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ダークフレイム調理人   作者: 伏見


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5-2.パーティ(後編)

前の話の続きになります。

ほんのりお色気回。

「小屋の方に風呂があるから入ってきなよ。その間に夕飯作っておくから」

「えー!すごい優しいんだけど!」


話をしているうちに外は日が暮れかかっていた。雨で水浸しのフィルに風呂を勧めると喜んで小屋の方へ向かっていった。薪風呂式なので心配だったが火種は持ち合わせているそうだ。


扇はキッチンに立ち、夕飯に取りかかる。今日の献立は--


「夕飯何作ってくれんの」

「……出来てからのお楽しみ。見てないでなんか手伝えよ」

「へーい」


さっきから気になっていたが、余裕な態度が鼻につく。働かざる者喰うべからず。調理に参加させてやる。

炎を出して準備に取りかかると横から「おぉ」とタカラが声を上げる。それを聞いて楽しそうだななんて思いながら食材を切り始めた。


具材の準備が出来たら、スキレットを取り出して油をしいて熱する。

 最初にタマネギをしんなりするまで炒めたら、粗熱を取るため少し置いておく。

タマネギが冷めたら挽肉に混ぜて、タネの準備に取りかかる。

その間にタカラにはキャベツの準備をさせた。鍋に湯を沸かして、その中に一枚ずつ葉を入れる。その後芯の厚い部分を取るのだが・・・。


--ベリィッ!ベリィッ!


芯の柔らかい部分も多く剥いでいるようだ。


「食べる部分、無くなるぞ。取るの難しいなら包丁使って」

「うーん。こういう細かい作業苦手だ。切り方とか分量の調節とかやることが多くって覚えきれねえよ」

「俺も大体でやってるけどね、スイーツと違って順番は決まってないし。最悪美味ければいいよ」


あまり自炊しないと言うことは、作ってくれる人がいるのか、それとも屋台などで済ませているのだろうか。オムライスがない時点でこの世界の料理はあまり発達していないのかもしれない。桃源国のレシピを参考にしたことはないが、市場で寄った屋台でも「コッコル鳥の焼き鳥」とターキーレッグのようなものを食べていた。

 スガイが気に入ったのだ、自分の世界の料理はここでも通じるはず。


(よし美味いもの食べさせてやるか)


やる気に火が灯り、挽肉をこねる手に力が入った。


塩、胡椒を追加して少し混ぜたら、煮込む前の形成に入る。

具がはみ出さないようキャベツで丁寧に来るんでいく。タカラが剥いたキャベツは面積が大分減ってたので、ちょこちょこ隙間からタネが見えてしまった。まぁ周りはベーコンで包むから漏れることはないだろう。最後に、朝作ったトマトケチャップをベースにして鍋で煮込む。


30分ほどしたらロールキャベツの完成だ。



「は~気持ちよかった!あ!これ夕飯!?めっちゃおいしそう!」


ちょうどフィルが風呂から出てきた。雨で濡れていた髪は整えられ、すっきりしている。並べられた料理を目にするとはしゃぎだした。着席を促そうとフィルに目を向けるとその服装に目が行く。フィルが視線に気づいてニヤけだす。


「えっとぉ、扇君の服、上着だけ少しきつくってぇ」


胸のせいで服の丈が足りないのだろうか、下半身の面積がやけに広い。もう少し詰めるとパンツが見えてしまう。


「……フィル、ズボンは?一緒に渡したと思うけど」


扇は少しぎこちなく聞き返す。母と妹のおかげか、女性のいる生活は慣れている。しかしこれはやり過ぎだ。あからさまな色仕掛けに戸惑いつつも、平静を意識する。きっと表情が硬くなってるだろう。


「ハッ!効いてないぞフィル」

「……もうっ!冗談だけど!反応薄くない?男の子でしょ」

「妹がいるから慣れてる。湯冷めするし、夕飯も冷めるから早く座ってよ」

「はーい。そういうとこ女子にモテそう」


扇の反応に怒りながらも、フィルはズボンを履いて席に着く。

紳士的に振る舞っていた扇だったが、フィル程の美人はあまり見かけないので内心バクバクだった。この状態でずっといられたら、外に飛び出していただろう。この雨の中じゃ確実に風邪を引く。耐性が着いてて良かった。冗談はこのくらいにして夕飯を再開しよう。


