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いじめ表現が含まれています

 ザワザワとまだ騒がしいホームルーム前の教室。

甲高い声や叫び声、笑い声に低い声。

様々な声で教室が満たされているのが中に入る前から分かる。

 私はそっと戸を開けて隅っこを通り自席へと向かう。

 窓側の列の一番後ろの目立たない角席が私の席だ。

運がいいのか悪いのかクラス全体が見通せる席である。

 私は鞄しまいをしながらそれとなく名前も分からないクラスメイト達の頭を見る。

残念ながら彼岸花を咲かせている生徒はいなかった。

 クラスメイトではないのか……?


 そもそもうちの学校は私立の割に校則がゆるい。

髪飾りはもちろん、ピアスや髪を染めることも部分的に認められている。

 ある意味夢のような校則のゆるさだ。

その校則のゆるさゆえにこの学校は入学希望者は多い。

一学年で数百人以上の生徒数が在籍し、全校生徒数は千人越える。

 ただし、そんな校風も相まって偏差値はさして高くは無い。

その為私と同じ中学出身の生徒はあまり見ない。


 そんな顔がわかる人間も殆どいない混沌としたなかで、一人の生徒を髪飾りだけで見つけるのは無理な話だろう。

 せめて顔だけでも覚えていられればなぁ。

……いや、わかっても忘れるな、多分。


 探し出すことを半ば諦めつつカバンの中身を片付ける。

えーと、確か今日は数一と、現国と____


ガタンッ!!


 固い物同士がぶつかったような音がした。

つい驚いて教室全体に視線を彷徨わせると、音を立てた張本人と目が合ってしまった。

 どうやら派手に机にぶつかったらしい。

周りは一瞬静まり返ったが、すぐに元の賑やかさを取り戻す。

若干のぎこちなさを残して。


 クスクスと囁くような笑い声が賑やかさの中に混ざっている。

まだ入学してから二日しか経っていないのに、人とは恐ろしいものだ。

早速標的を見つけて遊んでいる。

 わざわざ止めようとする人間も、助けようとする人間もいやしない。

そんな馬鹿な真似をするのは物語の中だけだ。


 それにしても、いくら偏差値が高く無いとはいえ、一応このクラスは校内では一番マシな特進クラスだ。

それでも私が今まで在籍していたどの教育機関よりも治安が悪い。

 私がいた環境が良かったのか、ここが特別悪いのか。

どちらかは分からないが、まぁ、そういうこともあるのだろう。

 私はそう結論づけると、巻き込まれないうちにさっさと目を逸らして自分の作業を再開する。


 目が合った彼女は虚無とやるせなさのような物に満ちた瞳をしていた。

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