雷光、中華を貫く。それとグダグダ
舞台は、バトルライフ高校屋上。
闇に包まれし僕は望む。暗黒に徘徊する僕は、切り裂く雷光を以て敵の排除を。
「てぇいっ!」
中華の服を模した服を装備する先輩が放つ手裏剣を、僕の雷剣を以て切り弾く。
「わからないのかな、先輩。僕にはそんな玩具なんか通用しないんだよ」
僕の言葉に対して、先輩は悔しそうな表情を見せる。でも、仕方が無いことだよ。僕は強い。
「偉そうな口ぶりアルね男子一年生! だったら……これはどうアルかぁ!」
思わず、先輩が繰り出したものに対して驚いてしまう。百に近い剣と槍と鉈などの刃物を、僕に向けて一斉に撃ちはなってきたのだ。
「しかし、それすら無駄だよ」
僕は思わず口元を歪ませてしまう。そして手に持つ雷剣をまるで鞭のように変化させ……全てを雷鞭の一閃において打ち払うことによって、撃ち放たれた刀剣や槍鉈は全て力なく地面に落ちた。まるで、僕にひれ伏したかの如く。
目を大きく見開く先輩に対して、僕は囁くように話す。
「貴方じゃ、この僕には勝てっこない。暗黒に落ちし雷気を操るこの僕……闇霧ウツメにはね」
「何を寝言を……言ってるアルか。勝負はまだついてないアル!」
「ふふふ、諦めないと言うんだね? だったら仕方が無いね……女性を痛めつけるのは僕の趣味じゃないけれど……死にかけてもらうよ、せーんぱい」
僕は茶目っ気を聞かせて言うと、先輩は目を細めて怒るように駆け出してくる。
「さぁ、見るがいい。これが暗黒を纏いし、混沌の雷撃だ」
暗雲が鳴り響く世界の中で、僕はそう呟いた。
++++++++++++++++++++++++++++++++
「うわはははははははぁっ!」
俺は思わず高笑いした。いやぁ、笑わずにはいられねぇ! なんせ、なんせ……!
部室(仮)が手に入ったんだからなぁ!
ざまぁみろあのクソジジイ! テメェの手なんて借りずとも自分で手に入れられたぜ! わざわざあのジジイの面倒くせぇ小言聞きながら戦う必要なんて全く皆無だったぜ、ふははははははっ!
「と、言いつつ、校長先生のところに行って返り討ちにあってきたんだな、レンガ」
「……るせぇ」
黒日々の言葉に、俺は小さく呟いて返した。確かに、最初はそう思ったがあのまま負けっぱなしってのは気にくわねぇなかったのもまた事実だったんだよ。
「お前は良かったのかよ、前に悔しそうにしてただろ」
「うん、勿論悔しかったが今日は反川さん……ではなく、シズネと一緒にご飯を食べたんだ」
「なるほど、だから来なかったのか」
鬱陶しいだけの反川かと思ったが、思わぬ効果だな。これでこいつに鬱陶しく付き纏われづらくなった訳か。昔、マイナスとマイナスをかけたらプラスになるのが意味わからねぇと思ったが……今更になって理解できたぜ。
「ん? もしかして一緒に来て欲しかったのか?」
「ねぇよ、むしろありがてぇと思ったぜ」
「またまた、寂しかったからとわざと悪態をつくのはレンガの悪い癖だぞ?」
「いつになったらテメェには俺の言うことが全て真実の言葉と思ってくれんのかねぇ……!」
ったく、相も変わらずだぜコイツは。そう思いつつ俺は現在地である金髪から奪い取った場所、元忍者部の部室を見渡す。金髪共が汚したゴミとかは黒日々と反川が片付けたおかげで、元からあった槍やら刀やらの刃物以外に、部屋の右隅に変な機械が設置されている以外は何もねぇ。多分この変な機械であの邪魔な竹を出すのだろう……ん、待てよ? まだあの性悪女はこの部室にはついてねぇ、なら……。
俺はニタリと口を吊り上げる。くっくっく、あのアマには色々言われたからな、ここらで仕返ししておかねぇとなぁ……。
「それじゃあ、練習の準備のために私は更衣室に行って着替えてくる」
「更衣室? んなもんあるのか?」
「ああ、扉を押すとくるくる回って、見ると中に更衣室が二つあってな。もし着替えるのならそこを使うといいぞ? あっ、勿論覗きはいけないぞレンガ」
「テメェみたいなアホの裸なんぞ誰が見たがるか」
「あはは、そうかも知れないな。それじゃあ、行ってくるよ」
黒日々は部屋の左側へ向かっていき、ていっ、と言いながら壁を押すと、本当に壁の一部がデパートの回転ドアのように回転し、黒日々はその中へと入っていった。更衣室ぐらい普通に作れよ。
しかし、これで邪魔者は消えた。あのみょうちくりんな機械をいじって反川に復讐するチャンス。
俺は変な機械があるところへと歩いていく。えーっと、モニター画面は入り口と罠が大量にあった部屋とこの部屋の入り口前の三つか。もう一つあるが、これは誰かによってぶっ壊されている。そんで変なボタンがいくつか……近くには竹罠とか竹男とか変なラベルが張られている。反面、張られていないのもいくつか存在している。
モニターを見ると、反川は既に入り口にまで来ていた。ちょうどいいぜ、見て驚かせてやるぜ、この部屋の恐怖をなぁ!
俺は声を殺して笑う。さぁーて、どれを押すかね。竹槍だとか竹男だとかもいいが、男としちゃ何も張られていないもんを押してみたくなる。つう訳で、この紫のボタンで決定だぜ!
「はははっ! 食らいやがれ反川! こいつが逆襲の一撃だぁっ!」
俺は声を張り上げ、意気揚々と紫のボタンをポチリと押す。すると、
《悩殺の術、発動》
そんなアナウンスが部屋に響く。なんだ、悩殺の術?
俺がそんな意味不明なアナウンスを聞いて不思議に思っていると、反川が空白の道へと来る。すると、真っ白なライトで照らされていた部屋が突然、紫色になる。な……なんだ?
困惑しつつ見ていると、スピーカーが反川のいる場所の上から現れる。よくわからねぇが、反川がびびるような奴を見せやがれ!
そんな期待を持ってモニターを見ていると、
《うっふーん、あっはーん》
思わず、固まってしまうような声がスピーカーから聞こえてきた。
《いやーん、そこはだめよー。スケベー》
モニターの前の反川も同じ表情で、呆然としている。な……なんだこの棒読みの電子音は、もしかしてこれが悩殺の術って奴か? 誰も悩殺できそうにねぇ。
そんな風に呆然としていると、いきなり声にノイズが入り、何かごちゃごちゃ鳴る音が聞こえてくる。待っていると、男女の声が聞こえてくる。
《風部くん! 我ら忍者部の悩殺の術は君の色っぽい声じゃないといけないのでござる! こんな電子音じゃ悩殺なんか出来ないでござるぅ!》
《魔服先輩、そうやってセクハラギリギリのことして訴えられないとか考えてませんか? 常識ない学校ですが、一応法が存在してるんですよ》
《頼むぅ! あとムチムチ網タイツとバニースーツも一緒に装備してくれたら拙者は君と結婚するから……ってがはぁっ!? 待って! 蹴らないで! ぎゃああぁぁぁぁ……ザッ、ザアァァッァアァァアァ……ガチャッ》
……そして、音声は止まり。一分後、何事もなく反川は来て言った。
「何あれ」
「……知らねぇ」
グダグダで意味のわからんことに対し、そんな返答しか俺には出来なかった。