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君が空けた穴

事務所のアイドルが一つのステージに集められ実力を競い合う今年最後の合同ライブが行われた、俺がプロデュースしている桃色カーネーションは見事オオトリに抜擢され有終の美を飾ることができた。そのグループのリーダーである、桃山彗ももやますいは俺の三つ下の幼馴染でたまたま見に行った高校の文化祭で披露したダンスに一目ぼれし、スカウトした。そんな彼女が二年足らずでタレントを数多く要する我が事務所で実質的なトップに立つことができたのは喜ばしいことである。ライブ後、彼女を家に送り届けるとき彼女が俺に家の近くにある幼いころよく一緒に遊んでいた公園によってほしいと言われた。ライブ後であったので、最初はまっすぐ家に送ろうとしていたが彼女がどうしてもというので少しだけ寄って見ることにした。彼女は公園につくと俺の手を引き公園の中央にあるステージまで連れて行った。そのステージはだいぶこじんまりとしており、人が3~4人立てばあまり激しい動きはできないようなところだ、俺をステージの前にあるベンチに座らせると彼女はスマホから音楽をかけダンスを始めた。最初は止めようとステージに上ろうとしていたが彼女がかけていた音楽があの文化祭の時の曲だと気が付くと俺は見てみることにした。スマホをマイクのように持ちながら、俺にだけライブをしてくれる。サビに近づくにつれ彼女のダンスも激しくなる、あの時よりもキレが増し、今では歌を歌う余裕すらある。しかし、俺が一番驚いたのは文化祭の時から変わらない笑顔であった。楽しそうに踊り、歌う、そんな彼女にアイドルとしての才能を感じ俺に一生かけても埋まらない穴を掘ってしまったのだ。すると目の前が曇り始め、自然と頬に暖かいものが流れる、ライブ後ですら流さなかった涙であった。これが、あの時の笑顔が変わらないことへの喜びなのか、文化祭からの成長を見れての感動なのか、最高峰のアイドルが目の前で踊っているからなのか、わからないが、今はどうだっていい。ただ彼女を見ていたいそう考えている。ずっと隣で見ていたい、もしかしたらこのライブの成功のせいでほかの敏腕プロデューサーがついてしまうかもしれない、仮にそうなると、俺は他のアイドルをプロデュースすることになり純粋な気持ちで彼女を応援できなくなるかもしれない。

「プロデューサー、なんで泣いてるんですか?」

音楽の音を少し下げ、彼女が屈みながら聞いてくる。

「もしかしたら、彗のことをプロデュースできなくなるかもって考えて悲しくなって」俺は涙を拭きながら答えた。

「え、そんな話出てるんですか?私、嫌です雄くん意外にプロデュースされるのは、嫌です」彗はステージから降りると俺の胸にもたれながら答えた。

「いや、そんな話は出てないよでも彗たちが成功しすぎて俺の、俺だけのポジションが取られるかもしれないって妄想しちゃってごめん」俺はそう言いながら彗の頭を撫でた。

「ほんと!?よかったー私アイドル辞めるまでずーと雄くんにプロデュースして欲しいって思ってたからいつも通り雄くんの考えすぎでよかった」彗は俺の手を払いのけるかのように顔を上げて笑顔を見せた、ステージの上の笑顔とは違う優しい笑顔だった。

「ごめんな、いっつも俺の妄想で振り回しちゃって」俺は彗の目を見て答えた。涙で少しうるんだ目はいつもより輝いて大きく見え、頬が少し赤く染まっていることもあり、いつもより可愛く思えた。

「ほんと、そうですよ、少しだけ迷惑してるですからね、これからも私たちのこと振り回してくださいね、」彼女は少し俺を見つめると、少し頬を緩めながら離れていった。

「今度、ご褒美で遊びに行きましょう!私雄くんと行きたいところがあるんだ!」彗は俺の手を引っ張りながら車に向け歩き始めた。

「そうだな、でもバレないように平日に学校休んで行くぞ。これからのアイドルグループの足枷になると行けないからな」俺は、彗に追いつくように走りながら言った。

「そうだね、私は人が多くても平気だけどね」彼女が俺から目線を外して答える。

「いや、ダメだ、チームにも事務所にも迷惑をかけるだろ?午前中は遊びに出て、午後は家でご飯食べよう。」俺は冗談ぽく答えたが、その真意が伝わっているかどうかわからない。彼女はまだそっぽを向いており、小さな手が大きく震えていた。俺は優しく手を握り直す。

「手震えてるぞ?大丈夫か?早く車に戻ろう。」俺は少し強く手を引くが彼女はそれには従わなかった。

「いい、大丈夫、雄くんがいるから大丈夫、疲れたからゆっくり予定立てながら歩かない?」

「そうだな、なぁ行きたいとこの写真とか見せてよ。」俺は彗に肩を寄せながら聴いた。

俺たちは、車に向けて歩き出したお互い重圧から解放されたように軽い足取りで車へと向かっていく。車に乗り込み、車を走らせる彗は寝ないように、寝ないようにと耐えていたが、少しすると寝てしまっていた。遠くに行ったように思っていたが、俺の隣で寝ているこの子は変わらず幼馴染の彗であった。俺は、彗たちのプロデューサーで居続けるために頑張ろうと決意を固め、アクセルを踏み込むのであった。


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