現王の憎悪
現王は、前王と側室フィーア様の息子だ。
フィーア様は位が低かったため、前王と相思相愛であったが結婚を許されなかった。
前王は側室フィーア以外の女性を愛さなかったので、子供は現王1人だけだった。
現王は子供の頃、「父上は王様なのだから法律を変えて、母を正妻にしてくれたらいいのに。」と思ったが、今では「王様が自分に都合の良いように法律を変えるわけにはいかなかったのだ。」と理解できている。
前王と側室フィーアと息子の3人の平和な生活が10年続いた時、他国との争いにより、形だけの政略結婚をしなくてはいけない状態になった。
形ばかりの政略結婚で嫁いできたのは、前王より20歳下のエル様だった。
前王はエル様と結婚した後も、側室フィーアだけを愛し続けた。
政略結婚の20歳年下の正妻エル様のことを可哀想に思われて、前王は、エル様と騎士ウーヌスの恋も、見て見ぬふりをしてあげた。
その恋の結果、狂われたエル様のことは処刑すれば良かったのに、救ってやろうなど、人智を超えたことをした結果がこれだ。
エル様は不倫をして不義の子を産み、自分のやったことを自分1人で背負えず、家族どころか国中を地獄に落とした。
ひとつも良いところのない女だと思っている。
早く死んでくれと何度願ったかわからない。
現王は会議の席にいる自分の長男次王と末娘ツェーン姫を見た。
自分も正妻とは政略結婚だが、亡くなった妻はこのように立派な子供たちを産み育てた。
良い妻を得られた幸運に感謝した。