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管理人さん

スキュラ。


一週間に3話くらい投稿したいと言ったな?

スマンありゃウソだった。


……なるべく頑張ります。妄想パワーが溜まったら……

仁の住むマンションは3階建てである。

一階あたりに3部屋、計9部屋を備える小さめのマンションだ。


建物自体はマンションとしてはかなりの小規模だが、

一つの部屋は4人家族が不自由なく暮らせるほど広めで

建物自体の作りもしっかりとしており、耐震性はバッチリ

水まわりの配管などもキチンと整われており、快適な住空間を提供している。


そうは言っても建物というのは建てた直後から劣化していくものではあるし、

多数の人が住む集合住宅ともなればトラブルなども多く出てくる。

それらをまとめたりする管理人、というものが存在する。


このマンションにも管理人はいる。

杉浦スギウラあやめ。仁の住むマンションの101号に住み込みで働く

管理人である。


このマンション、実はあやめがオーナーでもある。

部屋数が9と少ないため、一部屋を自分の家として管理業務もこなしているのである。


マンションの管理業としては色々あるが、日々の中で最も多いのは清掃である。

マンションの共用部分、マンション自体の入り口や、廊下、駐車場など――

住人はあやめが認めた人しか入居できないため、そういった共用部分をむやみに汚すようなものは居ないが

生活している以上、汚れはするものだし、外の庭や駐車場などは特に

外のゴミが風に煽られて転がり込んできたりするため、清掃は欠かせない仕事である。


夏にさしかかろうかというこの季節、若い芽が伸び始めてきた生垣。

これをキレイに整えること。今日のあやめの仕事であった。




「ふんふふふん~♪」


泣きぼくろが特徴的な顔に笑みを浮かべ、ゆるやかにウェーブしたセミロングの髪をなびかせながら

ご機嫌そうに鼻歌を歌う美女。あやめである。


鼻歌にまじり、しゅばばばばば、と風を切るような音がしたかと思うと、その後にはきっちりと整えられた

生垣が姿をあらわす。

風切り音の発生源はあやめの元――正確にいうならば、あやめの下半身から生える

8本の触手から発せられていた。


あやめはスキュラという種族である。

上半身は普通の人間と同様であるが、下半身はタコのような触手が生えており

あやめはその八本の足の内6本に、剪定鋏、箒、ゴミ袋などを持ち

目に見えないほどの異様な速さで独立して動かし、みるみるうちに生垣を整えていた。


普通、いかなスキュラであろうとも多数の触手に同時に別の作業をさせるのは難しいことではあるが

あやめはいとも簡単そうにこなしていた。


「あら?」


ふと、何かに気づき作業を止めるあやめ。

だれかがマンションの敷地内に入ってきたのだ。

時刻はそろそろ夕方にさしかかろうというところ、ということは学生だろうか。

ここに住む住人で学生といえば仁か竜子――聞こえてくる靴音から歩幅は若干広め

ということは、仁か、と当たりをつける。


ぽい、と造園道具を放り出して、見つからないようにいそいそと入口の方まで

様子を見に行ってみると、予想通り仁が居た。

ちょうど学校から帰ってきたところのようだ。

あやめは仁に気付かれないように、すすす、と怪しい笑みを浮かべながら仁の後ろに回り込んだ。




「!」


マンションの敷地に入り、しばらくしたところで仁は自分の体に異変を感じた。

ぬるり、とした感触を脚に感じたと思うといなや、まったく歩くことができなくなったのである。

一体何が、と自分の足元を見ると、ピンク色の長い物体が、自分の両足それぞれに巻き付いていた。

ぐ、と足に力を込めるがビクともしない。完全に固定されてしまっているようだ。


「あらあら、仁くんおかえりなさい♪」

「あ、あやめさん……」


仁の足にがっちり絡まっていたのは、あやめの触手であった。

仁も男子高校生、体力はそれなりにあるが、目一杯力を入れてもビクともしない。


「ただいま帰りましたあやめさん……で、この仕打は一体……」

「あらあらあら、ごめんなさい、私不器用だからたまに触手が勝手に動いちゃうことがあって……」


しゅるしゅるしゅる、ともう一本、あやめから伸びた触手が仁の胴体にまきついたかと思うと

3本の触手は縮みはじめ、仁をあやめの本体のほうへ引っ張っていく。

