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第4話 死の王の誕生

「クロウ様、準備が整いました」

「ああ」


 アリシアに呼ばれた俺は、大広間に通じる通路を進み始める。

 今の俺はアリシアが用意した黒い服に身を包んでいる。計ったわけでもないのにサイズはピッタリ。かなりいい素材を使っているみたいで羽のように軽い。


 大広間の中に入ると、無数の視線が俺に浴びせられる。

 かなりの数のアンデッドだ。数千……いや、一万人近いアンデッドがそこにいた。この都市には英雄以外の市民もいたようだが、そういった者たちは瘴気のせいで魂も消えてしまったらしい。

 つまりここにいるのは瘴気に打ち勝つほどの強力な魂を持った英雄のみということ。

 全員が一騎当千の実力者。そんな者たちが仲間になるなんて……ぞくぞくするな。


 俺は大広間の最奥にある、広間を見下ろせる少し高い場所に移動して集まったアンデッドたちを見下ろす。

 アンデッドの中には人間だけでなく獣や竜もいる。彼らももとは英雄クラスの実力者だったのか。仲間になったら心強いな。


 期待と羨望が入り混じった視線を浴びながら、俺は口を開く。


「……よく集まってくれた、英雄たちよ。今までさぞ苦しかっただろう、辛かっただろう、そして……悔しかっただろう」


 さっきアリシアと話して判明したことだが、この都市が滅んだのは今から1000年も前のことだった。

 つまり彼らは1000年間、死ぬこともできず苦しみ続けたのだ。


「さぞ憎いだろう、俺にはその気持ちがよく分かる。俺も信じていた仲間に裏切られここに落とされた。その時からずっと俺は奴らを憎み続けている。奴らを同じ目に合わせ、苦痛を与えた後に殺さなければ、俺はこの先笑って生きていけないだろう」


 今でも目をつぶれば奴らの顔が頭に浮かぶ。

 笑いながら俺を痛めつけた奴らの顔がありありと。


「復讐だ。復讐をする必要がある。俺たちで神を、そして神を信奉している奴らに復讐するんだ」


 復讐。

 その言葉を口にした瞬間、アンデッドとなった英雄たちの目がギラつく。


 復讐はなにも生まないなんて言葉があるが、そんなの綺麗事だ。

 そもそも復讐はなにかを生むためにするもんじゃない。それは過去の清算なんだ。復讐をしなければ俺たちは先へは進めない。それをせずに生きてはいけない、必要な儀式なんだ。


「復讐なんかしたくない、今すぐ成仏するかどこかで平和に生きたいという奴は前に出てくれ。無理に俺の復讐に付き合わせはしない」


 俺はそう呼びかけるが……その申し出を受ける者はいなかった。

 良かった。ここには俺の同志しかいない。


「ありがとう、同志たちよ。俺の力になってくれ」


 俺は目の前に広がる千人以上の同志に向かって左手をかざし、死霊術を発動する。


全対象オール完全蘇生リザレクション


 千人以上を目標ターゲットにした完全蘇生リザレクション

 当然消費する魔力は莫大で体から急速に力が失われる。しかし失われた魔力はすぐさま補給され完全に尽きることはない。


 俺は瘴気を取り込みながら生まれ変わったことで、瘴気に対する完全な耐性を得た。そしてそれだけでなく、瘴気を取り込み、己のちからにする能力も得たのだ。


 そのおかげで俺は瘴気を取り込むことで傷を癒したり魔力を回復することができる。

 つまりこの瘴気の満ちた空間にいる間は傷はたちどころに治り、魔力は回復し続ける。この規模の人数の一斉蘇生も可能というわけだ。


「体が……!」

「本当に生き返るとは……っ!!」


 次々と蘇っていく過去の英雄たち。

 漆黒の鎧を身につけた長槍の騎士、ローブを身にまとった熟練の魔導士、白金の鱗を持つ巨大な竜、見上げるほど大きな体を持つ巨人。

 全員が単騎で国とやり合えるほどの力を持っている。


 神が恐れた戦力を、俺は手にしたのだ。


「復讐だ」


 俺はぽつりと呟く。

 すると蘇った英雄たちが黙って俺の言葉に耳を傾ける。


「復讐だ。復讐をする必要がある。怒れ、憎しめ、それが俺たちの力になる」


 そうだ、それこそが俺たちのなによりの原動力になる。


「俺は必ず復讐を遂げ、そしてお前たちが憎む神を討つ。だからお前たちの力を俺に貸してくれ」


 俺がそう言うと、英雄たちは一斉に雄叫びを上げ俺の言葉に同調する。

 広間が揺れるほどの声量だ。その声には強い決意と深い怒りが含まれているように感じた。


「感謝する。すぐに始め、そして成そう。俺たちの復讐を」


 俺はそう言い、早速アリシアと共に復讐の準備を始める。

 待ってろ、俺を裏切った元仲間たちと、隠れてこそこそしている神。


 俺の……いや、俺たちの刃を必ずお前らの首に突き刺してやるからな。


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