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ダークフレイム調理人   作者: 伏見


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4.魔法の活用法


昨日は夜遅くまで家の修繕にあったった。とはいえ簡単な処置だけで隙間風や音にうなされてよく眠れていない。

昨日作った野菜炒めを食べ終えると、予定通りからになる。

朝餉を済ませると、支度(といっても資金のみだが)を済ませて小道へ出た。ちょうど待ち合わせていた馬車が到着し、乗り込んで一息ついた。


「おはよう、今日はよろしくお願いします」

「おはようございます、オウギ様!お任せください」

「それにしてもいい天気ですねぇ」


隣にはスガイが同乗しており、挨拶を済ませると御者に指示を出す。

馬車が桃源国に向かって動き始めた。


「市場に行きたいとのことですが何用でございましょう。頼まれれば私たちが代理で購入してきましたのに」

「えと・・・・・・料理の材料を買いたいんだけどさ、この世界には何があるか全然分からないから。自分の目で確かめたいのもあって」


料理が得意なことを周りには積極的に話したことがない。スガイの反応が気になりもごもごとした口調になる。


「食材使っていただけたのですね!ええいいですとも!このスガイ目利きには自信がありまして、良い店をたーんと知っております!それにですね、なんと我が国は小さいながらも自然が占める面積は広いのです。

それ故採れる食材は豊富なのですよ!」

「まぁそれがこの国の危機の一因でもあるのですが」


スガイの目が輝き饒舌になったと思いきや、すぐに耳が垂れ下がった。テンションの差が激しい人だ。・・・・・・いや、鼠か?

ここが異世界だと納得した今、スガイや城にいたトカゲ頭はそういう人種なのだと結論に至る。人間以外が言葉を使うのにまだ違和感があるが、そのうち慣れるだろう。


スガイと話しているうちにあっというまに国に着く。門を経過して馬車が止まる。スガイに続いて馬車を降りる。


「さてどこから回りましょうか。食材だけでいいのですか?」

「うん。修理の道具も欲しいけど、最初はご飯の確保からで」

「さいですか」


こちらですとスガイが道案内を始める。スガイは小柄なので目を離すとすぐ迷子になりそうだ。道なりに沿ってまっすぐ進むと広間に出た。王城に向かう通りとは違い、こちらの方が食材を扱っている屋台が多い。

民が主に使うのはこの市場なのだろう。


「サンダーフィンが釣れたよ!マンネリした食卓のサプライズにどうだい!」

「こっちはグラウボアの切り身が安いよ!久々に大きいのが採れた」

「オウギ様こちらです」


市場には活気が溢れ、見たことのない食材が並ぶ。競り合いに気を取られていると、目的地に着いたようでスガイが声をかける。

目の前にはオレンジ色の布を張った店があった。八百屋だろうか.Marker他の出店と変わらない大きさだが、並べている野菜の種類が豊富だった。


「うーん一目見ただけじゃ分からない。スガイさん教えて」

「かしこまりました!まずこちらのルミナ根ですね。淡く発光する野菜なんですけど、甘みが強くて回復薬の材料になります。こっちは風鳴り菜といいまして魔除けとして使われますがサラダにぴったりです。あとこの岩殻芋はですね、普段は堅いのですが熱を加えると簡単に割れます。保存性に優れているんですよ」


スガイは食べ物に関してとても詳しい。この国では常識かもしれないが、彼の口からは説明が絶えず繰り出されていった。

説明を一通り聞いたあと、使えそうな食材を選ぶ。

肉と魚は日持ちが気になる。冷蔵庫がないので作り置きできる分。少量だけ買うことにした。気づいたときには荷物がかさばっていた。

途中途中で調理器具も買ったので大分重い。


「ところでオウギ様。今日は何を作る予定ですか」

「今日はねオムライス作ろうかな」

「おむらいす、とは」

「あーご飯を卵で包んだやつみたいな。スガイさんは決まってる?」

「帰りに屋台で買おうかと!」


どうやらこの世界ではオムライスは通じないようだ。現物を見てもらえば納得してくれるだろう。


「あーそういえば」

(この世界米って売ってる?)


