそらく親を戦争で亡くしたであろう、子供の姿まで見えた。



こんなに胸が苦しいことはない。

戦争とは、あまりに多くの犠牲者を出し、得るものはあまりに少ない。

自由のために武器を取るのであれば、それは数多い他人の自由を奪うという事である。

戦争の愚かさ、それに気がつかない人間は…










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