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サルハゲソウグウ

「よう」


翌日。飯を買いにいくために廊下を歩いていた俺はいきなりかけられたむさ苦しい声を聞いて振り向いた。


「……誰だっけかテメェは」


「貴様を叩きのめした男、的上ガレキだ」


的上、ガレキ?……こんな大男、知り合いにいな――


「ってああ! そのツルッパゲはあん時のハゲか!」


俺は頭を見て思い出す。そうだそうだ、俺に完全敗北したあのハゲ野郎……って待てよ?


「おい、誰が誰を叩きのめしただぁ? 叩きのめされたの間違えだろうがこのハゲェ……!」


「なんだと? 何を寝言ぶっこいてやがるこのサル助が……!」


俺とハゲは互いに睨みあう。そうかいそうかい、テメェはまだ俺に殴られ足りないらしいな……!


「いいぜ、テメェがまだ俺との実力差がわからないってんならもう一回殴り合ってやるよ! かかって来やがれ!」


「ほう、大衆の前でぶっ倒されるのがお好みかこのサルが……!」


「抜かしなぁ! テメエなんぞに名乗りなんてやってらんねぇ! そのままぶん殴ってやるよおらぁ!」


「上等だ、そのままお前も寝ていろ!」


互いに拳を繰り出そうとした直後。


ガツンと、後頭部に固いものが思いっきり当たった。


「ってぇ……! 誰だぁ!」


「私だ」


見ると、そこにいたのは刀を持った黒日々だった。コイツは……!


「なぁにし腐ってくれてんだテメェはぁ!」


「レンガこそ校内で何をいきなり暴れようとしているんだ、他の生徒の邪魔だろう? ちゃんと名乗りを行って迷惑のかからないように戦わないと駄目だと言っていたぞ?」


「心配すんな、ワンパンKOさせる」


「出来なかったから前に大怪我を負ったんだろうレンガは……」


黒日々は呆れるような溜め息を吐く。こ、この野郎……!


「貴方もよ、そこの巨体の人。貴方もこのサルのような男と違うと思うなら気をつけなさい」


反川の声が聞こえる。ハゲの方を見てみると、ハゲは後頭部を反川の持っていた辞書で叩かれていたようだ。ありゃ痛いな。


そしてハゲは怒りの目をさせて後ろを振り向く。おっ、殴るか殴るか? 反川対ハゲというどっちがボロボロになろうともナイスな戦いが始まっちまうのか?


「シ、シズネ! 危ない!」


黒日々が声を上げる。だが反川はハゲから目を逸らさない。相変わらず勝気な女だことだ。


ハゲは拳を振り上げる、そしてそのまま殴るのかと思われたが――拳がそのまま、全く動かない。


動こうとしていた黒日々も、不思議そうな顔をしている。どうしたんだこのハゲ。


「……どうかしたの、かしら?」


沈黙に耐え切れず、反川が口を開く。すると。



「……可憐だ」



……などという呟きが、ハゲから聞こえた。……可憐?


「い、いや! すまん間違えた。昼飯はカレーだと思ってつい言葉に出てしまっただけでしてだな! うははははっ!」


なんか気持ち悪い声をあげながら黒日々みたいに口調をばらつかせながら笑うハゲ。なんだ、後頭部叩かれて頭がおかしくなったか?


「まぁなんだっていい、んじゃあ改めて殴り合うぞハゲ。名乗ってやるからかかってきな!」


「今戦うのかレンガ? せっかくお昼ご飯を一緒に食べようと誘いに来たのに……」


「けっ、誰がてめぇらとなんて食うか。んなことよかケンカだよ、さっさと勝って勝ち飯を食わせてもらうぜハゲ!」


拳を構えてハゲに言い放つ、すると


「い、いや、今はやめようじゃあないか今日関」


などと、いきなり日和ったことをいい抜かし返してきた。


「はぁ!? おいテメェさっきまでやる気満々だったろうが!」


「いや、ケンカはよくないと今悟ったんだ。お前も解れ」


「分かるか! テメェのその心変わりの方がわけわからんわ!」


何がいきなりコイツを変えたんだ、いきなりカレーなどと言ったり本当に頭打っておかしくなったんじゃねぇのか?


「今日関レンガと違って分別弁えられる人ってことよ。それもわからないなんて本当に貴方は愚かね」


反川がそんな憎たらしいことを言いぬかしてくる。こ、この女殴りてぇ……!


「うん、まあ戦うことも大事だけれど戦わないことも大事だと私は思うし、勝負は後にしてご飯を食べに行こうじゃないかレンガ」


ニコニコと肩に手を置いて言ってくる黒日々。ぬぐぐ……!


「けっ! ったく訳わかんねぇんだよ、戦わないなら最初からそう言いやがれ!」


あー、もう白けた白けた! 飯だ飯、飯を買いに行くぞチクショウ!


「部室で待っているぞレンガー!」


売店へと歩いていく俺に対して、黒日々はそう言った。誰が行くかあのバカ野郎。



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