第9話 英雄認定
「が、あ……」
「……ひとまずこんなものか」
俺は死にかけの虫のように地面で痙攣するガオランを見ながら呟く。
ようやく巡ってきた復讐の機会に、少々はしゃぎ過ぎてしまったみたいだ。このままだと死んでしまう、俺は部屋の中で待機していたジーナに話しかける。
「ジーナ、ガオランを手当てしてくれ。死なれたら困るからな」
「はい♡ かしこまりましたクロウ様!」
ジーナがガオランに近づき手をかざすと、傷がどんどん塞がっていく。
仙狐族であるジーナは仙術と呼ばれる特殊な技を使うことができる。傷を治すくらいなら朝飯前だ。
「それにしても見事な手際でしたクロウ様。それにあの虫ケラを見るような目……たまりません。流石我らの王、私興奮してしまいました……♡」
「馬鹿なこと言ってないで早く治療しろ」
「はーい♡」
命令するとジーナはすぐに治療を完了する。
時々ふざけたことを言うけど、ジーナはかなり有能な人物だ。多彩な能力を持ち、戦闘能力も高く、頭も回る。
今回の作戦も彼女のおかげでかなりスムーズに進めることができた。
まあ本番はこれからなんだが。
「ぐ……が……っ」
などと考えていると、ガオランが目を覚ます。
治療はしたが傷を治しただけで、痛みもダメージも残っている。ガオランは地面に這いつくばりながら俺を睨んでくる。
「クソ……許さねえ……お前だけは……ぶっ殺す……!」
「はは、元気じゃないかガオラン。まだ遊び足りないか?」
「いきがれるのも今の内だぜクロウ。俺は特別なんだ。その俺様にお前は手を出した。ひひ……終わりだ。お前はここで死ぬんだよぉ……!」
ひゃははは! とガオランは狂ったように笑う。
ただ錯乱したようには見えない。俺は言葉の意味を問いただす。
「俺が死ぬ? どういう意味だ」
「教えてやるよクロウ。俺たち竜の尻尾は魔王を倒した。そしてその功績を認められ、神に『英雄認定』されたんだ」
ガオランは得意げに語る。
よほど英雄認定されたのが自慢みたいだな。
「そして神は英雄にその力の一部を下さった。それを使えば……てめえらなんざゴミなんだよォ!」
ガオランが吠えた瞬間、突然部屋の壁がゴォン! という音と共に吹き飛ぶ。
その衝撃は凄まじく、建物は大きく揺れる。
そちらに目を向けると、壁に空いた穴から一人の人物が中に入ってくる。
その人物は光り輝く銀髪のツインテールが特徴的な、美しい女性だった。赤い瞳に感情は感じられず、人形のような印象を受ける顔をしている。全身を銀色のぴっちりとしたスーツで覆っており、その抜群のスタイルを際立たせている。
そしてなにより目を引くのが、背中から生えた翼と頭上に輝く光輪。
間違いない。こいつは俺が会いたがっていた獲物の一人だ。
「ひひ、ひひひひっ! ひゃーひゃひゃひゃ! お前は終わりだクロウ! そのお方は神の兵士にして俺の守護者の『天使』だ! 英雄の俺には人智を超えた守護者が付いてんだよ! 天使様ァ! そいつを、英雄にたてついたそのカスを殺してください!」
ガオランが言うと、天使の目が俺を捉える。
「――――命令を受諾。英雄ガオランの敵対存在の排除を第一目標に設定」
そう言った直後、天使の周りの空間から白い砲身の大砲が二門、出現する。いったいどんな魔法なんだろうか、見たことがないな。
「『砲』の天使ミリアル・アークレイ。対象の殲滅を開始します」
二門の砲身の内部が発光し、そして巨大な光の砲弾を放つ。
超高速で放たれた光の砲弾は俺目がけてまっすぐに進んできて……そして俺の体に着弾し大爆発を起こすのだった。