徴兵のお願いに来た村長
翌朝、村長たちが村外れのウーヌスたちの家を訪れた時には、ウーヌスの家の周りはすっかり片付いていた。
家族3人全員が兵役に就いてくれなど無茶なお願いする村長は、なんと言ってウーヌスたちにお願いしようかと悩んで、昨日の夜は眠れなかった。
村長が恐る恐るドアをノックして声をかけると、ウーヌスが中に入るようこたえた。
ドアを開けると、すでにウーヌスたちは旅支度を終えて待っていた。
村長は申し訳ない気持ちでいっぱいになった。
村長は寝不足の充血した目で、落ち着かない手振りでおずおずと話し始めた。
「えー、実は、昨日、城からおふれが届いて、、」
「ああ、3人徴兵されるのは、俺たち3人がちょうどいいだろう。」
ウーヌスは村長の申し訳なさそうな気持ちを救うように、村長の言葉をさえぎって話した。
「俺たちは畑も家畜も無い。40年前に流れ着いたよそ者だ。
何もワケを聞かず受け入れてくれた村の人たちには本当に感謝しかない。
長いことお世話になった。」
ウーヌスはボサボサの白髪混じりの黒髪頭を深く下げた。
村長もペコリと頭を下げた。
「わしらこそ、作物を港町まで運搬して売ってもらって本当に助かっていた。
危険な森や川を抜けるのは命がけだ。これからどうしようかと困ってるよ。
兵役が終わったらまた戻ってきてくれるんだろう?」
息子のデュオが明るくこたえた。
「女房のイテルが町にいるから、俺とトリーは兵役が終わったら女房のところに住むよ。
オヤジは村に戻ると言っているが、俺は町で一緒に暮らした方が良いと言ってるんだよ。」
村長は「ウーヌスさんは安心して帰って来ておくれ。この家は私が責任持ってみておくから。」と約束した。