悪魔との契約
悪魔様。私に力をください。
私の中の化物を飼い慣らす力をください。
それは常に蠢いていて、今にも私の心を食い破らんと、私の内臓を散らかし回っています。もう限界です。悪魔様との契約は最後の手段でした。分かっています。それ以外の全てを悪魔様に捧げることになるのは分かっています。しかしそれでも私はこの怪物を飼い慣らさないと、全て壊れてしまいます。私は人では無いナニカになって、周囲の人を巻き込み、何もかも終わりにしてしまいます。全てが終わった後に残るのは闇。無限の闇です。私は何も感じられない無限地獄の中、ただただぼんやりと意識のみが宙に浮き、世界を破滅に陥れた災厄として、永遠に彷徨い続けるのです。そうなる前に、私はこの化物を飼い慣らさなければいけません。こうなるまでに、色々試しました。しかし駄目でした。何をやっても化物は、全てを取り込んで増幅し続け、とうとう私の力では、手の付けられない状態にまで膨れ上がってしまいました。もう悪魔様に頼るしかないのです。どうかお願いします。
悪魔様。
私に力をくださいーー
そう言って彼は、自分の指を噛み、乾き切った地面に血を垂らした。血はみるみる地面に吸い込まれていき、やがてその指から水分が無くなって、ミイラのように干からびていく。程なくしてそれは全身にまで移行し、やがて彼の体内の水分は一滴残らず吸い取られた。灼熱の地面に乾き切った彼の身体が倒れ込み、熱で焼かれて焦げ臭い匂いと共に煙を発する。その煙が、天まで達した時ーー
悪魔との契約は、成立した。
朝、いつも通り目を覚ました。
何の変哲もない、平日の朝。歯を磨いて、仕事に行く支度をする。心なしか今日はいつもより、身体がすっきりしている気がした。
今日は良い仕事ができそうだーー
そう思いながら、ドアを開ける。
すると、世界がとても美しくて、
思わず吐きそうになってしまった。
ああ、我が悪魔様。
彼の背後には、飼い慣らした蛇の化物がいて、
むせかえるような悪魔の血の匂いと共に、
艶めかしい妖気を漂わせていた。




