表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
紫アザレアが察するには  作者: こたつ
多色の観覧
54/133

49

 さて、赤井崎を探すためにシガンさん達と別れたが、赤井崎を探す前に寄り道をしたい。

 私は教室を出てからまっすぐに一階のとある場所に向かう。

 向かったのはたくさんの箱が立ち並ぶ靴箱。

 そこについた時、人はいなかった。

これは都合がいい。

もちろん人はいないのだから赤井崎もいないわけだが、私は気にせずに歩いて行き自然に靴箱を開ける。

 中には外靴が安置されていて、これと言って特筆するものはない。

私はそれを確認するとすぐにその場から離れ、次の目的地という名の寄り道二つ目の場所に向かう。

 向かいながら私は赤井崎がどこにいるのか考え始めた。

赤井崎はまだ学校内にいる。

それは確定だ。

 なぜなら____私が開けたのは自分の靴箱ではなく________赤井崎の靴箱だから。

もしも赤井崎が荷物を置いたまま帰っていたら、私達が赤井崎を探す時間は徒労に終わるわけだ。

 それだけは絶対に御免だったので先に靴箱を確認した。

こうすれば赤井崎が帰ったのかどうかがわかる。

 これが寄り道一つ目。

もう一つの寄り道が、これだ。


「失礼します。小戸路先生。」

「ああ、いらっしゃい。」


そう、図書室。

今日は赤井崎を探さなければいけないから仕事ができないことを伝えるのと、生徒の出入りが自由なここに赤井崎がいるのではないかと考えたからだ。

 残念なことに今日も図書室は静かに利用者を待つばかりだったが。


「先生、今日はやることがあるので手伝いは出来なさそうです。」

「わかりました。別に来られないならわざわざ言いに来なくてもいいんですよ?」

「次からそうします。で、もう一つ聞きたいことがあるんですが、赤井崎さん来ましたか?」

「……どちらの赤井崎さんかわかりませんが、どちらも来ていませんよ。」

「ありがとうございます。」


 お礼とさようならを言ってから図書室を出る。

そしてそのままの流れで一階にある特別教室を一つ一つ見て回りながら上の階へと登っていく。

 一階には第一理科室、第一生物室、家庭科室、図書室。

二階には第二理科室、被服室、美術室、パソコン室、第一職員室。

三階には第二生物室、第一音楽室、第二音楽室、調理室。

四階には各部活の部室。

 特別教室のある校舎にはこれらの特別教室以外にも空き部屋が多数。

 全ての教室を見たが、ほとんどの教室には鍵がかかっており、鍵がかかっていない教室には誰もいないことがほとんどだった。

普段は人の出入りが多い部室も、今日は授業参観のために部活がないところが多いらしく、ほとんど閉まっていた。

 中に人がいても、赤井崎は見ていないと言われた。

 途中月乃にも会ったが、手を振ってきたので無視した。

 シガンさん達からの連絡もないし、まだ赤井崎は見つかっていない。

それどころか足取りすら掴めない。

 少なくともこっちの校舎にはいないか?

いや、すれ違った可能性もある。

そもそもまだ外のグラウンドや体育館、体育用具室は探してすらいない。

 体育館やグラウンドの一部くらいなら外靴がなくても移動は可能だ。

 でも一般教室や外なんかに赤井崎が隠れられるような場所はないはず。

そうでなくたって学校なんて長時間手持ち無沙汰で居座れる場所ではないのに。

 あと行っていない特別教室といえば、今シガンさん達がいる校舎の方にある保健室と自習室、第二職員室くらいか。

 自習室は自習道具を持っていない赤井崎が居座るのは難しいだろうし、保健室に赤井崎が行きたがるとは思えない。

 そもそも赤井崎には先生がいる空間に一人で居座れるだけの胆力がない。

同じ理論で職員室も多分いないだろう。

現に第一の方にはいなかったし。

 色々と考えながら歩いて残りの教室も回り終える頃にはすっかり陽が落ちていた。

 シガンさんからの連絡はない。

もしかして上靴のまま帰った?

