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紫アザレアが察するには  作者: こたつ
赤い出会い
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「まさか、こうなるとは思わなかった。」

「フェ、レス。」


いつの間にか隣に来ていたフェレスが、私が考えていた事と全く同じことを言う。

本当に、予想外だった。

あんな綺麗事でメリーさんが納得するとは思わなかった。


「つつじ、ゆっくり、ゆっくり呼吸して。」

「?なん___ヒュッ。」


声になりきらなかった。

慌てて声をつむぎ直そうと声を出す。


「ヒュっ、ひゅう、カハッ、ア、ヒュっ!」


いつの間にか、過呼吸になっていたようだ。

それに気づいた瞬間、息ができなくなった。

酸素が入ってこない。


「つつじ、ちょっとごめんね。」


そういうと私の首に体を持っていき、しめた。

私の首を。


____私死ぬ?


「つつじ、これからゆっくり手を離すから、ゆっくり、深呼吸して。

 大丈夫、大丈夫だから。」


言い終わるとすぐに、私の首に巻きついた手から、少しずつ力が抜けていく。

フェレスに言われた通り、ゆっくりと深呼吸を繰り返す。

フェレスが離れる頃には、すっかり呼吸ができるようになっていた。


「大丈夫?」

「うん。ありがと。」


冷静になってみると、フェレスが首をしめた理由に予想がついた。

確か、過呼吸になると、体内の酸素量が多くなるらしい。

だから首を絞めることで強制的に酸素の量を減らし、ついでに深呼吸もさせることで私を落ち着かせたのだろう。


顔を上げて前をみると、月乃はメリーさんを抱き上げていた。

メリーさんはもう涙を流すこともなく、おとなしく月乃に抱かれている。

そして、その隣には、泣きそうな顔をした妖狐がポツンと立っていた。

月乃はまだ気づいてはいない。


「よかったね、また会えて。」


精一杯の皮肉を込めて妖狐に向けていう。

ついでに月乃に妖狐の存在に気づかせる。


月乃は弾かれたように辺りを見回し、その目は妖狐を捉えた。


「あかねっ!!」


月乃はメリーさんを持ったまま、妖狐__あかねに抱きついた。


「月乃。」


今まで聞いたことがないくらい優しい声であかねも受け入れる。

感動の再会というやつだ。

そのままあかねと月乃は何かを楽しそうに話し出した。


私とフェレスのことは空気扱いで。


若干どころか、とても居た堪れない。

感動の再会はわかる。

お互い会いたがってたもんな。

100歩譲ってそれはいいい。

だが、ここは感動の再会とはかけ離れた薄暗いトンネルだ。

そして早く帰りたい。

手が痛いから。

ガラスは意外と痛いのだ。

早急に血を洗い流したい。


「月乃、あのな、」

「ちょっとまった!」


二人の終わる気配のない会話をフェレスが遮った。

ナイスフェス。


「ここで長話もなんだし、とりあえずうちに行こうか。」


うんうん____ん?うち?


「え?うちって私ん家?」

「他にどこがあるの?」

「うちに二人がくるの?」

「だって他に場所ないでしょ」

「いやカフェとか…」

「その血まみれの手と首で入れる訳ないでしょ。」


さっと自分の手を見下ろしてみる。

ずいぶん深く切ったらしく、まだ血が出ている。

それなりにグロテスクだ。


「それに、僕とあかねは見えないし。」


……。

何も言えない。

反論が思いつかなかった。

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