魔女
俺は任務をもらった。
とても名誉なことだ。
…本来なら。
アホゴリラのくじ引きに見事当選しただけ。
まあまだ一ヶ月だしね。
現場の体験演習的なものを兼ねているのだろう。
そんなことを考えても始まらない。
これは来たのではないのか?俺がヒーローになる時!
そう!俺はカッコよくなりにきたのだ!
初心忘れるべからず。
相変わらず隣の声はでかいが、活躍では勝って見せよう。
今も一般人は襲われているのだ。
どちらにせよ速く助けにいかなくては。
そしてあわよくば英雄になるんだ。
よし、ヴィジョンは固まった。
ちょうど集合場所にも着いた。
そこにはすでに準2級剣士の田中さんと準2級魔女の高橋さんもいる。
残す役者はJK二人だ!
「あー!隣じゃない!」
後ろを振り返ると。
茶色のセミロングの髪をポニーテールでくくり、豊満な体を持つ美人で大人しげな女性と、長い金髪をツインテールにまとめたパッと見小学生の女児が目に入った。
「え?小学s「違うわよ!」
やべ、思ったことがそのまま…
「おお!お前か!久しぶりだなあ!ってことは同学年の魔女ってのはお前か?」
と隣も懐かしげな声を上げる。
「そうよ!それでこの失礼なやつはなんなの!?冴えない癖に頭まで悪いの!?」
随分な言われようである。反論しないわけにもいかない。
「はぁ?冴えてるけどぉ?そこの隣よりよっぽど頭いいけどぉ?」
「隣はバカだから仕方ないのよ!小さい時からずっとなのよ!」
「ああん!?バカって言う方がバカなんだよ!お前だって俺にテストで負けたことあるだろぉ!?」
「いつの話してるのよ!今なら私が負けるなんてあり得ないわ!」
「ああ!?やってみねぇと分かんなぇだろうがぁ!」
ここからしばらく隣と女児の言い争いが続いた。
その間に俺は茶髪の女性ヘとお近づきになる。
「初めまして。お名前はなんて言うんですか?」
うん。やっぱり初対面はこうでないと。
俺に怒鳴り合いのコミュニケーションは向いてないな。
「私は今川千里といいます。魔法は水属性が特に得意ですね。まあ、まだ扱えるようになって一ヶ月ですけど。」
と言い、涼しげに笑った。
しかし、水属性?ってなんだ?
「魔法には属性というものがあるのですか?
あ、申し遅れました。剣持勝利と言います。」
「素敵な名前ですね!まるで剣を握るために生まれてきたような。」
そういえばそんなこと初めて言われた気がする。
やべぇ、すっげぇ嬉しい。
「あ、ありがとうございます。」
「敬語はよしてください。フレンドリーにいきましょう?」
「わかり…わかった。でもあんたは?」
「私は癖ですので。それで属性の話でしたね?
魔法には、火、水、木、風、土の5種類の属性があるんです。剣術の流派と近しいものがありますね。
得意な属性は階級の上につけて呼ぶことがよくあります。
例えば私なら水5級魔女、のような。
中には特殊な魔法を使う人もいますが。
あそこにいる眞子さんなんかもそうですよ?」
へぇー、あの女児変わり種なのか。
面白そうだな。
「そういえば、剣持くんはどの流派なのですか?」
「ああ、おれは技剣だよ。なにぶん、力もスピードもないからね。」
「まあ、技剣ですか。
力を鍛えれば良い剛剣、速度を鍛えれば良い速剣と違って、全身をバランス良く鍛えた上に技の型まで覚える必要があるとか。大変なことをなさっているのですね。」
まあまだ一ヶ月だしたいそうなことはしていないが。
て言うかこの子、剣に詳しすぎやしないか?
絶対俺より詳しいやん。
ここでようやく言い争いが終わったらしい。
「あ!勝利てめぇ、胸でかい子とお近づきになってんじゃねーよ!」
とのことだ。
なんというか、公衆の面前でソレ言うか?普通。
俺だってエロい気持ちが湧き出てこないわけじゃないが、アレを見ているとそんな気分にはならない。
「お前はこいつと自己紹介でもしとけ!俺はあの子に絡んでくる!」
と言い、俺とロリを置いていく隣。
千里も目が完全に引いている。
やっぱあいつバカだ。
「勝利、でいいのよね?私は佐渡眞子。眞子でいいわ。
佐渡宗家の長女にして、時期佐渡家当主候補筆頭よ!
まあ、あと数十年はお母様がやるだろうけど。
あなたのことはいいわ。興味ないもの。」
こいつ、劉玄よりさらにムカつくんだが。
そしてこいつ、まさかの御三家かよ。お嬢様かよ。
どうりで隣と仲良いはずだわ。
御三家ってのは皆こんなにフレンドリーなの?
お嬢様ってもっとおっとりしてるイメージだったんだけど。
つーか、こんなにのんびりしてていいのだろうか?
そんなことを思っていると、眞子が高橋さんに向かって
「時間まであとどのくらい?そろそろ行った方が良いんじゃないの?」
と言った。
ちなみに田中さんと高橋さんはずっと「若いっていいな」的な会話をしていた。
というか時間?時間ってなんだ?
「おい、眞子。時間ってなんだ?
被害が確認されてから任務要請がかかるんじゃないのか?」
「はぁ?バッカじゃないの?そんなの遅すぎるに決まってるじゃない。すぐに亜空間に逃げられちゃうわ。」
「おい待て、亜空間って何の話だ?」
「そこから?いい?
狂人ってのは普段亜空間に住んでいるの。
ただ亜空間から出る時に電波が放出されるの。
ちなみに亜空間からこの世にくるのは電波発生からおよそ5時間後と言われているわ。
まあ上位の狂人は電波を隠せる者もいるらしいけど。
あなた、学校では何をやっているの?」
ってことは、さっき考えてた人助けがどうとか困ってる云々は俺の妄想だったということか。ちくしょー。
…座学、もう少し真面目に取り組もう。
そしてこいつ、いちいち一言多いよな。
最後の一文絶対いらないだろ。
「そうですね。それでは行きますよ。」
と、高橋さんの引率について主発する。
現場は歩いて10分ぐらいのところだった。
現場に着くと、すぐに違和感に気がついた。
なんというか、空間が歪んでいるのだ。
しばらくするとその奥から人間が出てきた。
いや、人間ではない。目玉が赤い。
それが意味することはたった一つ。
これが狂人、だということだ。