逆襲すべきは他にあり
「なんだよ、うっせぇぞエセチャイナ。なんか用か?」
「用がなきゃ来ないあるヨ。特にお前みたいな一年男子の前に姿を見せようと思う奴は絶対的に皆無あるネー。そこの一年女子二人にならともかくネー」
俺の前にはバカかムカつく女しか現われねーのか……! 美人でパツキンでボインのネーチャンぐらい寄ってきてもいいんじゃねぇのか……!
「万里チュウカ先輩、どうかしましたか?」
黒日々がエセチャイナに対して問うと、エセチャイナは話す。
「うむ、流石はおねーちゃんと引き分けただけあってまともな態度あるネー、やっぱり強さと態度は密接に関係しているあるナー」
「けっ、だったらテメェも雑魚ってことだな」
「ほぉ、ほざくあるネ。今ここで叩き潰し、その鼻っ面へし折って背景脇役みたいなポジショニングにまで転落させてやろうあるカー?」
「ああ? やってみるかこの野郎」
俺と万里チュウカは互いにガンを付け合う。叩きのめして今度こそ俺の方が上ってことを見せてやらぁ!
「ねぇ、サクちゃん。あの男は誰に対してもあんななの?」
「うん……。どうやらそうみたいなんだ」
などと思っていると後ろからそんな声が聞こえ、黒日々と反川から蔑みとか呆れとかそんな視線を感じる。
「そうやってバカみたいに噛み付いてばかりいるからそういう目で見られるあるヨ、今日関レンガ」
更には万里チュウカにすら鼻で笑われる始末。まとめてぶん殴ってやろうかこいつら……!
「まっ、今日は勘弁しておいてやるあるヨ。そんなことよりも今日関レンガに黒日々サクヤ、二人に伝えたいことがある……ていうか聞けある、そして潰すあるヨー」
「聞いて潰すだぁ? どういうことだそいつは」
「実に簡単あるヨ。闇霧ウツメという鬱陶しい一年男子を叩きのめすある!」
「闇霧、ウツメ?」
黒日々が聞き返すと、こちらへ顔をズイッとむけて叫ぶように言う。
「そうある! あのクソガキ、おねーちゃんを倒して更にかっこつけてひっじょうに腹が立つ奴あるヨ!」
「お前の姉貴って、確か黒日々と戦ったあの武器倉庫チャイナか?」
「何あるカそのセンス無い呼び名、せめてニャンコポケットおねーちゃんと女の子らしい呼び名で呼ぶあるヨ男子一年」
「それもどうかと思われますよ、万里先輩」
万里チュウカの言葉に対して反川が冷静に口を挟む。こいつネーミングセンスが黒日々並か。
「いえ、私は良いと思います万里チュウカ先輩! 万里チャイナ先輩の可愛らしさを如実に現していて素敵です!」
「そうあるよネー! 流石は黒日々サクヤあるネ、なでなでしてやるあるヨー」
そして案の定そのネーミングを気に入るバカ。そんな黒日々の頭を撫でるアホチャイナ。それに対しての反応が妙に嬉しそうな黒日々。犬かアイツは。
「う……羨ましい」
それを物欲しそうな目で見る反川は無視して俺は話す。
「呼び名なんてどうでもいいんだよ、つうかなんでそれを俺らに話すんだよ」
「そりゃ決まってるあるヨー、あの闇霧ウツメを私が倒すって言うのも良いあるが……やっぱお前みたいなEランク一年にやらせて負かせた方が悔しさ大でいいじゃないあるカ」
外道のような表情をして万里チュウカは返答した。コイツはマジで嫌な奴だな。そしてコイツ微妙に俺のことまでバカにしてきやがった……!
「その為に私は怒りを抑えたあるヨ。本当はバラバラのグシャグシャにして、回復するのが嫌なぐらいに打ち倒そうとも思ったあるが、今回は一年のお前か黒日々サクヤ、どちらかに任せるある」
「けっ、そう言いながらもテメェもそいつと戦って負けるのが怖かったんじゃねぇか?」
「思いたきゃ思えばいいある。でも今回は、奴に目一杯屈辱を与えることを優先したあるヨ。それぐらいに腹の立つある、お前に匹敵するほどに」
どうやら、闇霧ウツメって奴は強さじゃなくウザさが半端のない野郎らしいな。つまり、そんだけの大口を吐ける程に自分の実力に自信のある野郎だってこった。おもしれぇ。
「しかたねぇな、その闇霧ウツメとか言う野郎を俺が叩きのめしてやろうじゃねぇか」
「僕をなんだって?」
突如、静かにそんな声がこちらへ向けて聞こえてくる。すると腕を組み、片足で壁によりかかりながらひょろい男がいつの間にか入り口付近に立っていた。
「誰だテメェは」
すると、ニヤリと笑ってそいつは言った。
「はじめまして、僕は闇霧ウツメ。この学園を統べるべき素質を持つ者だよ」