仁はその力に抗おうとするが、そんな抵抗はなかったかのようにずるずると引っ張られていく。


「嘘だ……!この前、本を読みながら裁縫しつつアイロンがけしてるの見ましたよ……!」

「私のお家、覗いたんですか?イケナイ子ですね♪」

「偶然見えただけですって!」


ぼふ、と自分の胸元まで仁を引き寄せたあやめは、自身の両腕と触手で

自分の体を密着させるようにぎゅうっと抱き寄せる。

あやめの肉体は、非常に女性らしい。

細すぎず抱き心地のよさそうな非常に肉感的な体型、とくにその胸は圧倒的な

存在感を表していた。

舞曰く「何アレ?スイカでも入ってんじゃないの?ありえないよありえない」と評される程のサイズである。


その巨大な胸をわざとらしくぎゅむぎゅむと仁の体におしつけ、やわらかなそれは形を変えつつ

仁へとその感触を伝えていた。


「もう、女の人の部屋を覗くなんて……」

「たまたま外から見えただけですって……!」

「たまってるんですか……?若いですもんね、しょうがないかしら」


仁の言うことなど、聞きもせず。仁はすっかりあやめに覗き魔とされてしまった。

当然、あやめは仁がそういったやましい気持ちが無いのはわかってはいる。

しかし、あやめは年下の可愛い男の子が大好きなのだ。とくにこういう

体育会系のような熱血ではなく、誠実そうな男の子にちょっかいを掛けたくなるという悪癖があった。

目下、あやめにとって仁はお気に入りであった。


「たまってるなら……しょうがないですね」

「しょうがないって……あやめさん顔とか近いです近いです」

「たまってるものの発散……私の部屋でしてあげましょうか?」

「……うぉひゃう!」


媚びるような、それでいて甘ったるい声で仁の耳元で囁く。

ふぅっ、と仕上げに耳へと生きを吹きかける。

思わぬ感触に、言葉にならない変な叫びをあげてしまう仁であった。


「……ふふ、どうしたんですか?」

「あ、いや、その、あまりそういう冗談は」

「あら……冗談だと思いました?……こんな冗談いう女じゃないですよ?」


ああ、楽しい。あやめは心から思っていた。

自分の仕草にうろたえる男の子を間近で見る、こんなに楽しいことはあるのだろうか。

ましてや、自分のお気に入りである。本人が本当にそういうことを望むなら

そういったことを手取り足取り教えて上げるのも、楽しそうだなとあやめは考えていた。


「な、なにしてんのよーっ!」


そんな声が聞こえてくる直前、あやめは、ぱ、と腕と触手を仁から離し、開放する。

後ろを見ると、わなわなと体を震わせ、こちらを見る竜子が居た。

あやめは竜子が近くに来ていることは少し前から気づいていた。


「あら竜子さん、おかえりなさい」

「ただいま帰りました!それよりあやめさん!なにしてるんですか!」

「何ってタダの世間話ですよ?ねえ仁くん?」

「うえっ!?あ、ああ、そうでしたね」

「何で言いよどむの!?なんかくっついてなかった!?なんで顔赤いの!?」


仁は竜子に続けざまに問い詰められるが、答えられるわけがない。

抱きしめられた上に、あからさまに誘惑までされたなんて。

ちらり、とあやめのほうを見れば、そちらはニコニコと笑みを浮かべさも何もなかったかのようだ。

数分前まであれほど色気を振りまいた声と仕草をしていた同一人物とは思えない。


「ま、まあ家にいこう竜子」


とりあえず開放されたし、家に入ろう……そう思い足を動かそうとした時、

去り際にあやめに耳打ちされた。


「さっきの話、竜子ちゃんはそういうのしてくれてなさそうだから……ウチに来ればいつでもいいですからね?」


先ほどと全く同じ、媚と甘えと過剰に含んだ声色で。

びくん、と意に反して体が硬直し、仁の顔が赤く染まる。


「だからあやめさん距離が近すぎますって!」


ぐい、と竜子に腕をひかれ、強制的にあやめとの距離を離される。

あやめは気にしたふうでもなく、笑みを浮かべたままひらひらと手を振っていた。


「やっぱりこのマンション管理人が危ないんじゃ……でも建物はいいのよね……引っ越すわけにも……」


隣でぶつぶつと竜子が何かを言っているが、頭のなかで悶々と燻っている何かを抑えるのに仁は苦労していた。

大人の女性はコワイ……そんな感想しか出てこない仁であった。

2012/10/17 誤字修正

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