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第5話 後始末

 天使をマーリンに任せた俺は、飛行魔法で都市ボールットに戻った。

 ここを去って天使ミリエルと戦闘していた時間はほんの数分。去った時とほとんど変わらぬ状態でジーナとガオランは建物内にいた。

 天使を飛ばした時に壁をぶち抜いたのでそこそこ大きな音は鳴ったが、この建物には人払いの魔法をかけている。この家の異変に都市の市民が気づくのは、まだ先になるだろ。


「クロウ様♡ ご帰還嬉しゅうございますあ♡ あの天使はもう捕縛されたのですね」

「ああ、マーリンがフェルディナに運んでいる。俺たちも戻るとしよう」

「はい♡」


 俺たちの国の名前はクロウ王国になったが、イーサ・フェルディナという都市名は残した。

 なので俺はフェルディナという名をよく使っている。自分の名前の国名を口にするのはなんだか恥ずかしいからな。


「み、ミリエル様を捕縛しただって……!? ありえねえ、そんなのありえねえ!」


 帰ろうとしていると突然ガオランが叫び出す。

 ガオランは相変わらず縄で縛られたまま床に転がっている。こんな情けない格好でよくそんな威勢よくいられるな。まだ自分の置かれた状況が分かっていないみたいだ。


「だが事実だ。天使ミリエルは敗北し、捕獲した。もうお前を助ける者は誰もいない」

「そ、そんなの信じられねえ。あのザコのクロウがミリエル様を倒したなんて……! てめえ、また卑怯な手を使ったんだろ!」

「はあ……お前は相変わらずうるさいな」


 もう数発殴って黙らせようかと考えていると、ジーナが横にやってきて俺の腕に抱きついてくる。


「クロウ様。こいつずっと私のことをいやらしい目で見てきたんです。私すっごい不快でした」

「そうか、それは苦労かけたな」

「あ、でもクロウ様の命令ですので全然いいんですよ? ただ、その……ご褒美(・・・)が欲しいなって……♡」


 もじもじと体をくねらすジーナ。

 それを見てようやく彼女の言いたいことを俺は理解する。


「分かった。後でご褒美をやろう」

「やった♡ ありがとうございます♡」


 ジーナは嬉しそうにそう言うと、俺の頬にキスをしてくる。

 その一部始終を見ていたガオランは、愕然とした表情を浮かべる。


「て、てめえ。まさかその女とデキてやがんのか……?」

「はあ? なに言ってるのですか貴方は。クロウ様は我々の王、絶対なる憧れ。愛人ですら恐れ多い。私はご寵愛をいただいているだけ、配下にとってそれは最大の喜びなのです。はあ……クロウ様に触っていただけると想像しただけで私はもう……♡」


 うっとりとした表情をするジーナ。

 そんな彼女の言動を見たガオランは、怒りのあまり顔を真っ赤にしてガチガチと歯を鳴らす。どうやら俺がジーナと関係を持っていることがよほど許せないみたいだ。


「ゆ、許せねえ……なんでてめえなんかに……!」

「クロウ様。これ以上こいつの言葉を聞くのは不快です。そろそろ国に戻りませんか?」

「そうだな。ミリエルと通信できなくなったことをそろそろ勘づかれるだろうしな。戻るとしよう」


 俺はジーナの言葉に同意すると、ガオランのもとに近づきその頭部を蹴飛ばす。

 がっ! といううめき声をあげた後、ガオランは意識を失う。俺の復讐はまだ終わってない。こいつには最後まで付き合ってもらう。


「さ、帰るか」

「はい♡」


 俺は転移魔法を発動すると、ジーナとガオランと共に深淵穴アビスの方向へ転移する。

 こうしてボールットでの粛清は、市民に一切気づかれぬまま終わったのだった。


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