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最低以下スタートの僕、異世界で“俺”を貫く〜気付けば伝説の英雄に〜  作者: マークされた場所
第1章 能力覚醒編

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第24話 ごめんなさい

『ちょっと待った!』


メルヴァンの声が、はっきりと焦りを帯びる。


『やっぱり飲み過ぎだ! 言っちゃ不味いことまで言ってるぞ!』


だが、今その声が届くのは、現在僕だけだ。


「……メル?」


ラティナが首を傾げる。


「誰?」


次の瞬間、シアは何の躊躇もなく言った。


「この仮面。メルヴァンのこと」


――空気が、完全に割れた。


「……は?」

「メルヴァン?」

「え、あの?」


一斉に視線が集まる。


「行方不明になってた、あのメルヴァン!?」

「戻ってきてたの?!」

「え、マジで!? なあどうやったらメルさんみたく強くなれるんだ!?」


質問が、矢のように飛んでくる。

僕は、思わず仮面を見る。

メルヴァンはめんどそうに口をつく。


『知らん』


だが、メルヴァンの声は、普通は誰にも届かない。

要はただの仮面の沈黙。


それをどう解釈したのか、ドランが豪快に笑った。


「なんだ、寝ちまったのか?」

「戦闘は強いのに、酒には弱いんだなぁ!」

「ははは!」


酔いに任せた笑い声が、場を包む。


仮面であることを疑う者は、誰もいなかった。

酒場の空気が、都合よくすべてを曖昧にしていく。


(はあ……助かった)


僕は、内心で大きく息を吐く


話題は自然とどんどん逸れていき、誰かの武勇伝に上書きされる

そのことに、ほっとする


でも最初はなんてこというんだ!って思ったけど

これ、よくよく考えたら僕のせいだもんな

危険にも巻き込んでさ


お酒をもう一口飲んだ


(……僕も、だいぶ酔ってるな)


少しだけ、思考がぼやっとしているのを自覚する。


***


どれくらい時間が経っただろう。


気づけば、店内の客はまばらになり、店主が片付けを始めていた。


「……閉店だな」


ようやく、解散の気配が漂う。

僕以外は全員、酔い潰れている。


ヴェイルたちはヨロヨロと立ち上がった。


「ソウマ〜?俺が誘ったんだし奢ろうか〜?」


「あ、いや大丈夫ですよ」


それを聞くとヴェイルは自分達分の会計を済ませて店を出て行く

互いに支えながら


「じゃあな、〜ソウマとシア〜」


それを手を振って見送る


「シア、僕たちも会計しようぜ」


返答なし

帰ってくるのは寝息だけだった


(えー……しょうがない)


シアのポケットから、スカイリーパーの討伐金をそっと取り出す。

僕は立ち上がり、会計に向かう


「360オルドだ」


幸い、シアの【全覚(トリニティ)無碍(コミュニオン)】は切れていなかった

だから、


「メルヴァン、これどのくらい払えばいいの?」


『ああ、銀貨3枚と銅貨6枚だ』


「おっサンキュー」


(1、2、3あとは銅貨が1,2,3,4,5,6,っと)

(……よし、これで合ってる)


少し苦労しながらも支払いを終る


(うーんこれ「メルヴァン、これどのくらい払えばいいの?」

なんて聞いたせいでやばいやつ扱いされてるよな絶対…

店主さんにはメルの声聞こえないわけだし)


まあいいや


振り返ると、

やっぱりシアは――完全にぐったりしていた。


「……どうやって帰るんだ、これ」


『【フォースイン()ヴォーク】を使え』

メルヴァンの声が、淡々と告げる。


『そのまま背負って行け』


「……ほい」


ご指示の通り、力を使ってシアを背負う


「ご馳走様」


「あいよ〜」


そのまま店を出た


外の空気はひんやりとしていて

前の様な夜の活気は静まり返っていた。

オレンジ色に光る街灯だけが道を照らしている


なんとかサブ拠点にたどり着いた。


部屋に入り、慎重にシアをベッドへ寝かせる。

深い寝息。

起きる気配は、まったくない。


(……まあ、無事でよかった)


そう思った瞬間、自身の眠気が、一気に押し寄せてきた

意識も絶え絶え

服もそのまま、ベッドに倒れ込む

コンマ0.1秒ほどで、深い眠りに落ちた


***


どれくらい経っただろうか。

ずきり、と鈍い痛みが頭の奥を叩く。


「……いてて」


低く呻き、ゆっくりと目を開ける。

視界がぼやけ、天井が二重に見えた。


(……頭、痛……)

(お酒のせいか?)


まだ夜は明け切っていない。

窓の外、空の端がわずかに白み始めているだけだ。


(こういう時は、水……だよな)


眠気を引きずりながら、体を起こす。


――そのときだった。


部屋の扉が、ほんの少しだけ開いている。

隙間から、誰かの気配がする。


「……?」


目を凝らす。

見慣れた輪郭。

扉の影に半身を隠し、こちらを見ている人物――


ああ、そうだ。


シアだった。


昨夜の酔いは抜けているらしく、表情は硬い。


(……どうしたんだ?)


間の抜けた声で、颯真は言った。


「おはよう?」


シアはびくっと肩を揺らした。

そして意を決したように扉を開き、ゆっくりと近づいてくる。


数歩進んだところで、深く頭を下げた。


「……ごめんなさい!」


はっきりした声だった。


「昨日……その……酔って……」

「勢いで、言っちゃいけないこと、言った……」


顔を上げられないまま、言葉を絞り出す。


「無免許で魔物討伐してるって……」

「あなたのこと、バラした……」


一瞬、沈黙。



「……大丈夫だよ」


軽く笑う。


「誰も、ちゃんと聞いてなかったみたいだし」

「それに……悪いのは僕なんだから。シアが謝ることないんだ」


シアが、はっと顔を上げる。


「でも……」

「もし、バレてたら……あなた、捕まっちゃう」


「うん」


静かに頷く。


「だから大丈夫」

「……しょうがないよ」


少し間を置いて、続ける。


「きっと、自分勝手にしたツケが回ってきただけだ

ーー”自業自得”さ」

「それに謝るのは……こっちだよ」


シアの目が、揺れる。


颯真は視線を落としたまま言った。


「僕が罰を受けるのは、いいんだ」


そして、声を弱める。


「でも……」

「もしかしたら、僕のわがままで、

シアにも罰が下されるかもしれない」


拳を、ぎゅっと握る。


「本当に、申し訳ない」

「……本当に、ごめん」


(そうだ。僕のせいだ。僕が悪い)


シアは、何かを言いかけた。

唇が動き、声になりかけた――その瞬間。


ドン! ドン! ドン!


力強く扉を叩く音が、空気を切り裂いた。


(……何事だ?)


シアが、はっとして扉を開ける。


そこに立っていたのは、ギルドの受付嬢だった。


「……あっ、よかった。シアさん」

「至急、ギルドに来てください! 緊急事態なんです!」


そして、一瞬だけ視線が僕に向く。


「それと……」

「その方も……できれば」


空気が、再び張りつめた。


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