 そんなことを視野に入れた方がいいレベルでいない。

いや、私達が赤井崎を探している間に帰った可能性もある。

もう一度靴箱でも見に行こうか。

 そう考えていた頃に、スマホに一通のメッセージが届いた。

しかしその内容は、赤井崎は見つからなかったという旨が綴られているだけだ。

 やっぱりもう帰ったかな?

もう一度靴箱を見に行こう。

 私はメッセージに適当なスタンプを返してから一階の靴箱に向かうことにした。

ここから一階かぁ。

面倒だな。

 そんなことを思いながらフラフラと歩いていたのが良くなかったのだろう。

気づいたら目的地付近についていたが、ふと目線を上げた時にすれ違った人とばっちり目があってしまった。

 それも、お互いに驚きすぎて時間が止まったようなレベルで固まってしまったのも良くなかったのだろう。

 めちゃくちゃ気まずい。

目があったのは男子生徒で、二年の先輩。

 私はそこまで考えた時点で即座に目を逸らしてその人の横を通り過ぎようと目線を下げて歩き始めた。

が、先輩はそれを許してはくれなかった。


「こんな時間に何をしてるの?」


 まるで先生が生徒に話しかけるような感じで声をかけられた。

まさか声をかけられるとは思っていなかった私は盛大に戸惑い、咄嗟に声が出ない。

かと言って通り過ぎてしまえるほどの勇気もなかった私は二秒ほど硬直した後に下を向いたままぎこちなく返答をした。


「人を、探して、いまして。」

「誰を?」

「………クラスメイトです。」

「ふーん。多分その人もう帰ったよ。」


まだ誰かも言っていないし、言ったところでどの人かわからないのでは?とは思った。

思ったがこれ以上絡まれるのも面倒だと思い適当に流すことにした。


「そうですか。」

「疑ってるね。でも、君が探してる人は多分帰ったよ。」


人を揶揄うような声で男子生徒は笑っている気配がした。


「はぁ。」


一刻も早く会話を終わらせたい一心で適当に相槌を打つ。

やばいやつに絡まれたかもしれない。

 お願いだからさっさとどっか行ってくれ。

 その願いが通じたのか知らないが、男子生徒はそれだけ言ってさっさとどこかへ行ってしまった。

下を向いていたから顔はわからなかったけれど、ずいぶん怪しいそうな人だったな。

それよりも早く靴箱に行こう。

 さっさと赤井崎を見つけないといけないのだ。


結果から言うと、赤井崎は帰っていた。

荷物がどうなっているのかは教室に戻らないとわからないが、靴箱には中靴しかなかった。

 おそらく赤井崎本人は帰ったと見ていいだろう。

私はシガンさんにメッセージを送り、捜索を中止する旨を送る。

 ついでに私は荷物を取りに行って教室の鍵を職員室に持って行かなければならないことも同時に伝えてから教室への階段を登る。

 さっきの男子生徒については、気にしない方針で行くことにする。

どうせ帰っているか帰っていないかの二分の一だ。

たまたま当たったとしてもそうでないにしても今のところ私とは関係がない。

 階段を登っていく間にそう考えながら最後の一段まで登り切る。

あとは廊下を歩いて教室まで行くだけだ。

外も廊下も暗かったが、人感センサーによって一気に明かりがつくのを見ながら教室まで歩く。

 

「あれ?電気消さなかったかな。」


 私のクラス、特進クラスこと一組は階段を登ってから一番近い教室だ。

見間違えることはない。

それなのにそこからは光が漏れている。

 赤井崎が荷物を取りに来て消し忘れた?

こんな時間に誰かが戻ってくるとも考えにくい。

不思議に思いながらも進んでいくと、声が聞こえた。

 この甲高くてうるさい声は、化粧達か。

 ビビって損した。

それはいいとして、なにしてるんだ?

こんな時間だ、部活はもう終わっているはずのこの時間にわざわざ教室に戻って何をしていると言うのだ。

 疑問に思いつつも教室に着いてしまったので扉を開けて教室に入る。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