2、聖女?覚醒する
--「聖女よ。いや召喚されし男よ。貴殿をこの国から追放する」
城内の大広間。大勢の視線が集まる中で、王の宣告が響き渡った。
その宣告を聞いて、扇は目を見開いて硬直する。
城は展覧豪華というわけではなく質素な作りだ。
先ほど儀式で使われた館より少し大きいくらいで門前には衛兵がいる。スガイの顔パスで城に入ると、給仕が出迎えてくる
城内は白い壁で覆われ、所々立っている柱も飾り気のないものであった場内を走り回る子供や給仕と貴族が仲が良さそうに話している光景もみられる。中にはどちらともつかない平民の装いも見られた。ある程度登城を許しているのだろう。
すぐに王の間にたどり着いた。
広間に入る。貴族だろうか中央を避けて観客が集まっている。扇を脇目に花火でチャンバラする子供もいる。その中にもケモ耳だのトカゲのマスクだのをつけている人がいた。もしかするとそういう文化なのかもしれない。
その先、階段のついた少し高さのあるスペースに王らしき人物がたたずんでいる。スガイが来訪を伝えると、すぐにこちらに気づいた。
「こちら聖女のオウギ様です」
「おお!よくぞ来られた」
王は迎えながら階段を降りたあと、扇の前に立つ。
そして扇の様子に気が付いた。するとスガイをつかんで何やら2人で話し始めた。
「スガイ、聖女にしてはその、こう、がっしりしてないか?」
「そうですか?女性でも背の高い方はいらっしゃいますし」
「あと声も低くない?」
「王よ、あまり容姿に言及するのは失礼ですよ」
会話が終わったようだ。王がこちら振り向いて笑顔を作る。
もしかして男であることに気づいたのか。じりりと扇の額から汗がたれる。
「では早速、事の次第は聞いたと思いますが確認のため聖女様の力をお見せいただきたい。」
「力ですかぁ」
扇はばれないように声色を高くする。
何だよ力って。もしかして自分の目からビームでも出るのだろうか。
扇は目を大きく開いて王の額を見つめてみる。
「……?その称号の通り、聖なる力。すなわち浄化の力を見せて欲しい」
何も出なかった、そういうことではないらしい。
王はスルーして話を進める。能力を確認するため瘴気の入った水を浄化する流れになった。給仕がそそくさと準備をすすめる。
しばらくして、目の前にバケツが置かれた。
バケツを前にして扇は仁王立ちになる。水は黒い。念力も何も出なかったのに次は何をすればよいのか。
扇は困惑したが、とりあえず。水の中に指を突っ込んでみた。
らしい声も添えて。やはり何も起きない。
城内がシンとする中、子供達の声がこだまする。
「来訪したばかりで調子が悪いのかもしれません」
「ともあれ召喚は私が見ておりました。あとは 鑑識士を呼んで確認しましょう」
スガイからのフォローが入る。扇はバケツから指を離し、恥ずかしさに顔を伏せている。するとどこからか音が鳴り始めた。
--パチパチパチ
--バチッバチバチバチッ
音は次第に激しくなった。
「聖女様!避けて!」
視界の端で大きな光がバチッとはじけた。スガイの声も聞こえる。きっと花火が暴発したのだ。そのまま花火がこちらに向かってくるのが見えた。
立ち上がる時間は無い
扇は咄嗟に手を広げて衝撃に備える。
ゴオッーッ!!
瞬間、両の手から紫色の炎がでた。天井までつきそうなくらいに広がる。
飛んできた花火は炎に焼かれてちりぢりとなる。灰まで焼かれて何も残らない。
辺りが一気に騒がしくなった。状況を確認しようと顔を上げるとスガイが唖然としている。
「オウギ様は聖女様のはず」
「衛兵!衛兵!前に出よ!王をお守りするのだ!」
「だれか鑑識士を取り急ぎ連れてこい!」
イベントが、イベントが多すぎるっ。
大事になった。手から出た紫の炎は何なのか。
次から次へとイベントが引き起こされる。
頭の整理が追いつかないまま、扇は頭を抱えてしゃがみ込んだ。
◆
瞬く間に間に衛兵が扇を取り囲む。扉が開く音が聞こえて、ローブを着た初老の男が入ってくる。 鑑識士だろう。
「悪気は、ないんです!、手から火が出るとか思わなくてぇ」
「ごめんなさい!」
「ゴメンナサイで済むなら衛兵いらないよ!」
どこからかヤジが飛んできた。
いつもは落ち着いている扇も、大事を前にして涙目になってくる。
「聖女様怪我はありませんか」
「面を上げなさい聖女よ、しかし変な行動はしないように」
「まずは鑑識者に調べさせよ」
王が淡々と命令を下す。
王とスガイはそこまで警戒していないことに安堵する。 鑑識士が近づく。扇の顔に手をかざすと、光があふれて全身を包んでいく。
鑑定されてる間、情報は共有されるのか、扇の中にも情報が流れ込んできた。
【スキル】ダークフレイム
これが炎の正体か。全然聖女関係ないじゃん。
正反対の能力に思わずツッコミを入れたくなった。
一方が鑑定士王に結果を報告すると、王は驚いた表情になる。
「スガイ!やはり彼は男だ!使える魔法も闇魔法だ!」
「ななななんと!男の子でしたか」
「人間の性別は見分けるのが難しく。申し訳ありません」
召喚の失敗が判明し、周囲から落胆の声が聞こえた。
俺も早く帰りたい。つられて扇も悲しくなる。
「スガイさん、俺の魔術ってヤバいの」
「ああオウギ様この世界にはですね。」
この世界には魔法が存在する。
自然の力が元となっており、強さは術者の性質によって決まる。主に元素魔法とそれを組み合わせた応用魔法の2種類に分かれており、そのなかでも元素魔法は強力であり、使えるものはごく僅かである。
魔法の基本は水、風、土、火、の四元素に加えて特別な闇と光が存在する。
闇魔法と光魔法については特別なので監視下に入る。
そして魔法使いは国に登録申請をする必要がある。
と簡単に説明するとこういった感じだ。
やっと自分は異世界にいるのだと自覚する。
そして説明が終わった後、王の口から今後の判決が下された。
「聖女よ。いや召喚されし男よ。貴殿をこの国から追放する」
城内の大広間。大勢の視線が集まる中で、王の宣告が響き渡った。
扇は目を見開いて硬直した。
「え、まさか」
勝手に呼ばれて勘違いされた挙げ句、追放されるのは身勝手すぎる。
扇は抵抗しようと声を上げようとした
「というのは酷なので冗談であるが、闇魔法を使う以上監視が必要だ
。国を出たすぐ隣に廃屋がある。そこで暮らして欲しい」
王の冗談にこめかみがピクッとなるが、下された判決に安堵する。ホームレスにはならずに済む。よかった。
それに自分は聖女じゃない。国のために働く必要は無い。
むしろ自由な拠点を手に入れたといえるだろう。これなら家族を探しに行ける。
勝手に召喚され、勝手に勘違いされ扱われたが、この判決には感謝した。
「それでは一同解散」
王の言葉を皮切りに、長い一日は幕を閉じた。




