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第9話 侵入者

「なんだこれは……!?」


 地上に出たカイトが見たのは、驚きの景色だった。

 すでに堅牢な城壁は突破され、都市の中に大量のモンスターが侵入して来ていた。


 地上はオークやゴブリンが闊歩し、街を破壊している。果敢に立ち向かっている兵士もいるが、その数に押され、勢いを止めることすらできていなかった。


 そして空には飛竜ワイバーンも飛んでいた。

 空の捕食者、飛竜ワイバーン。その大きな爪は剣のように鋭く、生え揃った牙の奥からは灼熱の吐息ブレスを放つ。


 空を高速で舞う飛竜ワイバーンはモンスターの中でも特に強力だ。

 赤薔薇騎士団は討伐経験こそあるものの、それは多対一の状況でのみ。もちろん『一』は飛竜ワイバーンの方だ。


 そんな飛竜ワイバーンが三匹、空を飛んでいた。

 まるで死肉を狙うカラスかのように、飛竜ワイバーンたちは地上の戦いを眺めている。


「オークだけでなく飛竜ワイバーンまで……!? いったいなにが起こっている!」


 グリュスベルクがモンスターに襲撃されることはあまりない。

 堅牢な城壁に訓練された兵と騎士。わざわざ攻略難易度の高い場所を襲うほどモンスターも馬鹿ではない。


 複数種類のモンスターに襲われるなど、前代未聞。

 そのような自体を想定したことなど、今までなかった。


「オークと飛竜ワイバーンが手を組むなどありえない。誰かが裏で手を引いている? しかしオークと飛竜ワイバーンを手懐けるなどできるはずが……」

「団長! こちらにオークが押し寄せてきています! 指揮をお願いします!」


 傷ついた騎士がカイトに助けを求める。

 異常事態に困惑するカイトだが、今戦わなければ全滅は必至。考えることを今は止め、部下たちに指示を飛ばす。


「固まって戦え! 個人で戦おうとするな! 三対一で戦えばオークに後れは取らない。今は飛竜ワイバーンは無視して構わない!」


 カイトはそう指示を出すと、剣を抜き自身も戦闘に参加する。

 狙うは自分に一番近いオーク。

 そのオークの巨大な棍棒による一撃を、カイトは剣で受け止める。


『グウ……ッ』

「こいつ……」


 至近距離でオークを見たカイトはある違和感に気づく。

 それはオークに生気・・がないこと。オークの目の焦点は定まっておらず、カイトを見ていない。口からはだらしなくよだれが流れており、本当に意識があるのかすら怪しい。

 少なくとも彼が知っているオークはもっと知能があるように見えた。今のようにただ本能で動いていたらそれでは……


「まるでアンデッドだ……」


 腐ってこそいないが、オークの行動はアンデッドのそれによく似ていた。

 アンデッドと聞くと、リト村で遭遇したゾンビが頭に浮かぶ。


 まさかあのアンデッドを操っていた者が復讐しに来た? カイトは一瞬そう思うがすぐにその考えを振り払う。

 これだけの数のアンデッドを操るなんて不可能。このオークがアンデッドというのは自分の思い違いだろう。彼はそう結論付けた。


「赤薔薇騎士団の意地を見せろ! 我らはオークなどに後れを取らない!」


 カイトはそう吠えると、眼の前のオークを袈裟斬りにする。

 鮮血が舞い、地に伏せるオーク。


 大丈夫だ。勝てる。この程度の障害、乗り越えて見せる。


 カイトは自信を取り戻し、攻勢に転じる。


「行くぞ! オークを根絶やしにするのだ!」


 カイトの呼びかけに呼応し、騎士たちは雄叫びを上げる。

 彼らは向かってくる十数体のオークに果敢に挑み、打ち倒していく。


「勝てる! 勝てるぞ!」

「赤薔薇騎士団を舐めるなよ!」


 一体。また一体と倒れていくオーク。

 いける。このまま押し切れる。


 騎士たちの心に生まれた僅かな慢心。

 それを観測したこの襲撃の黒幕は、笑みを浮かべる。


「頃合いだな」


 次の瞬間、奥から一際大きな体を持つオークが現れ、棍棒の一撃で騎士を叩き潰した。

 ぐしゃ、という音と共に潰される騎士。棍棒が持ち上げられると、そこにはひしゃげた赤い鎧と、原型を留めていない肉塊だけが残されていた。


「あ、ああああああっ!!!!!」


 わずか一秒に満たない時間で変わり果てた姿になってしまった仲間。

 それを見てしまった騎士は、わけも分からず絶叫する。突如現れた巨大なオークは、もう一度棍棒を振り上げると、今度は絶叫している騎士を棍棒で叩き殺したのだった。

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