おうどん食べたひ
おうどん食べたひ
なぜかそんな風に思った。
時は既に深夜、今目の前に逆さまに見えるスマホの時間が0時を表紙したところだった。
何故、こんな事になったのだろう?コンビニの弁当の空容器、ペットボトル(勿体なく微量残り)、郵便受けに入ってた不動産関連のチラシ……つまり散乱するゴミに埋もれつつ無気力にぼんやりとやけに高度のいい画面が目に映る。
ふとそんな時通知が飛んだ、若かりし時代に好きだった女優の既報。
おっと、土曜日の夜のドラマによく出てた人だ、悲しい。
そんなポツポツと脳裏に緩やかに感情が脳内で粛々と処理をする。
この歳にもなるとこの様な事にも慣れる、いや、慣れたかの様に処理をするのが上手くなる。
それだけ歳をとったのだ……いや、とってしまったのだ、若い頃にはそれらに対して真っ向からぶつかれた、しかし経験はそれらを無気力に無心に無感情に処理する事を覚えてしまう。
ほんと、何やってんだろ
ちんまいアパートの一室で畳が見えなくなるほどのゴミと共に堕落し、最早手足も動かせない。
来るはずの眠気は来ずにごめん蒙りたい寒気がキャッキャウフフとスキップしながらランデブーったらランデブー。
いやいや、やめてくれよ、もう万能薬と謳われた鎮痛剤もこの部屋のどこに埋もれてるのかわかんねーんだわ、まさに大航海時代じゃねーんよ。
なんだろう、思考がやたらと冴えてるな……昨日まで95くらいまで落ち込んでた脳内スペックもXPまで回復したか?そりゃ僥倖、シングルコアは道を開けな、俺はクアッドコアだぜ。
そんな、無意味で無駄に間抜けな思考だけ流れていく。これが無休で働き続けた安月給ブラックであっぱっぱーになった漢の深夜テンションだ。
ところで、時間はわかったが今日は何日だ?何の日?脳内がバグってるのは解るが体感も体幹も感情もありとあらゆる物がバグり散らかしている気ガス、おっと、気がする。だって身体中痛いわ涙止まらないわ呼吸おかしいわ、あと寒い。
でも眠くない、疲れてる筈なのは確か、でも何やら……そう、吹っ切れた!状態なのだ。
そしたらほら、なんか心が活力に溢れてきた!こんな状況になってしまった元凶、あの結婚詐欺師にも元気よく満面の笑みで中指立ててしまえる程には心がスパーキンしてる!抱えた借金がなんだ!幸せになるはずだった人生がなんだ!笑い飛ばしてやんぜ!そら草も生えらァ!
どこで間違えた!
そこまで思考が至った時に畝って混ざりあってぐちゃぐちゃになった感情のダムが一気に決壊してしまった。
今まで放つことの無かった悲しみ、苦しみ、やっかみ、怒り、憎しみ、全てが一気に駆け巡った。
もう言葉にはならない、放っから出ていた涙に加え鼻水、嗚咽が感情と共に吹き出る、もう拭う気力すらない、怒りに任せて物に当たる事すらできないのだ。
感情の荒ぶりは留まることを知らず、されど少しずつ静寂が迫ってきている、どうやら寒気が全身に巡ってきた様だ、眠気とは違った静寂に全身を包まれるように少しずつ意識が深くに堕ちていく。
そんな中、くだらなく呑気な思考が過ぎった。
おうどんたべたひ。
その後、永遠とも言える癒える事の無い黒に塗りつぶされていくのだった。