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第13話 合成獣《キメラ》

「ん、んん……」


 暗く、じめっとした場所でエルザは目を覚ます。

 足の裏にはザラザラとした感触がある。どうやら石畳の上に立たされているようだ。


 辺りを見渡すと、そこはどこかの牢のようであった。天井からは鎖がいくつかぶら下がっており、自分の両手はそこに繋がれていた。

 手だけでなく足にも鎖が巻かれており、動けないようになっていた。


「ここは……いや、あたしはどうしてこんなところに……」


 エルザは痛む頭をなんとか動かして状況を把握しようとする。

 そして彼女は思い出す、自分が誰に、どのように負けたのかを。


「クロウ……そうか、あいつ戦って、それで……」


 最悪すぎる事態。エルザの額に汗が滲む。

 腕を動かして鎖を解こうとするが、ガチャガチャと鳴るだけで解ける気配はない。力任せに壊そうともしてみるが、鎖は普通の金属でできているわけではないようで、ヒビすら入らない。


 しばらく脱出を試みるエルザ。

 そうしている最中、彼女はあることに気がつく。


「……そういえばなんで手足が戻ってるんだ? あいつに切られたはずなのに」


 エルザの左足と右腕はクロウの魔法によって切断されたはずであった。あの時の痛みはまだ彼女の記憶に鮮明に残っている。

 それなのに彼女の足と手はまるで最初からそこにあったかのように生えていた。


 いったいどういうことなのかと思っていると、暗闇の中から一人の人物が現れる。


「俺が治したんだよエルザ。そのままにしてたら死んでしまうだろ?」

「クロウ……っ!」


 暗闇から現れたのはクロウであった。

 彼の姿を見たエルザの表情は怒りに染まり『ギリ』と歯を強く噛む。


「相変わらず甘い奴だねクロウ。あたしを殺す度胸はなかったか?」

「そうじゃない。逆だよエルザ」

「あぁ?」

「殺すだけじゃ足りない。お前には絶望してから死んでもらわないと俺の気が済まないんだ」

「……っ!?」


 深い闇を抱えた笑みを浮かべるクロウ。

 エルザには彼がまるで異形の化物のように見えた。これほどまでに強い怒りと憎しみを持った者は今まで見たことがない。

 自分たちは恐ろしい化物を作ってしまった。ここに来る前にクロウの言っていたことは事実なのだとエルザは理解した。


 それでも彼女は笑みを浮かべ、平静を装う。

 危機的状況の時こそ、余裕が必要だと彼女は知っていた。


「絶望……ね。どうするつもりだ? あたしは痛みには屈しない。それとも犯してみるかい? あんたの粗末なもんであたしが感じられるかは知らないけどね」

「お前の使い古した穴なんてこっちから御免だ。お前には相応しい(・・・・)相手を用意している」

「相応しい相手……?」


 クロウが右手を上げると、闇の中からどし、どし、とゆっくりとした足音が聞こえてくる。

 輪郭が徐々に明らかになり、それの形が分かるとエルザは顔に恐怖の表情を浮かべる。


「な……っ!?」


 二人の前に現れたそれ(・・)は異形の存在であった。

 肉塊を無理やり人の形に成形した、と言えば分かりやすいだろうか。くすんだピンク色をしたそれは、体のあちこちが不自然に隆起し、歩くたびにぶるぶると揺れる。


 体長は二メートルを超えており大きい。いったいなんの生き物なのかは分からないが、頭部は人間によく似ていた。


「なんだこの化物は。こんなアンデッド知らないぞ……!」

「当然だ。俺が新しく作ったんだからな」

「新しく作った……!?」

「ああ。合成獣キメラアンデッド……俺オリジナルのアンデッドだ。死者同士を組み合わせ、新しい生命……まあ死んでいるから生命ではないが。とにかく新しいアンデッドを生み出すことに俺は成功した」

