昔の護衛騎士仲間エジス
宿屋の部屋に先にエジスが入って、次にトリーが気まずそうに入った。
エジスの部下はドアの前で2名護衛に立った。
「生きていたんだなウーヌス。
どこに隠れていたんだ?
あの時の赤ん坊がデュオか?」
ふぅ、とウーヌスは諦めのため息をついた。
「そうだ。赤ん坊はデュオと名づけた。
結婚をして、トリーという孫もいる。そこに立ってるトリーが孫だ。」
エジスは目を見開いて大袈裟なポーズをつけ、ヒステリックに笑った。
「孫?しかも孫も黄金の猫目なんだな、、、。
お前は黒髪黒目で、エル様は黄金の猫目なんだから、疑いようがないな。
エル様のお血筋であられる。」
エジスはうやうやしく頭を下げる真似をした。
エジスの態度は嫌味だった。
40年前にウーヌスとエジスが護衛騎士だった時は、気の合う仲間だった。
ウーヌスとエル様が不倫関係になった時、エジスは大反対して止めた。
騎士仲間として、ウーヌスにはみんなに祝福される女性と結ばれて欲しかったからだ。
エル様が男児を産んだら、すぐに赤ん坊は殺される手はずだった。
エジスはこのことを知ったらウーヌスが黙っていないと思っていたので、エル様が産気づいた時はウーヌスを見張っていた。
しかし、優秀な騎士だったウーヌスは騎士仲間を出し抜き、赤ん坊を奪い、城の遥か下を流れる急流に飛び込んだ。
産まれたての赤ん坊があの高さから急流に落ちれば生きていないだろうが、念のため、赤ん坊の死体を確認すべく捜索が行われた。
ウーヌスは頑丈な男なので、あの高さから川に落ちても生きているかもしれない。
エジスは誰よりも先にウーヌスを見つけて匿ってやるつもりだった。
夜を徹して城の追手は城の下の川を捜索したが、何も見つからなかった。
ウーヌスは運良く大きな流木につかまり、急流にのって、はるか下流の森の中まで流されていたのだった。