銀髪のお姫様を襲う怪海鳥
トリーは他の町の若いヤツらに絡まれないように、ウーヌスとデュオの陰に隠れていた。
しかし、船の独特の揺れに気持ち悪くなって、甲板に出て海に吐くことにした。
ソラは一応、介抱か監視のような形でトリーについてきた。ウーヌスがソラの面倒を見てくれるようなので、礼儀としてソラも何かしなければいけないと思ったのだ。
甲板に上がる階段でも船は不規則に揺れ、自分が歩いたことでトリーはますます気持ちが悪くなった。ソラはそんなトリーを「しょーもねえなあ」と冷笑していた。
甲板の上に出ると、冷たい潮風で少し気分が良くなってきた。
船室は暗くて狭くて暑くて臭くて、もう戻りたくない。
トリーは甲板の上の箱に座り、潮風にあたって船酔いを覚ましていた。
ソラも隣の箱に座った。
トリーが潮風を楽しんでいると、上品な女性たちの甲高い会話が聞こえてきた。
声のする方を見ると、城の侍女らしき上品な女性たちが船長らしき人と、この先の予定などを話し合っていた。
上品な侍女たちの後ろにいたパンツスタイルの銀髪のお姫様がいた。
銀髪のお姫様は、トリーが見たこともない整った顔の美少女で、長い銀髪が海風でキラキラと輝いてなびいていた。
パンツスタイルだが、ブラウスはレースがたくさんついてヒラヒラしていた。
トリーはポーッとお姫様を眺めていたが、お姫様に近づく大きな怪海鳥の影を見つけ、床にあった棒をつかんでお姫様を助けた。
護衛騎士が剣で大きな怪海鳥を切り捨てた。
しかし怪海鳥は次々と集まって攻撃してきた。
騒ぎを聞きつけたウーヌスとデュオも戦いに加わった。
お姫様は白魔法で光の盾を作り、騎士やトリーたちを助けた。
ソルは黒魔法で火の玉を怪海鳥に投げた。ソルはケンカが強いだけではなく黒魔法が使えたのだ。
トリーがロープで転んでしまい、怪海鳥に襲われた時、ウーヌスがかばってケガをしてしまった。
ケガの血の匂いに怪海鳥たちが興奮し凶暴化してきた。
お姫様は魔法でウーヌスのケガを治癒した。
ウーヌスは倒れた護衛騎士から剣をとり、怪海鳥をドンドン切り捨てた。
戦いが人間優先になってくると、怪海鳥たちは飛び去って逃げて行った。
お姫様は護衛騎士や船員のケガも一人一人魔法で治癒して回った。
トリーの怪我を治す番になり、トリーは間近にお姫様を見ることができた。銀髪のお姫様は絵本の挿絵でしか見たことのないような美少女で、近くで見ても全く欠点が見当たらなかった。
トリーは頭が真っ白になったが、動揺していることは決してバレたくなかった。
お姫様はトリーと目が合って、トリーの黄金の猫目に気づいて息を呑んだ。
「ツェーン様!さ、こちらに。」
侍女は、姫様を汚いものから守るように、騎士たちの方に急いで連れ去ってしまった。
侍女たちに囲まれた姫様はツェーン様と呼ばれ、あのような者に貴重な回復魔法を使ってはいけませんと侍女にたしなめられていた。
あのような者、、、トリーは身分差と劣等感を覚えた。
ツェーン様のブラウスは真っ白でレースやフリルでヒラヒラしていた。靴も金色の飾りがついて高級そうだった。
トリーは自分の服や靴を見て、汚れてボロボロであることに気がつき、恥ずかしくなった。
甲板にいる船員たちの話を立ち聞きしたところによると、ツェーン姫は現王の末娘で、領地視察の帰りでこの船に乗っているそうだ。
それと、王家の中には、回復魔法や防御魔法を使える人がいて、それがツェーン様らしい。
姫様一行は上品な足取りで貴族用の船室に消えていった。
ソラはトリーが美しいお姫様の前でフリーズしている様を見て、口を曲げて冷笑していた。
トリーはソラが笑っているのを見て、決まりが悪かった。
もうすぐ城のある大きな港に着く。船員たちの動きが慌ただしくなってきた。
トリーたちは疲れた体で船室に戻った。