魔術師のケンカ
お、今日の依頼は終わったのか? まあまあ座れよ、今日はマスターが奢ってくれるぞ。
なにがあったかって? 俺も途中からしか知らねえんだが、なんか二人の魔術師が言い争いをしていてな?
どんなことで争ってるのか気になって聞き耳を立ててたら、どうも魔術学校時代からのライバルらしくてな。
やれあのときの試験は自分の方が成績が良かった、次の試験は逆だった、頭は俺の方が良かっただの、冒険者になってからの依頼達成度はどうだのこうだのと、まあよくある話だわな。
それで二人共だんだんあとに引けなくなっちまってな。もちろん周りで煽ってた俺らのせいもあると思うけどな? 魔術師らしく魔術で争って戦おうって話になったのよ。
だがよ、お前も知ってるだろうがある程度以上の魔術師が争ったら周りはただじゃ済まないだろ? そいつらもいくら頭に血が上ってようがそのことは分かってたらしくてな、どうやって勝負をするか悩んでたのよ。 そこでマスターが二人に近付くと、良い勝負の方法がある、なんて抜かすのよ。
ま、その勝負でどっちが勝ったのかなんてのは興味もないが、少なくとも二人より頭が良いやつははっきりしたな。
保存を失敗して悪くしちまった酒を、より多く元の味に戻した方が勝ちって勝負をさせちまったんだからな。
ああ、いま飲んでるこの酒だよ。まったく、マスターには敵わねえよなあ。