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最低以下スタートの僕、異世界で“俺”を貫く〜気付けば伝説の英雄に〜  作者: マークされた場所
第1章 能力覚醒編

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第28話 思いついた打開策

(……全然、寝れない……)


寝苦しさに耐えきれず、ゆっくりと上体を起こす

背中に血が溜まっていくような感覚が、妙に不快だった

まだ、夜は明けきっていない様だ

窓の外は暗く、空は深い色をしている


(うう、ねむい……くっそ)


頭は確かに眠い

けれど、体がそれを許してくれなかった

横になれば横になるほど、寝れぬ焦りだけが増していく


「……しょうがない」


小さく呟く


ここは外の冷気で、眠気を覚ますか

それに、起きるならちょうどいい


(案、考えないと……)


昨日、ギルドマスターは言っていた

明日いっぱいまでだ、と

つまり、実質的な猶予は今日だけだ

正直寝ている暇はなかった


そう決めて、部屋を出ようとした、その時


『おう、どこ行くんだ?』


声に、足が止まる

メルヴァンだった

昨日帰ってからベットの枕元に置きっぱなしにしていたのを忘れていた

ちょっと申し訳なくなくなる


「起きてたんだ……ちょっと、散歩に……」


『散歩?こんなに早くからか? まだ日も出てないぞ?』


「……」


返答はしなかった

なんとなくだ

深く話す気になれなかっただけだ


『まあいいや。俺は寝るからな〜』


そう言って、メルヴァンは引っ込んでいく

僕は部屋を後にした


ふとシアの部屋を見た、少し扉を開け中を見る

灯りは付いておらずぐっすりと寝ていた

起こすのは悪い、静かに一階へ降りるとしよう


一階は暗く静かだった

音を立てずにドアを開ける

なんだか夜親に隠れて音が出ないようにゲームをしているみたいだ

思えば懐かしい


ーーキィ


ドアを開けると冷たい外気が肌を刺す


街は、まだ眠っていた

誰一人として歩いていない

街路灯だけが、ぽつりぽつりとオレンジ色に光っている

その光だけが暖かかった


気づけば、足はギルドの方向へ向かっていた


(昨日は……)

歩く途中頭の中で、何度も同じ昨日の場面が再生される

(シアに、無責任なこと言ったな……)

「なんとかする」

「案を考える」

言うのは簡単だった

でも、実行できなければ、それはただの言葉だ


悩んでいる暇はない

なにも案が出なければ

メルヴァンはエルドリックに差し出される

そうなれば、ヴェイルブレイドは悲しむだろう

考えるまでもない

それは絶対に避けたかった


(そうならないためにも考えないと)


一旦足を止める

まず案を出すため一旦奴の情報を整理しよう


エルドリックの能力

新芽の芽吹き(フィロクロマンサー)

植物を急成長させて、操る能力……

なんとも不思議な能力だ


そして、あの軍隊

地面から生えてくるように現れた、樹鬼たち

いやおそらくあれは地面から生えていた


地面

植物


火で燃やす?

いや、生木はそう簡単には燃えない


ゲームの相性みたいに、

木属性には火属性だから有利、なんて話が通じるならどんなに楽だったか


いっそ植物が生えないようにしてみるのは?

まあそんなの不可能だ

じゃあ、どうする?


考えれば考えるほど、答えは遠のいていく


「……うお、寒っ」


突然冷たい風が、服の隙間をすり抜ける

薄着で出てきたことを少し後悔した

そしてサブ拠点へ戻ることを決意する

風邪を引いたら戦うどころではなくなってしまう


それに空気を読まない風により

眠気は完全に吹き飛んでいた

なんとも皮肉な話だ


ガチャ


ドアを開ける


さっき出た時とは違い、一階に明かりが灯っていた

シアが起きたのか?

だが人影は見えない


とりあえず、自分の部屋に戻るため2階へ向かう

シアの部屋が空いており灯りが灯っていた

やっぱり起こしてしまったのだろうか?

だとしたら申し訳ない


僕は自分の部屋のドアを開けようとした

その時

「ねえ、どこ行ってたの?」


声がした

振り向くと、シアがいた

なんとも寝起きと言った感じだ

寝癖がところどころ跳ねている


「ごめん、ちょっと散歩に――ぐほっ!」


言い終わる前に、腹に衝撃走る


シアの拳だった


「まったく! 勝手に行かないでよ!」


はっきりと怒っている

いやまあ、そこまででもないか


「エルドリックに攫われたらどうするの?

