第33話 次回、デストラクション
エルドリックとの戦闘から、3日後。樹鬼にされかけていた人も、毒霧にやられていた討伐士も無傷ではないが全員無事、特に異常はなかった、と言いたいところだが、街の外を見て僕は驚いた。何もなくなっていたのだ。地面は焼け焦げ、所々生えていた木は存在しない、あるのは山積みになった樹鬼の死体のみ。そしてもう一つ不可解な事がある、街を歩くたびに「英雄さま」と声をかけられるようになったのだ。「街を助けてくれてありがとう!」、「あのエルドリック倒したって本当ですか!」何回もそう言われた。僕は訳がわからず「え、ああうん」と適当にあしらって今サブ拠点のベットの上で避難している。どうゆう事なんだろうか?英雄?僕が?毒で動けなかったなのに?何かの間違いではないのか?メルヴァンに聞こうとも思ったが、何故か喋らなくなってしまった。多分シアも喋れていないだろう。他に、誰か当事者はいないだろうか……待てよ、確かエルドリック捕まったって言ってなかったか?もし話を聞けるのなら、エルドリックに会ってみるか!とりあえずシアに相談だ。自分の部屋を後にし、シアの部屋へ向かう。
ガチャ
シアは読んでいた本から目を離す、体の至る所に包帯が巻かれている
「?どうしたの」
「ちょっと相談があるんだけどさ、エルドリックと面会できないかな?」
「え?どうして急に」
「あの戦い何があったか知りたくてさ、みんなから英雄って呼ばれるけど何もしてないんだ本当に」
「まあ確かに納得できないのもわかる、私街の外の光景を見て驚いたもの、
だから真偽を確認するためにアイツに聞きに行くのはいい案だと思うけど」
シアは本を閉じ、ベットの横に置く
「多分面会は叶わない、」
「なんでさ?」
「あなたは知らないかもしれないけど、グレイシスは相当やばい奴らなの、
国家転覆を目論んだり、殺戮を行ったり、いろんな重犯罪を犯してるの」
「それに教団の下っ端はおろか幹部の一人も誰一人として捕まえる事が叶わなかった」
「どうして?」
シアの表情が変わった、空気が冷たく重く感じる
生唾を飲み込んだ
「下っ端は捕まる前に自害するし、幹部に至っては強すぎるから、
いや強いなんてものじゃないあれは化け物の集団、上位の3人に至っては何も出来ず一方的に殺されてしまう、
一人は目を瞑っただけで全てを歪めてくる、
二人目は防御不能、回避不能の攻撃を持っているしかも触れられれば即死、
最後の一人は存在ごと消してくる、
だからね、今回幹部が捕まったというだけで奇跡なの、だからどんなリスクも犯せない面会なんてもってのほか絶対許してくれないと思う」
「え、じゃあどうしよう」
「だから諦めるしかない……とでも言うと思った?」
「え?」
さっきの声色との温度差にびっくりする
「私も気になってるの、何でこうなっているのか、あの外の惨状はメルヴァンの攻撃の跡地に似ている、でも今は封印されていて何も出来ないはずなのにああなってる、今メルヴァンに確認が取れない以上当事者であろうエルドリックに聞くしかないよねってことで、不法侵入しよう」
「ちょ、ちょっと待った!」
シアは少し笑っている
「知りたくないの?真実」
「いやまあ聞きたいけれども……」
これはシアの認識を少し改めなければならない気がする
「でもさ、見つかったらやばいんじゃないの?それに話を聞く限り警護が頑丈そうだけど」
「もちろん、バカみたに頑丈だと思う、それに見つかればヴェイルブレイドだろうが誰だろうが打首にされる」
おいおい!やっぱりまずいじゃないかよ、さすがにリスクがありすぎるんじゃ?
「でもやらなければわからない、だからやるのもちろん手伝ってくれるよね?」
シアの目が真っ直ぐこっちをみている、多分僕に残された選択肢はYesしか存在していない
脅迫だこんなの、
2、3拍
シアは頬づえをつき足を鳴らしている
「……ねえ早く決めてよ、今Yesって言ってくれれば何でも一つ言うこと聞いてあげるから」
マイナス1拍「イェス!」
「……え?キモい」
「キモいはないだろ、そして文句もないでしょ、いいよ手伝うよ」
バカみたいに高いリスクを負うならば、馬鹿みたいにに高いリターンがあるべきだ
なんでも命令聞かす事が出来るらしいから何にするか考えておこう
「はあ、じゃあ作戦はこう、エルドリックは港の地下にある牢獄にいるらしいのだからまず、”あなたの能力を使って潜入する”、そして看守の聴覚と視覚を私が奪うって作戦、どう?単純だけど完璧でしょ?」
しばしの沈黙、
「まさか、気づいてないの?自分の能力の変化に」
「いや、薄々気づいてた、でも今のではっきりしたよ、
今、僕の能力は人からだけじゃなくて無機物からも借りられるようになってるんでしょ?
例えば、こうやって金具を触ればさ……」
テーブルの金具を触り
『【…たッ..ま..せ】』
そして、自分の手の平を軽めに叩く
ガキン!
金属がぶつかり合う音が響く
「こうやって金具の”硬さ”を借りる事が出来るってわけ」
「そう、あってる、あなたの能力は
不安定型、マイナス7レベル、【…たッ..ま..せ】
はれて自壊入りおめでとう、これを成長ととるかどうかはあなた次第だけどね
ちなみに本質には気づいてるの?」
自分の手を見る、変化はないいつも通り何にもない手だった
「もちろん、僕の能力は【他人任せ】
人任せ、他任せ、運任せ、他力本願それが僕だ」
シアは目線を落とし、両手をパン!と叩く
「そう、わかってるならいい、じゃあどうやって能力使うかなんだけどーー」




