外
あれから一週間が経った。
だいぶシェルターでの暮らしも慣れてきた頃だった。
「おいスカイ、
お前、武器は扱えるのか?」
シェルター生まれ、シェルター育ちの友人ミズノだ。
青い髪をなびかせながらスカイに近づいてくる。
「武器?わからない。
たぶん、扱えないと思うよ」
「それはいかんなスカイ、
このご時勢自分の身は自分で守らなくちゃいけないだろ?
特に俺らは男だ
銃ぐらい撃てなきゃいざって時に困るぜ」
ミズノは笑いながらスカイの肩にポンっと手をやった。
そして顔を近づけこう言った。
「なんなら俺が教えてやろうか。ん?」
少しミズノについて説明不足だった。
奴はナルシストだ、とびっきりの。
「う、うん」
迫力に圧倒されてついいい加減に返事をしてしまった。
「よし、なら昼飯食ったらドクに外出の許可をもらおう!」
ミズノは肩に置いてあった手をどけ、パチっと指で音を鳴らした。
「だめだ!」
「ええ!?」
ドクの一声にミズノが反応した。
「なんでだよ!?
少し外に行くだけだろ?」
「スカイは外の世界を知らんすぎる!
そんな無知がシェルターから出たらどうなる!?
空軍にばったり出くわしたらどうなる!?
あっという間に死んでしまうのが目に見えとるだろうが!」
ドクはもっともな意見を言っている。
何も出来ないスカイが外へ出て、もしも戦争に巻き込まれでもしたらそれこそ一瞬で殺されるだろう。
ドクの言い分に素直に従うしかないとスカイは思った。
しかし
「な、ならこのままこいつは一生シェルターで生活するのかよ!
それに、記憶が戻るきっかけにもなるかもしれないだろ!
そうやってスカイをずっと閉じ込める気か!」
なんとミズノが反論した。
だが確かにミズノの言ってる事も的を得ている。
「そうじゃない!
時期を待てって言っているんだ!」
「時期っていつだ!?ああ!?」
「ふん!黙れ!わしが行かせんと言ったら行かせん。」
ミズノは一瞬キッとした顔をしたが、すぐに笑顔になりこう言った。
「そういや、弾薬と医療キットがかなり少なくなっていたよな。
今夜の補給当番は俺。
ここのシェルターのルールじゃ二人一組で買い出しに行くのが原則。
俺はこいつと行くぜ!」
ミズノが言った。
「わかった。」
!?
予想外の返事。
「しかしミズノ、お前はいかん。
スカイと一緒に行く者はもうひとりの補給当番、エリに行かせる!」
「なっ、なにい!?」
「ここのシェルターの長は俺だ。
俺の言うことは絶対だもん。ばーか」
「て、てめえジジイコラ‥」
「そういうわけだからスカイ、エリに事情を説明して行ってきてくれ。
詳しいことはエリに聞いたらわかる。
ほれ、シェルター住民チケットだ。」
スカイは言われるがままチケットを受け取り、ドクのさっさと行けというジェスチャーの言うままドクの部屋を出た。
部屋の中ではまだドクとミズノが喧嘩している。
その足でスカイはエリの元へ行き、事情を説明した。
「ほんとに?」
エリは驚きながらそう言った。
「うん、ドクがエリと行けって。」
「な、ならチケットをもらわなくっちゃ。」
エリは慌ててドクの部屋へ行こうとした。
「あ、チケットってこれかな?」
そう言ってスカイはドクにもらったチケットを見せた。
「あ、それそれ!
ドクからもらったのね。」
「うん、強引に‥」
「ふふ、それがないと物資補給にはお金がかかるの。
そのチケットは政府から難民に配られ、政府が管理する物資は全てタダでもらえるのよ。」
「そ、そうなんだ。」
「そ、じゃあ行きましょ。」
そう言ってエリに連れられ出口の扉の前まできた。
ピピピピピ
ガシャン
プシュー‥
扉が開く。
そこには赤色の大地と絵の具で描いたかのように青い空、白い雲、
さっきまでシェルターの中に居たのを疑いたくなるような景色が広がっていた。
「す、すごいね‥」
「うん、綺麗でしょ。
この空の下、別の場所で戦争が起きてるなんて信じられる?」
「いや‥」
「そうだよね。
私も信じたくないな。
そんなこと。」
風になびいた黒い髪、
エリの後ろ姿は
この自然の一部かの如く
美しかった。