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紫アザレアが察するには  作者: こたつ
赤い出会い
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ここは怪異が蔓延る世界。

怪異。

それは恐怖。

それは危険。

たまに危険じゃないのもいる。

大昔に解き放たれた怪物達……。

怪異にあった人間は、四つの事を教えられる。

一つ目 一度怪異にあったら今後一生様々な怪異にあう

二つ目 怪異に対抗する手段として、特別な能力が与えられる

三つ目 その能力を持つ人間を、わかりやすく『能力持ち』という

四つ目 能力持ちたちはその能力を頼りに怪異と関わりながら生きていく


怪異と出会ってしまった少女の運命はーーーー

太陽が頭上にあり、眩しい光を放つ中、私は建物の影にいた。

そこは学校の校舎裏で、少女がこちらを睨んでいる。


その艶やかな髪には、真っ赤な彼岸花が咲いていた。


やがてその少女は、口を開いて言葉を発するーーー直前。

私の意識は浮かび上がった。


「おはよう、津々蒔(つつじ)

目を開くと、真っ白な布団と生手首が視界の真ん中に鎮座していた。


「ぎゃあああぁぁぁぁぁ!!!!」

「つつじ、落ち着いて、近所迷惑だよ。」


手首はどこから出ているのかわからない声で宥めてくる。

寝起き手首で落ち着いてられる人間などこの世にいないだろう。

毎朝毎朝、わざわざ私の目の前で声かけてきやがって。


びっくりするに決まっている。

下手な寝起きドッキリよりもタチが悪い。

心の中で悪態をつかずにはいられない。

私は手首から物が多く雑多な自室に目を移し、驚きを緩和させる。


「今日はよく眠れたみたいだね。」


私は生手首、もといフェレスを湿っぽい目で見る。

彼は手首しか無い。

何故かと聞かれても困る。

初めて会った時からこうなのだから。


「今日はどんな夢を見たの?」


フェレスがベッドから机に飛び移りながら聞いてきた。

はたから聞けば、何故そんなことを聞くのか、と疑問に思うことだろう。

理由は簡単。


私が見たのは『予知夢』だから

といっても、ほんの一瞬だが。

見たところであまり意味がないレベルで一瞬だ。

いらなさすぎる能力である。

しかも、この部屋から出たら私は夢の内容を忘れてしまう。

本格的に意味がない。

かといってせっかく見た予知夢を記録しないのも勿体無い。

何より少しでも情報が欲しい。


「女の子……多分同じ学校の人。その人と校舎裏で話す直前。」

「ふぅん。怪異ではなさそうだね。何らかの関わりはあるんだろうけど。」


学校の人が怪異と、ねぇ。

面倒そうだ。


怪異。

それは恐怖。

それは危険。

たまに危険じゃないのもいる。

大昔に解き放たれた怪物達……と聞いている。


フェレスの受け売りだし、私自身詳しいわけではない。

私がそれらを見えるようになったのはほんの数ヶ月前からだ。

フェレスから教わったことは大きく四つ。


一つ目 一度怪異にあったら今後一生様々な怪異にあう

二つ目 怪異に対抗する手段として、特別な能力が与えられる

三つ目 その能力を持つ人間を、わかりやすく『能力持ち』という

四つ目 能力持ちたちはその能力を頼りに怪異と関わりながら生きていく


ということ。

フェレスはちょくちょく色々な事を教えてくれるが、一番大事なのはこの四つだろう。

そして私の予知夢は、この『特別な能力』に由来するものらしい。

こんな力でどうやって生きていけというのか。

フェレスがいなかったらこの数ヶ月だけで何回死んだだろうか。

能力への愚痴が止まらない。


「その女の子って、どんな子なの?」


フェレスが私のお腹の上で首ならぬ指をかしげる。


「黒い髪で、彼岸花の髪飾りをつけてた。」

「ふ〜ん。」


学校の人ねぇ。

今日は入学式からまだ二日しか経っていない。

流石にクラスメイトのことは把握していない。

そもそも覚える気すらなかった。

制服に名札が付いているのだからわざわざ覚える必要はないと思っていたから……。


いや、クラスメイトとも限らないか。

学年が違う可能性もある。

名札をもっとよく見ておくべきだったなぁ。

そうすれば色で学年がわかったのに。


まぁ、いいか。

どうせすぐに会うだろうし。

とりあえず、学校に行く準備をしよう。


緩慢な動きでベッドから起き上がり、床に足をつける。

物を踏まないように気をつけつつ、部屋の扉をあけ、部屋をでる。

途端に自分が何を考えていたのかわからなくなる。


部屋を出たから、何を考えていたのかわからなくなった、いや、忘れてしまったのだ。

相変わらず本当に不便だな…。


「私、どんな夢見てた?」


階段を降りながらフェレスに尋ねる。


「同じ学校の女の子と話してるところだよ。」

「どんなひと?」

「黒髪で彼岸花の髪飾りをつけた子」


彼岸花なんて髪につけるような花じゃないと思うが。

何を思ってつけようと思ったんだ?

あれか?

あの病なのか?


その人のセンスは理解できそうにないが、高校生のファッションなんてきっとそんなもんだ。

むしろわかりやすい目印があると思えばまだ救いがある。

なんのための救いかはわからないが。


「さて、そろそろ本格的に準備しますか。」


終わったことといえば部屋から出てリビングに辿り着いただけだ。

これから身支度をして適当に時間を潰して学校に行かなければならない。

本当なら二度寝したいところだが、今から二度寝をすると学校の時間に起きるのは難しいので時間を潰すしかない。

やる気が出てこなかったので、私とフェレスしかいない、まだ時間的にも薄暗いリビングで、小さくつぶやいてみる。

やる気は出てこなかった。

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