それに、一人だとこの世界の言葉、ちゃんと喋れないでしょ」


「ご、ごめん……」


腹を押さえながら言う

殴られたのは酷い話だが

心配かけた方がもっと悪い

殴られるのは妥当だな


「寝れなかったし……それに、案を考えるために……」


シアは、少しだけ視線を逸らした


「……ふーん、そうなんだ」


声が、少し小さくなる


「あの言葉、嘘じゃなかったんだ……」


「……え?」


聞き取れなかった

喋っているなーぐらいにしか


「ごめん、なんて言った?」


「なんでもない!」


少し強めの声


「だったら、一緒に案を考えるの手伝ってよね!」


「うん、もちろんだよ」


シアが、ふと思い出したように言う


「そうだ。ちょっと、試したいことがあるんだけど……」


「ん? なに?」


「あなたの能力、私に使ってみてくれない?」


「え? なんで?」


「いいから、早く!」


「……わかった」


一体なにをやる気なのかはわからない

だが別に従わない理由はない


「じゃあ手を出して、触らないと効果ないみたいだから」


シアは、言われるままに手を出した


「じゃあ……いくよ」


深呼吸。


「フォースインヴォーグ!」


力が、身体に満ちる

けれど

メルヴァンの時とは、明らかに違った

生姜を食べた後に、血行が良くなるような感覚

それくらいの変化しかない

大違いも大違い

月とスッポン


シアは、静かに呟いた。


「……やっぱり、そう」


「なにが?」


「私の能力だと、能力そのものは見えるんだけど……

 本質までは、わからないの」


そういえばメルヴァンもそんな感じのこと言ってたな

内容は全部わからないぞ、と


「だからメルに使った時みたいなことが起きるかなって思ったんだけど……

でもやっぱり、あなたの能力はよくある“力を借りる”タイプみたいね」


「ふーん……」


なるほど、

正直、驚きはなかった

やっぱりか、と言う感じだ


「……まあいいや。案を考えようぜ」


ドアをくぐり

ベッドに腰を下ろす

シアは、近くの椅子に座った

メルヴァンは寝ているようだ

反応がない

1番の当事者のくせして呑気すぎる


しばらく、シアと案を出し合う


しばらく、二人で案を出し合う。


正面突破?

軍の総力が分からない以上、それは厳しい。


囮を使って仕留める?

ワンチャンはあるが、不安が大きい。


偽メルヴァンを渡す?

その案、マスターがダメって言ってたじゃない


なら、いっそ逃げる?

……人質はどうするの?かわいそうでしょ



「……やっぱり、いいの思いつかない……」


「……そうだねー」


部屋の中を、無意識に見回す


その時


テーブルの横に置かれていたあるものが、目に入った

完全に存在が空気と化していたあるものだ


(……ん?)

ちょっと待てよ

頭の中で、何かが繋がる


植物操作

急成長


心臓が、少しだけ速くなる

(これ……使えるんじゃないか?)


いや待て、そんなすぐ効くことあるか?

でもあいつの能力は…


今思いついたこの案は馬鹿げてはるものの失敗するとも言い切れないものだった


「ねえ、シア!」


「びっくりした……どうしたの?」


「……もしかすると打開できるかもしれない!」


シアの目が、大きく見開かれる


「……嘘、どんな案?」


「それは――」


最後まで話し終えると、シアは黙り込んだ


「……なるほど」


沈黙


その時間が、やけに長く感じた

やっぱりバカだったか?

真面目に考えられるのが少し恥ずかしかった

だから耐えきれず、口を開く


「あ、やっぱ今のなし!

流石にバカバカしいよね……」


でもシアは


「いや、待って」


シアは顔を上げた


「結構、行けるかも」


そして、小さく頷く


「ちょっと……ギルドマスターに言ってみよう」


胸の奥で、なにかが確かに動いた


希望、とはまだ言えない

でも、なんだか勝ちの兆しが見えた気がする

僕たちはサブ拠点を後にする

日はすでに登っていた

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