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最低以下スタートの僕、異世界で“俺”を貫く〜気付けば伝説の英雄に〜  作者: マークされた場所
第1章 能力覚醒編

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第13話 魔法

ギルドを出ると、街はすっかり活気づいた朝の顔になっていた。

行き交う討伐士や商人たちの声が重なり、ついさっきまでの静けさが嘘のようだ。



シアは歩きながら、受付でもらった紙束をひらひらと振る。



「これが今回の依頼、


グラード山脈、ふもとの森に生息している《マッドピラー》の毒の採取。

合計十五体分

危険度Ⅰハーモス」



「……なんだこいつ」



僕は紙に描かれた簡易的な挿絵を覗き込んだ。

太く湾曲した尾、鈍く光る毒針、少しやばそうだ。



(サソリ……か? これ)

いや正確にはサソリに似た生物だ


「毒も強くて死ぬこともあるけど、まあ単体行動が多いのが救いね

毒は薬や魔法触媒に使えるから、こういう依頼結構多いの」


(えー結構危険だな)


その説明に、仮面が低く鼻で笑う。



『ふん……で、お前はどうするつもりだ?』


「え?」


『その身体、その筋力……』


一拍置いて、容赦のない声が落ちる。


『さすがにそのままだと…多分何もできないな

すぐ死んじゃう』


僕は反論できる言葉を持ち合わせていなかった

胸の奥に、ずしりと重いものが落ちる。


(……まあそうだよな、)


シアは少し困ったように視線を逸らし、フォローする。


「まあこの後一応防具とか買う予定……それに今日は“身を守る方法を学ぶ”って形だし」


『だとしても、見た感じ身体能力が少し低すぎる

少しは動けないと』



メルヴァンは淡々と続けた。



『命をかける現場で、甘えは通用しないぞ

魔物を狩る時は、同時に狩られる時でもあるんだぜ』


しばしの沈黙。


僕は、小さく息を吐いてから口を動かす


「……じゃあ、どうすればいい?」


その問いに、仮面はわずかに楽しそうな気配を滲ませる。



『決まっているだろ』


低く、はっきりとした声。


『お前の能力(アビリティ)、【フォースインヴォーグ】だったっけか』


はっと仮面を見た


『力を借りることができるんだろう?。

なら――俺の力を借りろ』


仮面がわずかに揺れる。


『被れ。俺を使え。

どうせ今の俺は、喋ることぐらいしかできない、

このままよりは少し役に立つはずだぞ』


シアは少し考えてから振り向いた。


「……まあ、それが一番手っ取り早いね」



『だろう?』



メルヴァンは、どこか誇らしげに言った。



『今のお前が生き残るためにな』



だが僕は少し不安になる


「なあ、でも僕の能力(アビリティ)って安定(スタビライズ)型に近いとはいえ、不安定なんだろ、

そんなの使って大丈夫なのか?」



メルヴァンは目を瞑って答える


『大丈夫だ、そんなすぐに変わりはしないさ。

ちょっと俺の説明が不味かったか?』


『認識的には自壊(デストラクション)以外の不安定(トレモア)型は

そんじょそこらのことじゃなにも起きない。だからーー』


メルヴァンは目を開ける

『あるのに使わないのは損だぜ』


拳を握りしめ決意する


(強くなれるかもしれない)

(ちゃんと、前に出られるかもしれない)

なら、


胸の奥が、じんわりと熱を帯びる。


「……やってみる」


口にした声は、思ったよりも軽かった。

正直、能力(アビリティ)を使えること自体が嬉しい。

まるでゲームの中に入り込んだみたいだ。


『決まりだな』


メルヴァンが鼻で笑う。

シアが思い出したように手を打った。


「そうだ、一応、人にもできる簡単な魔法を教えとくね」



え?



「……人?」


引っ掛かりをぶつけた


「なんか、シアが人じゃないみたいな言い方だけど……」


「ああ、私は魔人族」


シアのとんがり帽子が、少し揺れる

一瞬思考が停止する

さらりと言われて、颯真は固まった。



「……え?」



「魔人族って、ツノが生えてたりするやつじゃ……」


「まあ、そういう魔人族もいるけど少数派、貴族とかはそう

私は人間と同じタイプ」


あまりに平然と言われ、僕は思わず聞き返す。


「へー……じゃあ、魔人族と人の見分け方って?見た目同じなんでしょ?」


シアは答えた


「そうね、体内の魔力量ね

人間は、攻撃魔法以外の初級魔法が

ギリギリ使えるかどうか、が普通らしい」


「魔族は個人差もあるけど、

この世界の人間種の中じゃ、ぶっちぎりで魔力量が多いのが特徴かな」


「……なるほど」


僕胸の奥が、きゅっと縮むのを感じた。

ここに来てまでまた元から持っている物の差で、

()()()()()()()()()()()()()()()()

それに攻撃魔法が使えないのはかなり痛い



(まあ頑張れば、フェンドリードさんみたいに強くなれるかもしれないし……

それに能力(アビリティ)が覚醒したりすることもあるだろ、だろきっと)


「話戻すけど」



そう言って、シアは掌に魔力を集める。



「今回教えるのは初級魔法

光ライトと、索敵サーチどっちも便利」



淡い光が、彼女の掌に灯った。



「基本中の基本魔法よ。

どっちも無詠唱でいけるから、大事なのは“イメージ”と“流れ”。

力を入れすぎないで」



言われるまま目を閉じる。



(光る、って思えばいいんだよな)



胸の奥が、じんわりと温かくなる。



「……あ」



指先に、弱い光がぽっと灯った。



「おー、早い。初めてにしては上出来」



「おお……」



僕は自分の手をじっと見つめた

目が釘付けになる



(これが……魔法か)

(すげえ……マジで異世界だ……)



『悪くないんじゃねえか』



メルヴァンが、少しだけ感心した声を漏らす。



『調子に乗らなければ、な』



「それ今言う?」



残りの《サーチ》も難なく習得した。





三人は装備屋で剣や解毒薬を揃え、街を出る。



森までの一本道。足元の草が、風になびき揺れる

左側にかけている剣が重い

森は、もうすぐそこだ。



シアが歩きながら振り返り、心配そうに言う。



「無理はしないでね。

今日は“命を守る方法を学ぶ”のが目的なんだから」



「了解。……でもさ」



颯真は仮面を手に取り、被るとにやっと笑った。



「ちょっとテンション上がる!」



シアは呆れたようにため息をついた。



「少し落ち着いてよね。死なせはしないけどさ」



少し暖かくなった朝の風が、森の匂いを運んでくる。

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