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最低以下スタートの僕、異世界で“俺”を貫く〜気付けば伝説の英雄に〜  作者: マークされた場所
0.5章 異世界ネクサリア

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第7話 世界ごと断つ斬撃

⸻灼熱の咆哮が空を裂く。


ドラゴンが大きく息を吸う

と、


コオオオオォォ!


口の中に炎の玉ができた

赤く染まった光が、一直線に地上へと降り注ぐ。


「⸻来るぞ!」


フェンドリードの声とほぼ同時に、


ゴウウッ!


ドラゴンの口腔から放たれた灼熱の奔流が、こっちめがけて迫った。

僕は反射的に身を縮めた。


(死ぬ……)


そう思った瞬間。


「させるかよ!」


ドラヴィンが、地面を踏みしめる。


彼の手には、いつの間にか見覚えのない武器が握られていた。

⸻マスケット銃のような形状だ。


金属音が一瞬だけ鳴る。


「ドシュッ!」


引き金が引かれた。


乾いた破裂音とともに、銃口から放たれたのは弾丸ではない。

圧縮された衝撃波だ。


灼熱のブレスと正面から衝突し⸻


轟ッ!!


爆ぜるような衝撃音とともに、ブレスが空中で押し潰される。

火炎は霧散し、熱風だけが周囲をなぎ払った。


「うおっ……!」


僕は思わず目を閉じた。


だが、熱は来ない。


「一発限りだ。外すな!」


続いてフェアレンの声が響く。


彼はすでに弓を引き絞っていた。

放たれた矢は一本ではない。

風を縫うように分かれた三本の矢が、ドラゴンの翼の付け根へと突き刺さる。


「動きは止めたぞ、隊長!」


ドラゴンの巨体が、空中で大きくよろめいた。

完全に落ちることはないが、明らかに体勢を崩している。


その時⸻


フェンドリードは、静かに前へ出ていた。


剣を構え、深く息を吸う。



ヒュッ



風が止み、


周囲の音が、一瞬だけ消えたように感じられる。


(……空気が)


僕の喉が、無意識に鳴る。

心臓の音が大きい


フェンドリードの足元から、何かが張り詰めていく感覚。

剣身が、光を反射しているわけでもないのに⸻

なぜか「勝てる」と確信させる、異様な存在感。


ーーグオオ!


ドラゴンが、最後の抵抗とばかりに吠えた。


シュゴオオオーー


空気が渦を巻き、風が集束する。

馬車の屋根の白い布がパタパタと音を立てる

僕も正直一緒に白旗を振りたかった


「⸻ほう、魔法まで使えるのか」


フェンドリードが呟く。


ドラゴンの周囲に、巨大な風刃が形成される。

放てば、馬車どころか周囲の森ごと薙ぎ払う威力だ。


だが、


フェンドリードは、一歩も止まらない。


「……終わりだ」


低く、短く。


剣が、振るわれた。


技名を告げるように、彼女は一言だけ吐き捨てる。


「⸻(ぜつ)⸻」




瞬間。



  

世界が、止まる。




剣が空気を裂く音もなく振られる


僕は初めて目にした

“斬撃の形”を斬撃そのものを

世界を断つ斬撃を



剣の軌跡に沿って、世

          界そのものが斜めに裂けたように見えた。

ドラゴンの放っ

       た風刃。

その奥にあ

     る巨体。

さらに

   背後の木々。

 間。




⸻すべてが、同じ角度で断たれる。


遅れて、ズズ……と音がした。


切断された空気。

切断された風。

切断されたドラゴンの身体。

切断された木々。


巨大なものほど、ずり落ちるのは遅い。

ドラゴンは、静かに、崩れ落ちた。


ドォン……。


地面が揺れる。


それだけだった。


「……終わったな」


ドラヴィンが肩を回しながら言う。

フェアレンは弓を下ろし、感心したように口笛を吹く。


「相変わらず、えげつねぇな隊長」


フェンドリードは剣を収め、振り返る。


「被害確認」


「屋根が逝っただけだな」

「トロッサも……生きてる」


颯真は、馬車の陰からそっと顔を出していた。


(……なに、今の……)


恐怖なんか消し飛んだ、理解が追いつかない。


戦いは、確かに起きた。

ドラゴンも、確かにいた。


でも、

切られた

あまりにも、一瞬だった。


フェンドリードが、僕を見る。


「怪我は?」


「……あ、ありません」


声が少し震えた。

メルヴァンが、腕の中で楽しそうに笑う。


『はは、どうだ?

これが、ヴェイルブレイドだ』


僕は、ただ頷くことしかできなかった。


(……かっこいい)


朝の森に、切断された木々と、静まり返った空気だけが残っていた。


倒れた木々の断面は異様なほど滑らかで、焦げも、裂けもない。

まるで最初から“そういう形”だったかのように、切り分けられている。


僕は、しばらく動けずにいた。


(………………)


ついさっきまで空を覆っていた圧倒的な存在は、今や地面に横たわる巨大な骸に変わっている。

血が噴き出すこともなく、ただ断たれ、終わった。


切断された森の向こうで、風がようやく流れ始めた。

まだ息の仕方を思い出せない


ただ自分の胸に確かに芽生え始めた“憧れみたいなもの”を、はっきりと自覚していた。

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