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紫アザレアが察するには  作者: こたつ
赤い出会い
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てれてれれん てれれれれん


初期通知は未だ響き渡っている。

どうやら彼女のスマホのようだ。

彼女は制服のポケットを探り、スマホを取り出し耳に当てた。


……今のうちに帰っちゃおうかな。長くなりそうだし。

というか、初期設定なんだ……。


HPがマイナス十ずつじわじわと削られていくような感覚を味わっていると、彼女は不審そうに耳からスマホをはずした。

何かしらの操作をしていたかと思うと、微かに音が聞こえた。

どうやらスピーカーにしたらしい。


「___たし______」


スマホの向こうから、掠れた声がした。


「まさか___!」


私の動揺をよそに、掠れた声は言葉を紡いだ。


「わタし、めリ➖さン。いマ、おクジョうにイるノ。」


やばい。

今、ここは、ダメだ。

でも、夢では……。なら___


私は状況が飲み込めていなさそうな彼女の手からスマホを奪い、走る。

山道に入り、全力で走る。

彼女が何か言っているが、聞いている暇はない。

全力で家に帰る、もしくはフェレスと合流する。

フェレスは多分あと三十分くらいで私を迎えに学校まで来てくれるだろうが、それを待っている余裕はない。


『メリーさん』は、とても有名な怪異だ。

突然どこからかかかってくる電話。

それに出てしまったらお終い。

特に、『後ろにいる』と言われたらもう___。


てれてれてん てれてれれん


再び初期設定が鳴り響く。

一瞬迷ったが、仕方ない。

一度電話に出た時点でもう私にはどうしようもできない。

意を決して、通話に出る。


「__もしもし。」

「___と、____タ_」


掠れすぎて、何を言っているのか聞き取れない。

だが、メリーさんは何度も同じ言葉を繰り返しているようだ。

まるで、狂って壊れたおもちゃのように。


「やットツなガっタ!!!!」


少女のようで、老婆のようで、聞くものを注目させ、恐怖に飲み込む声。

決して、聞いてはいけない声。


メリーさんは興奮しきっているようで、お決まりの言葉を言う気配はない。

私は静かに通話を切る。


メリーさんは、有名な怪異だ。

つまり、『空想を現実にする怪異』が生み出した怪異。


この怪異は、インターネットと相性がいい。

インターネット上に溢れている情報、特にネット怪談や掲示板。

そういったほぼ無限と言ってもいい情報が怪異によって現実化され、能力持ちを追い詰める。

その一つがメリーさん。


最近では、背中に壁をつけておけば大丈夫、という情報がある。

しかし、それではおそらく解決できない。

壁に背をつけている間は確かに大丈夫だろう。

この怪異はインターネット上の情報を正確に現実に持ってくるため、ネット上の対策は効果があるらしい。

フェレスが言っていた。

だが、常に背中に壁をつけたまま生活はできない。

背中を離した瞬間、終わりだ。


山道を走りながら、全力で考える。

体力はすでに限界だ。

慢性的な運動不足はもうどうしようもできない。


てれてれてん てれれれれん


「もしっ…もし…」

「いマ、コうモんにゐルの。」


こうもん……校門か。

今学校の敷地を出るところか。

どうせ回避できないのなら、トンネルに行こうか…。

トンネルは、あの山をぶち抜くトンネルのことだ。

なぜそんな場所が候補に上がっているのかといえば、そこが夢に出てきたからだ。

フェレスは、

『つつじがトンネルでメリーさんの電話を聞いているところ』

と言っていた。

電話でメリーさんが言っていたことまではわからなかったらしい。

情報がない。

しかし、予知夢で見た以上、いつかは確実に起こる。

現に今、対策をして電話、特に非通知や誰からかわからない番号の電話には一切出なかったにもかかわらず、こうしてメリーさんに追いかけられているのだ。

なら、さっさとトンネルへ行ってみるか?

トンネルに行きさえすれば、おそらく状況は変わる。

予知夢で見るのは、何かの切り口になるタイミング。

そのタイミングが良いか悪いかはわからない。

だが、かける価値はある。

どうせいつまでも鬼ごっこをしているわけにもいかないし、すぐに追いつかれる。

それなら、トンネルでフェレスと合流できる可能性に賭けるしかない。

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