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【月乃視点】

全力で走って、トンネルまでこられた。が。

トンネルに入れない。

いや、別に通行止めとかではないんだけど。

なんというか、物理的に入れない。

何かに阻まれて、トンネルの中に入れないのだ。

見えない壁か何かがトンネルの入り口に貼られているような感じで、これ以上先に進めない。

間違いなく、あかねのような存在が関わっている。

じゃないとこんなことできない。

つつじが中で何かやっているのかな?

わたしのスマホを持って行ったことと何か関係があるのか。

う〜ん。

考えてみてもしっくりとくる答えは出てこなかった。

とりあえず、トンネルの中の様子を知りたい。

このトンネルはカーブしているため、中の様子が見えずらいのだ。

少しでも中の様子が見えないか、壁に張り付いて、中を見ようとこころみる。


「う〜ん? 特になんにも___うわぁっ!!」


突然、壁が消えた。

壁に全体重を乗せていたわたしは思いっきり顔面から地面に激突___

とはならなかった。

咄嗟に手をついて、そのまま勢い余って奇跡の側転を成功させたから。

日頃からよく動いていたのが功をそうしたらしい。

伊達に親を頼れない貧乏暮らしをしてはいない。

それなりにハードなバイトを掛け持ちしていたおかげだろう。

にしても__


「いつも通りの、不気味なトンネルだよね…」


ようやく入れたトンネルは、普段と何も変わってはいない。

数少ない山を通らなければうちの学校に行けない地区に住んでいて、毎日登下校しているわたしがいうのだ。

そこは間違いない。


「とりあえず、行ってみるか。」


入り口に何かあった以上、ここには確実に何かある。

そして、それにつつじが関わっているのは間違い無いだろう。


歩き出そうと思ったら、かすかにヒュウヒュウと風のような音がしだした。

気にせずに歩き出す。


「いつもはこんなおと、しないんだけどなぁ」


薄暗いトンネルに若干の不安を覚え出したので独り言を言って、自分を安心させようと両腕をさする。


「あれっ?」


奥には、少し大きい人影がある。

うずくまっているようだ。


あれは___


わたしは人影に走り寄る。


近づくにつれ、風の音が大きくなる。

いや、違う。

これは風の音じゃない。

これは、呼吸音。

音は、わたしが探していた人物、つつじから発されている。

しかも、彼女は手に持っている何かを、自分の首元におしああてているようだ。

手と首からは薄暗くてもわかる程度に血が出ている。


なんかよくわからないけど、怪我してる!?

止めないと!


「つつじ!!」

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