元いた世界の単語は通じない。ダメ元だが言い方を変えて聞いてみる。


「ちいさな白い粒の食べ物で、炊くと膨らんでふわふわして

て。料理とよくあう食べ物を探してるんだけど」

「謎かけでしょうか?米みたいなものですかね」

「そう!それそれ」


変に聞く必要は無かった。米はちゃんと通じるようだった。


「米はこの国において必需品。そのため流通はある一族に任せております。こことは別のところに直営店がございますので、そちらに行きましょうか」


--ぐぅ~


行き先が決定した途端、思わず腹が鳴った。

朝食を食べてから大分時間が経っている。


「まずは腹ごしらえが先ですかね、私おいしいお店知ってますよ」


2人は先に昼食を済ませることにした。


「すまねえ、今それどころじゃなくてよ」


額に一本角をはやした男が申し訳なさそうに謝る。

昼食を済まして米屋に来たら、すでにこの状態であった。


「子供を庭で遊ばせてたらいなくなっちまってよ。今みんなで探してるとこなんだよ。」


母親は近くにいたが、一瞬目を離した隙にいなくなっていたらしい。

せっかく来たのだ、ただでは引き下がれないと聞き直す。


「ここ以外で買える場所は無いんでしょうか」

「もう一店舗あるんだが、元々下ろすのは明日の予定だったのと、棚卸し業務のために休業になっているはずだ。本当に申し訳ない」

「・・・・・・致し方ないですな。オウギ様、後でお送りしますので、今日のところは帰りましょうか」     


スガイに諭される。タイミングが悪いときに来てしまった。残念だが米は手に入らなそうだ。しかしそうなると今日の夕飯は何を作ろうか。

卵と野菜と肉と魚。米を除いてほとんどそろっている。

調味料もいろいろ買ったが、味が濃い品を作るとなるとどうしても米が欲しくなる。

小鉢をたくさん作っても腹を膨らますのに心許ない。


「とおちゃーん」


悶々としているとどこからか声が聞こえてきた。


「とおちゃーん!おいらここいるよ」


その場にいた全員が声のする方を振り向いた。

米屋の向かい側にそびえ立つ大きな木の上。その枝分かれしたところに、子供が座っていた。


「ボン!どうしてそんなところに!」

「えへへ、頑張って登ったんだぁ。でも降りれなくなっちゃった」


嬉しそうに手を振っている。

木登りの才能があるにしても、落ちたらひとたまりも無い高さだ、笑い事ではない。

皆が駆け寄り、木を登ろうとするが届くものはいない。

手を伸ばすものがいたが、空を切るだけだった。


扇はその光景を見て妙案が浮かんだ。自分には炎を出す力がある。他の部位からは出せないだろうか。足から出せるならロケットのようにスピードを出して木を駆け上がれそうだ。


 試しに靴を脱いで、足の裏にイメージを寄せる。手から出したときのように暖かさが広がってくる。


--シュボッ、シュボッ


これならいける。

自分の案は成功するそう確信した。


「俺が木に登るので、皆さん少し離れてください」

「スガイさん俺行ってくるね」

「オウギ様!」


扇は木から一定の距離をとり、助走をつけて一気に木を駆け上がった。

 足を交互に動かし、木に設置した瞬間にブーストをかける。そのまま足の動きが止まることなく、駆け上がっていく。


「っと!」


最後は落ちそうになったが、空を蹴ると枝の付け根に手が届いた。あっという間に子供の場所へ到達できた。


「はぇ」

「何だあいつ・・・・・・」

「風魔法の使い手か?」


その光景に子供含め、周囲のもの達は唖然としていた。

扇は視線が集まっていることに気づき、罰が悪くなる。ともあれ救出が目的だ、子供の方に手を伸ばしそのまま抱え込む。そして地面に飛び降りる。


着地したその瞬間、歓声が上がった。


「すっげえええええ!」

「おおおおおおおおお!」

「今のどうやったの!?」


扇は一気に恥ずかしくなり、子供を離すと手で顔を覆おうとしたが、横から来た鬼人に手をつかまれ阻止された。


「あんちゃん!ありがとうな!」

「あんなコトできるなんて、やっぱり魔法使いすげーな!ほらボンもお礼ちゃんと言いなさい」

「お兄ちゃんありがとう!楽しかった!」

「そういえば君たちは米を買いに来たんだよな、今用意するから持って行ってくれ」


父親から礼をされる。子供にとって先ほどの出来事は楽しかったのだろう、終始ニコニコしている。子供は怪我一つしていないようだ。


「オウギ様ぁ~!大事ないですか~!」

「スガイさん!米!これで買えるよ!」

「そうでございます、が!今回は無茶しすぎです~」

「そんな心配ないって」


涙目のスガイが駆け寄ってきた。

称える人の隙間を縫って、扇も駆け寄っていく。

少したしなめられたが、米を食べるにはこの方法しかなかった。


(自分、やるときはやる男なのだ)


