プロローグ
ガツンッ
狭いトンネルの中、車体が何かに当たった音がした。
安全第一で進んでいたため、乗員への影響はほぼないようだ。運転手を責めるように声が上がった。
「何してんのよお父さん!」
「お茶こぼしたぁ〜」
「ごめんごめん」
母が怒り、妹が悲しんでいる。暗くて見えにくいが皆無事なようだ。声を聞いて自分も安堵する。
しかし車は前に進まなくなった。
元はといえば母の発言が発端だ。祖父母の家に向かおうとしていたが、連休に伴い道路は渋滞。父親の機械オンチが発動して、カーナビの道を間違い続けるなど、予定の時間をだいぶ押していた。そこで母に案内の権利が渡る。母は効率重視と言って最短の道を好む。結果今いるトンネルにたどり着くこととなった。
見慣れない道の提案に母を除いて反対したが、渋滞による疲弊がでていたので、最終的にトンネルを選択したのである。
ガンッ!ガンッ!
安心したのもつかの間、車を両隣から叩くように大きな衝撃が生じた。
予想外の出来事に社内がパニックになる。
「え、なになになに!」
「キャー無理やり進むからこうなるのよ!ララ、扇!体を丸めなさい!!」
「ママァ!!」
「……!」
声は出さないが内心すごいパニックである。横にいる妹を抱え込み丸くなる。
トンネルに入ったのは昼のはずだ。昼間から起きる心霊現象なんて、ホラー映画でもなかなか見ない。
ついには車体が傾き始めた。大きめのバンのハズなのにいとも容易く丸め込まれる。
怪奇現象が早く去ってほしいと願いながら、扇の視界は暗転した。
アルセリア亜大陸。
その一角に位置する桃源国の六儀館に、祈祷師たちが集まった。
中央で白い和装の男が話し出す。
「ついにこの時が来ました」
「西から伝えられたこの儀式。きっとこの国に安寧をもたらしてくれるでしょう。」
大理石の広間が広がる中、中央には二重の円が描かれていた。円はニ重になっており、その間を記号のような文字がぐるりと埋める。
祈祷師たちはそれに沿って、決められたフォーメーションで並ぶ。
館の一角には関係者が立ち並び、儀式を見届けようとにぎやいでた。
主催者が呪文を唱えはじめた。
後を追うように円が回り始める。
次第に円は光を放ち、回る速度が速くなっていく。
ついには中央に光の柱が煌々と立ち上がり、そのなかで人型のシルエットが浮かび始めた。




