謎の男
ピー‥ピピピー‥
プシュ‥シュー‥
ウィーン
「ドクさん!ドクさん!」
地下シェルターの扉を開け、青年を2人で抱えなが入ってきた男の内の1人が声を荒げる。
「どうした!?誰だそいつは!?」
広間の奥に座っていた小太りであごひげの男が返した。
「急患なんだ!とにかく治療を!皆も手伝ってくれ!」
広間の中に居た男数人に連れられ、青年は小太りの男の前に仰向けにされた。
「服を脱がさせろ!血圧を測る!
身体が冷たい‥毛布だ!!湯と毛布を持ってこい!急げ!!」
「ドク‥どうだ?」
「この血圧で、なぜ生きている‥」
「え?」
「奇跡だ‥」
暖かい‥
生きてる。
まぶたを開いた。
部屋‥
ガチャ
部屋の扉が開き、人が入ってきた。
「あ、あ、あ‥」
真っ黒の長い髪で吸い込まれるような瞳の女性。
「あ、あの‥」
状況がわからない。説明しなくちゃ、説明を。
……‥!?
「‥俺は‥誰だ‥?」
「ちょっと待ってて!」
?
そういうと女性は部屋を走って出て行った。
!?
俺は一体‥
なんだ?変な感覚‥
ガタンッ
今度は小太りの男が入って来た。
「目を覚ましたか!」気分はどうだ?」
間髪置かずに部屋に次々と人が集まってきた。
「おー!起きてる!」
「大丈夫か?」
「目ェ開けたらなかなか男前じゃねえか!」
「うるせえお前ら!ここは病室だぞ!やじうま根性出すんじゃねえ!出てけ!」
「えーいいじゃねえかよ」
「黙れ!さっさと出てけ!!」
「ちッ、はいはい~」
小太りの男がそう言うと部屋から次々と人が出て行った。
「おい!マキとフジ!お前らは残れ」
小太りの男がそう言って2人の男を呼び止めた。
「どうだ?頭痛くないか?」
小太り男が言う。
「あ、はい」
「わしの名はドク。医者だ
そしてこいつらはマキとフジ。
お前が浜辺で死にかけてた所を助けてやったやつらじゃ」
マキと呼ばれる男は茶髪に短髪で眉も細い。背も体もデカく、やや恐い。
フジと言う男は同じく茶髪だが、髪が長く肩にかかっている。背こそマキと変わりはないがひょろっとしていて、なんだか挙動不審だ。
「大丈夫だったか?
食料と薬品の補充に行ってた最中にお前が倒れてたんだ。
びっくりしたよ、身体中氷のように冷たかったんだから」
マキが笑いながら言う。
「それでも息があったからここまで連れてきたんだ。
お前名前は?」
質問されてハッとなった。
「わからない‥」
!?
「記憶喪失か‥。」
ドクが言う。
「マジかよ‥」
マキも驚いているようだ。
「歳は」
ボソっとフジが言う。
「それも、わからない。」
「一時的な記憶喪失かもしれん。
とにかく今は休め。お前は一週間も目を覚まさんかったからな。
点滴で抗菌と栄養は入れてはいたが‥
腹は減らんか?
マキ、飯を持って来てくれ」
ドクがマキを見ながら言った。
「よし、待ってろ!」
マキが走って部屋から出ていく。
「記憶喪失か。
お前、地上の住人か?」
ドクが椅子に腰掛け言った。
「地上?」
「なんと、そこまで知らんか。」
「すみません、全然記憶が無いんです。」
「いや、よい。
我々人間は5000年前、空に大きな都市を造った。
増え続ける人口と発達してゆく技術、
やがてその空の都市には地上と同じ程の人が住んだ。
1000年前、空の都市の住人が巨大な施設を造った。
その施設は地上の者は入れず、空の住人専用の施設となった。
もちろん、それに反発した地上の住人も居たが、奴らは耳も貸さず、施設の秘密を守り抜いた。
施設が完成して1年が経った頃から空への旅行は極めて困難になった。
なんと空の政府が地上から空へ行くには1人1000億円というというとんでもない金を要求するようになったのだ。
しかも一度空へ行った者は地上への帰還を禁じたのだ、
当然、空と地上の関係は悪くなり、遥か7000メートル上空にある空の都市の情報は一切と言っていい程入って来なかった。
そして何の前ぶれもなく、200年前、
空から奴らは攻めてきた。
政府は軍隊を組み、200年前からずっと戦っている。
そしてここは地上のL52地区。
地下シェルターで我々民間人は暮らしている」
言葉を失った。
「簡単に説明すると、今は戦争中で
我々陸の人間は自分を守るために戦っているということだ」