初・練習試合!
あれから三日が経ち、俺達練習部はボクシング部の部室へと来ていた。
ボクシングリングが建前のように置いてある。しかし、その攻撃方法はてんでバラバラなのが練習を見ていてわかる。ちゃんとボクシングっぽいやつもいれば空手っぽいのも適当そうな奴もいた。本当に攻撃方法だけで部活決めてやがるなこいつら。
「まるでパンチ部ね」
反川の言葉に俺も頷く。頷きたくねぇがまさしくその通りだと思ったからだ。
「よく来てくれたな、練習部諸君」
練習を見ている俺達の前に、ボクシング野郎――もとい、内後枝ダレンが姿を見せる。
「よぉ、来てやったぜ。まさか今日電話してきて今日戦うとは思わなかったぜ」
「ふっ、悪かったな。だが君達の部はまだ部活にすらなっていないからな、それぐらい急でもいいだろうと思ったのだよ」
「ほお、そりゃ随分と甘く見られたもんじゃねぇか……!」
俺は内後枝とにらみ合う。ランクBだろうがなんだろうが関係ねぇ、負かせて叩きのめして俺の方が強いってことを証明させてやらぁ!
「それで、練習部の部長は君で良かったか今日関」
「ちげぇよ、誰が部長なんて面倒なもんやるかよ。部長はアイツだ」
俺は後ろでちょこまかとボクシング部内を見ている黒日々を親指で指す。
「そうか、確か黒日々サクヤ……だったな」
内後枝はそう呟いたあと、黒日々の方へと歩いていく。
それからまもなくして、練習試合が始まった。
+++++
……結果。俺達は勝った。ああ、勝ったのは全然いい。けどな……!
「俺と小学女が戦う前に何でてめぇら負けてんだオラァァァ!」
「ふっ、面目ない」
内後枝ともう一人の部員はどこか清々しそうな顔で言う。お前部長のくせに黒日々なんぞに負けやがってぇぇ……!
「内後枝先輩、もしよければ、また試合を組んでもらえますか?」
「ああ、勿論だ黒日々。また改めて再戦しよう」
そして夕焼けをバックにするかのように手を握り合う内後枝と黒日々。勝手に納得してるんじゃねぇよ!
「というわけで、火元。お前は退部だ」
「えええぇぇぇ!?」
驚きの声をあげる小学女。そりゃ不当すぎてあげたくもなるわな。
「大丈夫だ、お前がいるべき場所は――もう、あるだろう?」
「えっ……?」
内後枝はそう言って俺達の方を指差す。……って、はっ?
「練習部、彼らのいる場所こそが、お前の真にいるべき場所だ」
「何言ってんのお前? 黒日々に負けて馬鹿が感染したのか、いやそうだろ」
「練習部こそが、私の居場所……」
「おい、お前もその気になってんじゃねぇよ」
「うん、私は歓迎するぞ。ようこそ、練習部へ!」
「話こじれるからお前は後ろでボクシング部見て遊んでろ!」
「うん、ありがとう黒日々ちゃん! 火元ショーコ! これから練習部として頑張ります!」
「お前も何感化されてんだおい! なんだこの和みムード! 色々とおかしいだろオイコラァァ!」
……こうして、完膚なきまでに不本意だが、小学女は練習部に入った。シリアスな理由かと思えばあっさりとなんでコイツ順応してるんだとか、なんで辞めさせたんだよとか、そういう何もかもをひっくるめて投げ捨てた感が満載だが、部員が増えたことでついに念願の部活が完成することが出来た。
……細かいことなんか、もうどうでもいいか。俺はそう割り切ることにした。




