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空の浴槽
いえないことはいつでも浴槽の底に沈んでいます。
断片になってしまったよ
空は
しばらく俯いているあいだに
粉塵の空を忘れない
忘れない
のはそれじゃない
まえのまえの
あれ
なのでしょう
ここからはじめよう
浴槽から
体育座りで塞ぐとこから
長くもない脚を
気ままに曲げ伸ばしできない
不自由な直方体に
埋め込まれたところから
ここはここでしかなく
どう足掻いてもここ以外にはなりようがないので
ずうっとここのまま
ここでありつづけようとする
みずあめみたいだね
けれどひどいや
だから空が砕けても
だからどうだということもなくて
だってここはいつだって
このままいつまでもここのまま
なのでしょう
※初出:短編にて同名で投稿していたもの。