「ありえない、そんなことが……」


 新しい生命を生み出す。

 それはまるで神の所業である。


 今はまだこのような醜悪なアンデッドを作るに留まっているが、もしかしたらこの先、とんでもない化物を生み出してしまう可能性がある。

 エルザは恐ろしさに身慄いする。


「こいつはたいした強さはないが、素材・・がそうだったせいで、性欲がとても強いんだ。だから悪いが……こいつの相手をしてもらえないか?」

「――――は? お、おまえなにを言ってるんだ?」


 クロウの言葉が理解できず、いや、脳が理解を拒み聞き返すエルザ。

 彼女は大のイケメン好きであり、醜い容姿の者を見下していた。このような化物は見るだけで蕁麻疹が出るほどであった。


 クロウはそれが分かっていて、このような手に出たのだ。


「いいぞ。思う存分楽しめ」

『ヴゥ……オォ……!』


 合成獣キメラアンデッドは興奮したような声を出すと、股間を激しく怒張させエルザに近づいていく。

 エルザは手を繋ぐ鎖をガシャガシャと動かし逃げようとするが、鎖は変わらずビクともしない。


「来んな来んな来んな来んな! ゴミがお前が触れていいような存在じゃねえんだよあたしは! やめろっつってんのが分かんねえのか!」

合成獣それの下半身はオークの素材をメインに使っている。ふふ、オークのそれは大きいからな、きっとエルザも満足できるだろう」

「ふ、ふざけんじゃねえ! オークのであたしを犯す? 頭沸いてんのか! ああああああああっっ!!!! 外せ外せ外せ! あたしは英雄だぞ、ああああころすころすころす!」


 錯乱した様子で逃げようとするエルザ。

 しかしいくら鎖を動かしても、皮膚が切れて血が流れるだけ。その場から一歩も動くことはできず、ついに合成獣キメラアンデッドはエルザの背後にたどり着いてしまう。


 オークのそれが押し当てられる感触。

 エルザはまるで銃口を頭に押し当てられたかのように硬直し、そして助けを乞う。


「ゆ、ゆるして。本当に嫌なんだ。あたしがわるか――――」

「やれ」


 主人クロウが命じると、合成獣キメラアンデッドはそれを忠実に実行する。

 まるで物のように扱われるエルザ。その行為に愛や慈しみといったものは欠片もなく。ただ性処理の道具として悲惨に扱われる。


「ぐ、あ……っ! てめ、いいかげんに……がっ……ああああああっ!」


 手足をバタつかせて逃れようとするエルザ。

 しかし合成獣キメラアンデッドの力は強く、抜け出すことはできない。


「キモいんだよ! てめえみたいなのが抱いていい女じゃねえんだ! はなせ!」


 エルザは足を後ろに振って、踵で合成獣キメラアンデッドを何度も蹴り飛ばす。

 合成獣キメラアンデッドは痛そうにしていて、悲しそうな表情をしている。可哀想に思ったクロウは、助け舟を出すことにする。


「あまりこいつをいじめないでくれ。お前だって知らない仲じゃない(・・・・・・・・・)んだから」

「は? なにを言って……」


 クロウの言葉に引っかかったエルザは、初めて合成獣キメラアンデッドの顔をまじまじと見る。

 そしてなにかに気がついたのか、顔がサッと青くなる。体が震え、目の焦点が合わなくなる。


「そ、その顔。もしかして、ガオラン……か……?」

「ご明察。久しぶりの再会だろ?」

「あ、ああああああああっ!!!!!」


 地下室に響き渡る絶叫。

 サプライズを気に入ってもらえたクロウは嬉しそうに笑みを浮かべる。


「エルザは“二人目”なんだよ。ガオランが一人目。色々実験してたら性欲しか残ってない化物になってしまった。ま、仲良くしてやってくれ」

「ふ、ふざけんな! こんな化物とヤらせるとかイカれてんのか!? 今すぐやめさせろ! やめさせろよおおおおぉぉっ!!」



 目を充血させ、鼻から血を垂らしながら懇願してくるエルザ。

 クロウはエルザが気に入ってくれたと解釈し、満足したように笑う。


「ガオラン。もっとやれ」

「おまえええええええぇ!!」


 ガオランはクロウの命に従い、更に激しくエルザを犯す。

 乱暴に使われ、エルザは汚れ、傷つき、尊厳を破壊される。


「いだい! 痛いって言ってんだろ!」

「もう嫌だあ! 助けてくれよ!」

「ひぃ……うぐ……っ」

「もう無理だって言って……うぷっ」

「もう入らないって言ってんだろ! やめろって……ああ……っ!」

「う……っ。あ……ぃぃ」

「………………」

「ぃ……」

「……」


 道具のように扱われ、使い潰されるエルザ。

 合成獣キメラアンデッドは力の加減が下手であり、たまにやり過ぎて殺しかけてしまうが、その度にクロウが治療し続行させる。


 終わりのない永遠の陵辱じごく

 最初は威勢の良かったエルザも、二時間もすると目から光が消えて大人しくなる。


 クロウはその様子を特等席で眺めるのだった。

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