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第4話 堕天

 ミリエルが天使としての技を使う時、この天使の輪が特殊な魔力を放出しているのを俺は確認していた。

 おそらく神と通信する能力もこの輪が関係しているんだろう。

 であるならばここでその機能を破壊・・しておかなければ連れ帰ることはできない。


 もし俺たちの国のことを神に知られたら、再びあの『光』を落とされてしまうだろう。

 もちろん今はあの光への対抗策を取っているので昔のように簡単には滅ぼされたりしないが、それでも復讐への道はかなり遠のいてしまう。


 復讐は静かに、そして迅速に行わなければいけない。

 相手が復讐それを知るのは喉元に刃が迫ってからが望ましい。


「ふむ……なるほど。やはりこの輪が天使の力の源というわけだ」

「や、やめなさい! けがらわしい手でそれに触れるな!」


 天使の輪を触られることを極端に嫌がるミリエル。

 しかし当然俺はそれをやめない。天使の輪の内部に魔力を送り込み、それの内部構造、機能などを探る。


「よし……まあ大体は分かったな。魔力通信機能があるのはここらへんか」

「なにをしている! 早く離……ぎぃ!?」


 俺は両手で天使の輪を掴み、思い切り握り締める。

 するとガラスのようにピシ! と天使の輪に亀裂が入る。それと同時にミリエルの体が勢いよくビクン! と跳ねる。

 どうやら感覚を共有しているみたいだ。


「が、がが……は、離せ……おごぉ……」

「ははっ。凄い顔をしてるぞ。これはそんなに大事な器官だったのか」

「ぎざま……絶対に殺し……お゛ぉっ!?」


 更に強く天使の輪を握ると、ミリエルはまるで魚のように体を跳ねさせ失禁する。

 顔からは涙やよだれ、鼻水がだらしなく流れ、端正に整っていた顔は見る影もなくなっている。

 これを見たらガオランもショックを受けるだろうな。いや、あの変態のことだから興奮するか?


「お前個人に恨みはないが、あいつの手下に容赦するわけにはいかない。利用し尽くしてクソへの復讐の一歩とさせてもらう」

「ふ、ふざけ……る゛ぅ!? お、おお゛……っ、い、いぐ……っ!!」


 苦しそうにジタバタとのたうち回るミリエル。

 昔の俺であれば可哀想と思ったかもしれないが、今の俺はなにも感じない。更に天使の輪に力を加え、通信機能があると思われる箇所を破壊にかかる。


「安心しろ、殺しはしない。もっともここで死んだ方がマシだと思うかもしれないがな」

「ぎざま、絶対にゆるざな……」

「じゃあな。また後で会おう」


 俺はそう言って両手に力を入れ、天使の輪の一部をへし折る。

 パリン! と音を立てて砕ける天使の輪。すると最後にミリエルの体が強く飛び跳ねる。


「お゛、お゛おおおぉっ!?」


 白目を剥きながら絶叫したミリエルは、ドサっとその場に横たわり意識を失う。

 一瞬死んでしまったかと思ったが、胸が上下していることを確認する。息はまだあるみたいだ。


「天使は蘇生できるか分からないからな。生きてて助かった」


 普通の人間や動物、モンスターであれば俺の死霊術で蘇生できることは確認済みだ。

 しかし天使や神といった存在までその対象に含まれるかは分からない。ぶっつけ本番で試すことにならなくて良かった。


「さて戻るか……ん?」


 無事天使の無力化に成功した俺がジーナとガオランのもとに戻ろうとすると、木の影から一人の人物が現れる。

 その人物は黒いローブを着た老人だった。肩まで伸びた白髪と鋭い目が特徴的な老人。そいつが俺の方に小走りで近づいてくる。


「若ぁ! 見事な活躍でございました! このマーリン、感動しましたぞ! お怪我はされてませんか!」

「ああ、大丈夫だ。マーリンもご苦労だったな」

「いえいえ、この程度屁でもありません。若の頼みでしたら例え火の中水の中。どのような苦難も喜んで引き受けましょうぞ」


 そう笑顔で答えたのは俺の配下の一人、マーリン・ハノワ。

 俺への対応だけを見ると気の良さそうなお爺ちゃんといった感じだが、マーリンは最強の大魔導師と恐れられた人物だ。

 たった一人で竜の群れを焼き尽くし、マーリンと敵対した国は一晩で滅ぼされたという伝説が残っているほどだ。とてもこの孫煩悩そうな顔からは想像つかない。


 俺が蘇生してすぐの時は口数も少なく気難しそうな人物であり、伝説の魔法使いらしい風貌だった。

 しかし俺がマーリンに弟子入りし魔法を教わっている内になぜか気に入られてしまい、いつの間にかまるで孫のように可愛がられるようになってしまった。


 まあ仕事は忠実にこなしてくれるから別にいいんだが。


「魔力通信を行うと思われた箇所は破壊しておいた。だがもしものことがある、マーリンの方でもチェックしておいてくれ」

「かしこまりました若。委細承知いたしました」


 俺が命じると、マーリンは目を細め真剣な表情で答える。

 マーリンに任せておけば大丈夫だろう。俺はこの場を任せる。


「それじゃあ俺はジーナのもとに戻る。そうしたらすぐに国に戻る」

「かしこまりました。お迎えの準備を進めておきます」

「頼んだ」


 俺は天使の処理をマーリンに任せて、ジーナのもとに戻るのだった。

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