第32話 遥か夢の記憶
いつからここにいいたんだろう、10年、100年、はたまた1000年
見た事もない花が一面に咲いた草原、服は、軍服?いやぼろぼろの学生服に学生帽
……ダメだ思い出せないや、俺は一体誰なんだろう
何者なんだろう?どうしてここにいるんだろう?
だけど、なんだろう頭に響くこの声は
『私を探して』
聞き覚えがあるような無いような、ただ何か大切な物だった気がする
生暖かい檻の中、目の前で、奪われたナニカ、変えの効かない失ったナニカ
わからない、でも探さなきゃならない気がする
……
「ねぇ、君」
「え?」
なんだこの子は、いつからいたんだ?セーラ服?
誰だろう
「えー見た目からして日本人だよね、こんな所で突っ立って何してるの?学生でしょ」
「日本?」
「違うの?」
「ごめん覚えてないんだ何も、どうしてここにいるのかも、何者だったかも」
「ふーんそっか」
「君は?」
「ボク?ボクは未定谷斜、永遠の15歳、種族人間、血液型AB型ナナメでいいよ」
「僕?女の子だよね」
ナナメは呆れた1パーセント、いい感じの返し出来そうで嬉しいなー99パーセントの顔で返す
「おいおい、時代は多様性だぜ?
同性愛、ニューハーフ、なんなら自認ワンコだって認めて行く時代
まあ、ボクは自認も体も女子だけどね、要はただのそうゆうお年頃なだけ」
「そうゆうお年頃?」
「俺っち格好つけたいぜってオトシゴロ、いわば厨二病なだけさ」
「そうなんだ、で学生なの?」
「まあ、そうだった、かな
突然この世界に飛ばされちゃったんだよねー選ばれたかなんかで
……君もしかしてボクと同じ厨二病だったりする?記憶喪失ミステリーキャラみたいな」
「厨二病?じゃないよ、思い出せないのは本当なんだ
それに変なキャラ作りしたって意味ないじゃないか」
ナナメは今度こそ本当の呆れ顔になる
「はぁ全くわかってないな、あるよ、大義名分が」
「何?」
「厨二病なのに、厨二病を隠し、厨二病を冷笑する格好悪い奴らを冷笑する大義が
厨二病を隠し冷笑する奴らみたいにはなりたくないんだ
厨二病なら厨二病らしく、周りを見ずに、未来を見ずに
今を生きるそれがボクだよ」
「確かに厨二病は後で自分を苦しめる黒歴史になったりするかもしれない
あとで恥ずかしい思いをするかもしれない
でも、そんな事で格好つけない理由にはならない
なぜなら格好ついてるボクはいつだって格好いいからだ」
なんだか誇らし気にいい放つ
ただ少し
「格好いい……」
「やったね、また格好ついちゃった」
「……で、なんの用なんだよ、声かけたのって厨二病そうだったからとかじゃないよな」
「まあ、それもあるけどボクが初めて君を見つけた160年前からずっと寝てたから
気になって声をかけたってわけ」
「160年前⁉︎、君…ナナメって人間だよね?どういう事」
「それはねーー」 コォーブオッ
突然空から火柱がナナメを襲う、火柱の主は大きなドラゴンだった
「あぶない!」
ナナメは避けようとはしない、ただ目を瞑って
『火炎放射は届かなかった』
は?何を言っているんだ?届かないわけ…
届かなかった、届かないように捻じ曲げられたみたいな
「まったく会話の邪魔、ドラゴンらしくワイルドなのはいいけど、やめてよね」
そう言うとナナメはドラゴンを見る
『お前の内臓は蛆虫だ』
そういった瞬間、ドラゴンは空中で止まり
そのまま地面にーードン!そして
「な、なんだよこれ」
穴という穴から蛆虫がうじゃうじゃと蠢き、ドロドロと出てくる
ドラゴンは既に息絶えていた
「な、何をしたんだよ……」
「決め付けのさ」
「は?」
「見えない世界を、見えない現実を、見えない今を
見えない箱の中身を決めつけ、押し付ける能力【不確定の戯れ】」
「え……そんなの、そんな事が」
「できるよ、この世界ならね
全く、いい世界に来ちゃったな〜努力しない奴にも優しい世界に」
コイツはやばい敵に回してはならない……
「で、本題に戻るけどなんで人間なのに老いずに160年間生きていられたのさ」
「そりゃあ勿論決めつけたからさ、老いは目に見えないなぜなら
ボクにとってまだ老いるとは成長だからだ
そして成長が老いるに変わる前にボクは老いないと決め付けて不老になった」
「なるほど」
「……そんなに警戒しないでよ、敵じゃないよ
そうだ、ボクが知る限りの160年間寝てた訳だけど、何かしたいことでもあったりするの?」
「わかったよ、
そうだな……やりたい事はないけど使命ならあるかもしれない」
「何?」
「失ったであろう大切な物を探さなきゃならない気がするんだ」
「ふーんそう、それさ、ボク暇だしついて行っていい?」
「いいよ」(いや、断れるわけないだろ!)
「やったね!これで暇がなくなった、
そうだ、名前……覚えてないんだったね、じゃあつけてあげる
名前はーー」
ドン!
「っはぁ!」
突然扉が爆音と共に開き、夢から強制的に覚めさせられた
(一体、何事?)
「はあっ、はあっ」
扉を爆音で開けたのはシアだった
頭に包帯を巻き、杖に縋って立っている
「だ、大丈夫?」
ドサっ、
大丈夫?僕がそう言うなり座り込んでしまった
「なんだ、意識あるんじゃん、あー心配して損した」
「意識……あ!エルドリックは!?」
「エルドリック?捕まったって
というか、あなたが捕まえたんでしょう?少なくともそう聞いたけど、もしかして覚えてないの?」
「記憶になくて、」
「そう」
ドタドタドタドタ!
扉の向こうの方から怒ったような早歩きの足音が聞こえる
「ちょっと、ヴァレンシアさん!お仲間が心配なのはわかりますが、目覚めたばかりなんだから安静にしていてください!」
ギルドで怪我人の介護役に徹していた人だった
どうやらここは病院で、あの戦いの怪我人を治療しているらしい
「……ごめんなさい」
シアは部屋を後にする
「ソウマさん、貴方も安静にしていてくださいね!」
バタン!
部屋に静寂が落ちる
エルドリック?僕何もしてないような……ま、勝ったぽいし一旦いいや
そういえばさっきまで見てた夢、内容は確か……あれどんなのだっけ?
忘れちゃった、でもなんだか夢にしては鮮明だったな、
ズキッ、
いてっ、体があちこち痛いな……
「ふああーーあっ」
さっきまで寝てたくせしてまた眠くなってやんの、まあ寝るか
ソウマはまた眠りに落ちた