普段は人目を避けているが、こう褒められると少し自慢したくなる。

そうこうしているうちに、先ほどの鬼人が米袋を持ってきた。

一袋の予定だったが、二袋もおまけでつけてくれた。しかも無料でいいという。

 扇は迷ったが、資金があれば家のリフォームに充てたいので、今回の施しをありがたく受け取ることにした。


「良かったですねオウギ様!お米いっぱいもらえましたよ」     「予定外が重なったけどこれでご飯には困らずに済みそう」

「そういえばスガイさん、今晩何食べるか決まりましたか?」


今回の同行の礼も兼ねて家に誘うと、快諾の返事が返ってきた。


スガイをテーブルに座らせて扇は台所に立つ。

米は先に炊き始める。水につけておきたかったが、客人がいるので割愛する。


「買ってきたものを確認しつつ切り始めよう」


袋から買ってきた食材を袋から取り出し、並べていく。


「これ赤鱗実って言ってたけど、囓るとトマトそのままなんだよな。ややこしいからトマトでいいか。」


他の野菜も名前や特性こそ違うが、試食すると日本の野菜と変わらない味のものがほとんどだった。

形も比較的似ているのでわかりやすい。大きく変わるのは肉や魚で、家畜の肉ではなくモンスターの肉を食べることになる。

(ジビエと思えば変わらないか)

今日の目標はオムライス。

残念なことにトマトケチャップなんて便利なものこの世界にはなかったのでシンプルなものになりそうだ。


 まずはタマネギ、ピーマンは食べやすい大きさにカットする。トマトはみじん切りにした後ソース用と米用に分ける。

 次に鶏肉を切る。コッコル肉というものが売っていた。卵も見かけたので多分鶏肉なんだと思う。こちらも食べやすい大きさに切る。

 スキレットに油をしいて、手から出した炎にかける。スキレットは鉄製なので暖まるのに時間がかる。おいしくなる分の等価交換だ。

 スキレットが暖まったら鶏肉を入れて熱する。肉の色が変わるまで炒め、色が変わったらタマネギを加えてしんなりするまで炒める。

 全体に火が通ったら炊き上がった米と、みじん切りにしたトマト、塩こしょうを加えてよく混ぜる。このときにあまり炒めるとトマトがべちゃっとなるので炒めすぎない。

 まずはライスの完成だ。

 次にスキレットが空いたら先にバターを敷いておく。そのあとからコッコルエッグ(卵)3個に牛乳を混ぜて溶いたものを一気に投下する。

このとき菜箸で混ぜながら半熟状に火を通すととろとろオムライスになるってワケだ。

後は皿に盛り付けて、みじん切りにしたトマトを軽く炒めたソースを上からかける。これでコッコルオムライスの完成だ。


「はぁ、ちゃんとオムライスだ・・・・・・」


慣れない食材からちゃんとできるのか心配だったが、無事完成したことに感嘆の声が漏れた。早速実食だ。


テーブルの上に二人分のオムライスを置く。スガイは目を丸くして不思議そうに観察し始めた。


「これがオムライスですか。こちらにはない料理です。はじめて見ました。食べてもいいでしょうか?」

「本当は上からちゃんとしたソースをかけるんだけどね。普通はもっと濃い味なんだけど食べてみて」

「では早速」

「「いただきます」」


卵を割ると生地がとろりとたれる。ライスと一緒に掬いながら口へ含むと、甘さとしょっぱさが融合して箸が進む。いつも食べてる味に比べると薄味だが、それでも久しぶりのごちそうに昼間の疲れも吹っ飛んだ。


「ふぉおおおおお!これは!おいしっ!おいしすぎます!」


スガイはオムライスのうまさに声を上げている。次から次へとかき込んでいる。大分気に入ったようだ。

そんなに喜ぶとは思わず、反応をもらって嬉しくなった。

扇も少しずつ食べ進める。

ちらっとスガイの皿に目をやると、あっという間に完食していた。


「お先に間食してしまいました!こんな美味なモノがあるとは!人生何があるか分かりませんな」

「ははは、口元米粒着いてる。気が向いたらまた作るから、訪問がてら食べに来てもいいよ」

「ホントですかっ!」

「ホントホント」

「また来ちゃいますからね!」


そんな話を交えながら、2人は食事を終えた。


「この料理スキル何かに生かせないかなー」


スガイを見送って、残った食器を洗っていると

スキレットの裏に紫色の煤がついていることに気づく。

こすってみるとスキレットは無傷だった。もしかしたらこれは力の副産物ではないかと思い当たった。


「尚更、直火はやめといた方がいいかな」


この煤が体内に入ったらどうなるのか。改めて自分は特異な存在なのだと実感した扇だった。







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