女房イテルの思い
デュオは若い頃から背が高く腕っぷしも酒も強く、陽気でカッコよくて人気者だった。
女の子たちはデュオに憧れていたが、デュオの黄金の猫目が少し怖かった。
イテルは港町の食堂兼宿屋の娘なので、異国の人や異形の人を見慣れていたこともあったし、偏見や差別が嫌いだった。
イテルはデュオの猫目を気にしなかった。背が高いやつ低いやつ、細いやつ太ったやつと同じように猫目のやつがいるんだと思った。
デュオは村の人には相談できない心のうちを、イテルには打ち明けられた。
2人が恋に落ちて結婚した時は、みんなが祝福した。
イテルの両親も、跡取り娘が婿を見つけてくれたので大喜びした。ただ婿の猫目が気がかりだったが。
イテルに似た赤毛の赤ん坊が生まれた時は、みんなホッとした。
だが、3番目の赤ん坊が黄金の猫目で生まれた時、みんなは「ああ、やっぱり、何もかも上手くいくってのは無いんだな。仕方ない。」と思った。
デュオは、トリーを村で育てたいと打ち明けた。
村の人はのんびりしていて親切で、猫目のデュオを受け入れてくれたように、トリーも受け入れてくれると思った。
でも町は違う。噂好きな人もいるし、いじめっ子もいる。
イテルは食堂兼宿屋と上の子供2人と両親の面倒を見なくちゃいけなかったので、寂しいけど、今は別々に住むしか無いと納得した。
子供たちが成人したら、残りの人生をデュオと2人でゆっくり過ごせば良いと思った。
トリーが生まれた頃は、イテルの両親が健在で賑やかだったが、その両親も亡くなった。
子供2人も大きくなると友達付き合いが大事になって、母親は二の次の扱いだ。
この頃、イテルは寂しさを感じる時が増えていた。
今夜イテルは、デュオたちの旅支度の荷物の中身を確認し、足りないものを家の中から持って来て詰め込んでいた。
一年の兵役後は、デュオもトリーもこの食堂で働いて一緒に暮らすと約束してくれたことは嬉しいけれど、、。
猫目を、あの村にいれば隠せるが、城に行ったら隠し通せない。しかも王家の黄金の猫目だ。おそらく王家の落としだねなんだろう。
心配は尽きなかった。