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怪我をしたら保健室へ・その3

それは俺がガキのガキだった頃の話。


「あにきぃ! しょうぶしやがれー!」


当時小学生だった俺は兄貴をぶっ倒すために、毎度のように勝負を挑んでいた。


「レンガー、ライガにーちゃんにはかてないよー」


「なんであにきにだけにーちゃんつけておれにはつけねーんだよ! ちゃんとおれにもつけろよ!」


当時から生意気だったリンカに俺が反論すると、兄貴はそんな俺らを見て笑う。そして苛立つ余裕の表情を浮かべて言う。


「こりねぇなぁお前も、諦めろよ。俺は最強無敵だから、弟のお前じゃせいぜい準最強無敵か控えの最強無敵って言うのがお前のポジションなの」


「うっせぇうっせぇ! あにき倒すのはおれだ! ていうかおまえなんかあにきってみとめねー!」


「おめーが生まれた時から俺が兄貴なのに何言ってんだか。まぁ、しょうがねーから戦ってやるよ。怪我しても母さんに言うなよ?」


「へへへっ! それはこっちのせりふだぜあにき! 泣いたってかあさんにチクんなよ!」


兄貴は俺の言葉を聞いて、ニヤリと笑って拳を構える。


「いいぜ、泣かせることが出来たらだけどな!」


そんな大口を叩いた兄貴のツラを見て、俺も笑い返す。


「いっくぜぇー!」


そして、叫びながら俺は兄貴へと向かっていった。今日こそ勝つ、そんな思いを持ちながら。



+++++++++++++++++++++++++



「うぉらぁっ!」


「はぶぁっ!?」


……気がついたら、俺は拳を振り上げていた。それとなんか変な声が聞こえた気がするな。

見渡してみると、薬品やベッドなどが置いてあるいつもの場所、保健室へといた。


そんで、近くには黒日々と反川が立っていたが目線を俺より僅か手前の下へと向けていた。


「何見てんだお前ら?」


俺が二人に質問すると、


「何をするんだこらぁ~!」


どうにも気の抜ける言葉の伸ばし方をしながら、二人の見ていた地点から白衣をつけた変人が現れた。


「何してんだ、医薬野。ベッドに寝るのは飽きたから地べたで寝てたのか?」


「んなわけあるか~い! 君に殴られてうっかり倒れちゃったんだよ~! 全く~、せっかく私が禁断の先生と生徒の甘い接吻を思春期の女の子達に見せつけようと思っていたのに起きちゃって~」


「テメェは一度常識学べ」


「君に言われたくないかな~」


医薬野スーナはゆるい感じに笑って言う。つうかまた俺がここにいるってことは……。


「……俺は、負けたのか?」


俺は黒日々と反川に問う。すると、反川は元々悪い目つきを更に悪くさせ、口を吊り上げて言った。


「ええ、そうよ。貴方は私との戦いに敗北したわ、惨めったらしく私の足を舐めながら命乞いをしてね」


「なるほどな、妄想は程ほどにしろよアホ」


「っ!」


アホの言うことを鼻で笑って返すと、アホは顔を赤くさせて歯を食いしばり悔しそうな表情をする。へっ、勝った。って、んなこと今はどうでもいい。


「んで、結局アイツと俺はどっちが勝ったんだ黒日々」


「勝敗は――引き分けだったよ」


「……引き分け、だと?」


俺は動揺しつつも黒日々に聞き返す。


「ああ、最後にレンガが放った拳で闇霧くんも倒れたんだ。もう先に保健室から出て行ってしまったけど」


そうか、あんま覚えてねぇがどうやら俺は上手く拳をあの野郎にぶち当てられたらしい。見た目通り相当華奢でひょろかったらしい。


「ちっ、あっちで倒れなきゃ俺が勝ってたって訳か。まだまだ根性が足らなかったっつう訳か」


「いや、レンガはよくやったと私は思う。あの万里チャイナ先輩ですら倒せなかった闇霧ウツメくんを一撃で仕留めたんだ、レンガは凄かったぞ。なでてあげよう」


「そうしたら次はテメェの腹をこの拳が貫いてやると思えよ」


手をこちらへ伸ばしてくる黒日々に対して拳を作って見せ付ける、すると不満そうな顔をする黒日々。


「むぅ、まだまだツンデレだなレンガは」


「だからその訳分からない言葉は止めろ」


どうにも腹立たしくてしかたねぇんだがその言われ。


「大丈夫だよ黒日々さん~、だからこそツンデレは攻略しがいがあるんだから~」


「お前は口出ししてくんな医薬野」


「はっ、なるほど! 流石は医薬野先生です!」


「テメェも乗っかってんじゃねえよ黒日々」


「……ふん、調子に乗ってくれるわね今日関レンガ……」


ああもうコイツら超めんどくせぇ!


いい加減こいつらの相手をするのがめんどくさくなってきた俺は、ベットから立ち上がり歩き出す。


「どこに行くんだレンガ?」


黒日々が問う。


「お前らの話聞いてると頭が痛くなりそうだから帰るんだよ」


「あはは~、男子にはガールズトークはきつかったか~」


「こんなガールズトークなんてねぇよ馬鹿年増」


「あ~! またタブー言ったな今日関くん~! 女性に歳関係聞くのは永遠のタブーって知れ~!」


医薬野はまた頭悪そうに騒ぎ始める。これ以上こいつに構ってると当分保健室から出られなくなりそうだから、俺はさっさと出て行った。


――にしても、気のせいだったんだろうか。俺の拳があのモヤシウナギを殴った時だけ熱くなったような気がしたのは。


…………まぁ、どうだっていい話だ。俺はアイツと引き分けた。だから次はあの野郎にリベンジして完璧に勝つ。そんだけの話だ。


思わず笑みを浮かべてしまいながら、俺は荷物を取りに部室へと向かうことにした。

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