表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/17

第十三話 魔法

ギルドを出ると、街はすっかり活気づいた朝の顔になっていた。

行き交う討伐士や商人たちの声が重なり、ついさっきまでの静けさが嘘のようだ。



シアは歩きながら、受付でもらった紙束をひらひらと振る。



「これが今回の依頼よ。


グラード山、ふもとの森に生息している《マッドピラー》の毒の採取。合計十体分

危険度Ⅰハーモス」



「……なんだこいつ」



颯真は紙に描かれた簡易的な挿絵を覗き込んだ。

太く湾曲した尾、鈍く光る毒針、少しやばそうだ。



(サソリ……か? これ)



「数は多めだけど、単体行動が多いのが救いね。

毒は薬や魔法触媒に使えるから、こういう依頼結構多いの」



その説明に、仮面が低く鼻で笑う。



「ふん……で、お前はどうするつもりだ?」



「え?」



「その身体、その筋力……」



一拍置いて、容赦のない声が落ちる。



「さすがにそのままだと….多分何もできないな」



颯真は言葉を失った


胸の奥に、ずしりと重いものが落ちる。



(……そうだよな)



シアは少し困ったように視線を逸らし、フォローする。



「まあこの後一応防具とか買う予定……それに今日は“身を守る方法を学ぶ”って形だし」



「だとしても、身体能力が少し低すぎる」



メルヴァンは淡々と続けた。



「命をかける現場で、甘えは通用しないぞ

魔物を狩る時は、同時に狩られる時でもあるんだぜ」



しばしの沈黙。


やがて颯真は、小さく息を吐いた。



「……じゃあ、どうすればいい?」



その問いに、仮面はわずかに楽しそうな気配を滲ませる。



「決まっているだろう」



低く、はっきりとした声。



「お前の能力(アビリティ)、《フォースインヴォーグ》だったっけか」



颯真は、はっと仮面を見つめた。



「力を借りることができるんだろ。

なら――俺の力を借りろ」



仮面がわずかに揺れる。



「被れ。俺を使え。

どうせ今の俺は、喋ることぐらいしかできない

このままよりは少し役に立つはずだぞ」



シアは少し考えてから振り向いた。




「……まあ、それが一番手っ取り早いわね」




「だろう?」




メルヴァンは、どこか誇らしげに言った。




「今のお前が生き残るためにな」




颯真は拳を握りしめる。

だが、その表情は沈んではいなかった。




(強くなれるかもしれない)

(ちゃんと、前に出られるかもしれない)




胸の奥が、じんわりと熱を帯びる。




「……やってみる」




口にした声は、思ったよりも軽かった。

正直、能力(アビリティ)を使えること自体が嬉しい。

まるでゲームの中に入り込んだみたいだ。




「決まりだな」




メルヴァンが鼻で笑う。


シアが思い出したように手を打った。



「一応、人にもできる簡単な魔法を教えとくね」


「……人?」



颯真は首を傾げた。



「なんか、シアが人じゃないみたいな言い方だけど……」



「ああ、私は魔人族よ」



シアのとんがり帽子が、少し揺れる

一瞬思考が停止する



さらりと言われて、颯真は固まった。



「……え?」



「魔人族って、ツノが生えてたりするやつじゃ……」



「まあ、そういう魔族もいるけど少数派ね。

私は人間と同じタイプ」



あまりに平然と言われ、颯真は思わず聞き返す。



「へー……じゃあ、魔族と人の見分け方って?見た目同じなんでしょ?」



シアは答えた



「体内の魔力量ね。

人間は、ギリギリ初級魔法が使えるかどうかが普通って聞くわ。

魔族は個人差もあるけど、この世界の人間種の中じゃ、ぶっちぎりで魔力量が多い」



「……なるほど」



胸の奥が、きゅっと縮んだ。

ここに来てまでまた元から持っている物の差で、劣等感を感じなくてはならないのか



(まあ頑張れば、フェンドリードさんみたいに強くなれるかもしれないし……

それに能力が覚醒したりすることもあるだろ、だろきっと)



少しだけ、嫌な予感が胸をよぎった。



「話戻すけど」



そう言って、シアは掌に魔力を集める。



「今回教えるのは初級魔法

光ライトと、索敵サーチ」



淡い光が、彼女の掌に灯った。



「基本中の基本よ。

どっちも無詠唱でいけるから、大事なのは“イメージ”と“流れ”。

力を入れすぎないで」



颯真は言われるまま目を閉じる。



(光る、って思えばいいんだよな)



胸の奥が、じんわりと温かくなる。



「……あ」



指先に、弱い光がぽっと灯った。



「おー、早い。初めてにしては上出来」



「おお……」



颯真は自分の手をじっと見つめる。



(これが……魔法か)

(すげえ……マジで異世界だ……)



「悪くないんじゃねえか」



メルヴァンが、少しだけ感心した声を漏らす。



「調子に乗らなければ、な」



「それ今言う?」



颯真は残りの《サーチ》も難なく習得した。





三人は装備屋で剣や解毒薬を揃え、街を出る。



森までの一本道。足元の草が、風になびき揺れる

左側にかけている剣が重い

森は、もうすぐそこだ。



シアが歩きながら振り返り、心配そうに言う。



「無理はしないでね。

今日は“命を守る方法を学ぶ”のが目的なんだから」



「了解。……でもさ」



颯真は仮面を手に取り、被るとにやっと笑った。



「ちょっとテンション上がる!」



シアは呆れたようにため息をついた。



「少し落ち着いてよね。死なせはしないけどさ」



少し暖かくなった朝の風が、森の匂いを運んでくる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