中央の鍋にあるロールキャベツを素のまま取り分ける。

近くの小皿には味変が出来るよう、トマトケチャップを添えておく。

早速実食だ。


「「いただきまーす」」

「あむ。サッパリしてておいしい!葉で肉を巻いてるの?この赤いのつけると甘酸っぱくなるわ!」


 フィルの反応はすぐに返ってきた。小さな口でどんどん食べ進めている。すぐに二個目に手をつけ始める。このペースで食べられると鍋の中がすぐにカラになりそうだ。

 一方タカラの反応はどうだろうか。タカラがちぎった葉も手こずりながら巻いたのに「アジ、ウスイ、イヤ」などと言われたら、普段は穏便な自分でもさすがに激昂しかねない。タカラはフィルの様子を見てから橋でロールキャベツを掬いはじめた。扇はその様子じっと構えて見ている。タカラの反応を待っていた。


「何だよそんなに見つめてきて」

「別に、さっさと食べろ。飯が冷める」

「そう急かさなくてもちゃんと食べるぜ。フィルがあんなに喜んでんだから美味いんだろきっと」


皮肉を言ってからタカラは一口、ロールキャベツを囓った。


「……はじめて食べる味だ、うめぇなこれ」


(成功だ)

料理のコメントを一言述べると、タカラは次から次へと口へ運んだ。

フィルよりも食べるスピードが速い。一口が大きいので1個を食べ終わるのもあっという間だった。


二人のリアクションに扇は満足する。そろそろ自分も食べようと手持ちの器に箸を運ぶ。最初に掬った分を食べ終わる頃には、鍋の中のロールキャベツは3つほどしか残っておらず、扇は急いでおかわりを確保した。


「いやぁ宿まで用意してもらって悪いわね!」

「俺こっち側使わせてくれ」


夜遅くになっても雨が降り続いていたので、宿泊の提案まですると二人はずずいと提案に乗ってきたのだ。おかしな案件を持ってきた相手に、さすがに優しすぎただろうかと感じたが、この先協力し合う関係だ、まぁ少しくらいは優しよう。そう親切にしたのはいいのだが。……いいのだが。


「なんで一緒の布団で寝るんだよ」


別々の部屋を提案したはずなのに、一緒がいいと言って扇の部屋に泊まることになったのだ。それでも布団は3つ繋げたのに扇を中心に左右から挟んでくる。


「こういうのって一緒の部屋の方が楽しいでしょ。」

「そうなの?」

「いや、よくわからん」

「そういうものなの!じゃあ早速恋バナしよ!ねぇ扇君って前の世界に好きな人いたの~?え、いない?じゃあ私立候補しちゃおうかな!」

「え~じゃあ俺も~」


タカラがフィルの冗談に悪乗りしてくる。二人とも体格がいいので挟まれる側は大変だ。息が苦しい。


「って言うかさぁ!今日は泊まるとして二人は国の使いでしょ、こんな悠長にしてていいの」

「あれ言ってなかったっけ。私たち国の使者じゃないよ。ギルドに所属してるけど普通の一般人!」


寝る前だというのに一気に目が覚めた。なぜ一般人が交渉に来たのだろうか。思えば仮の提案であれ、公式のオファーならばスガイから話が来るはずだ。


「なんで作戦知ってるの。極秘事項じゃないのそういう案件って……」

「私のパパ、この国の鑑識士なの。扇君会ってるはずだよ。パパよく国政の事話すから。聞いてたら交渉できるかなって来ちゃった」

「俺は面白そうだからついて来ただけ」


城内で出会った初老の鑑識士のことだろう。身内が国に関わっているなら情報を知っているのはつじつまが合う。

二人は悪びれる様子もなく、ニコニコと笑っている。とはいえ、煌も簡単に情報漏洩が起きている。今回の対立が起きたのは、こういうのも一因かもしれない。今後のこの国の行く末が少し不安になった。


「明日こそ帰ったらすぐに王様に打診してみるね!それとも一緒に行く?」

「冷蔵庫?ってやつの代わりも貰えるかもな」

「いや、城に入るのはちょっとな。でもまた城下に行きたいから連れて行ってくれるとありがたい」

「それならお安いご用ね!」


召喚された日のことを思い出す。国にはスガイ経由で世話になっているが、また何かトラブルが起きるのは避けたかった。作戦が本格的に乗り出してから挨拶に行くのでも問題ないだろう。それより市場で色々買い物がしたい。明日、城下に赴く約束をして3人は床についた。

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