ヲタッキーズ125 冥婚の恐怖
ある日、聖都アキバに発生した"リアルの裂け目"!
異次元人、時空海賊、科学ギャングの侵略が始まる!
秋葉原の危機に立ち上がる美アラサーのスーパーヒロイン。
ヲタクの聖地、秋葉原を逝くスーパーヒロイン達の叙事詩。
ヲトナのジュブナイル第125話"冥婚の恐怖"。さて、今回は入"秋"捜査官が失踪、超能力者の協力で墓地に生き埋めになっていたところを助けられます。
捜査の結果、同様の失踪が相次ぐ秋葉原のチャイナタウンで、マルチバースの中華圏で流行る冥婚の生贄を狩るシンジケートの存在が浮上して来ますが…
お楽しみいただければ幸いです。
第1章 生足の占星術師
真夜中。コスプレ美女がドラゴンの鉛筆画を描いている。肌も露わな紫のワンピ型ジャンプスーツ。彼女は占星術師だ。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
東秋葉原にあるチャイナタウン。季節外れの春節が祝われ、街中に花火が上がり爆竹が響き渡る。
紙吹雪が舞う中、女3人が連れ添い歩く。直ぐ横を華やかな原色ドラゴンのパレードが練り歩く。
「迎えの車?青いバンのハズょ?」
「…やっぱり私、帰るわ」
「え。」
女3人の前で黒いSUVが急ブレーキ。突然サイドドアが開いて連れ込まれる女達。1人が逃げ切り物陰でスマホを抜く。
「サリス、コード5!」
振り向くと、さっきの黒いSUVが止まっている。絶望の悲鳴を残し、SUVが走り去った後にスマホが転がっている。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
チャイナタウンの裏路地にある街中華"青龍亭"。
「美味しそう!ココにしよっか?」
「ココは、マルチバースの何処とつながってるのかしら。東秋葉原のチャイナタウンって1年中、春節だわ」
「"リアルの裂け目"が開いた秋葉原ならではの光景ね」
メイド姿の2人はスーパーヒロイン集団"ヲタッキーズ"の妖精担当エアリとロケットガールのマリレ。2Fに上がる。
「いらっしゃいませ、メイドさん達」
「お仕事中のみなさんにテイクアウトを買いに来ました」
「では、メニューをどうぞ」
真っ赤なチャイナドレスを着た女主人が出迎える。
店はテーブル席に数組の入り。イスを勧められる。
「何が美味しいのかしら」
「チャーシューパオかエビと肉の炒め物ね。あとはヘルシーに行くなら麻婆豆腐?」
「春巻きはドレかしら…おっと、コレは豚の腸だわ」
突然、黒いチャイナドレスの女2人が現れる。
「ウチの女達は何処ょ?早く返して!」
「何のコト?知らないわ。さっさと店から出て行って!」
「ナメんじゃナイわょ!」
激しいヤリトリだ。赤チャイナの女主人がスマホを抜き警察を呼ぶ。すると、黒チャイナの2人は太腿のホルダーから…
「FN-P90?伏せて!」
エアリが叫ぶと同時に、2人は短機関銃を乱射、女主人や客を射殺、さらに掃射し店内をメチャクチャにスル。
素早くテーブルの下に隠れたエアリとマリレは、音波銃を抜き、物陰からそれぞれ1発で黒チャイナを仕留めるw
ハデにテーブルをひっくり返し倒れる黒チャイナ!
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
流血の大惨事だ。所轄の万世橋警察署が駆けつける。
「犯人は何て言ったかわかる?」
「マルチバースに散った中国語は、難解極まるが…多分"私達の女達は何処アルか?早く返すヨロシ"だ」
「ラギィ警部。6人負傷、4人死亡。犯人の銃は、FN-P90だと思う」
万世橋の敏腕警部ラギィが負傷した客から話を聞く。
さらに犯人を射殺したヲタッキーズからも事情聴取。
「ラギィ、危うく皆殺しになりかけたわょ」
「災難だったわね…ココは昔、パパが良く連れて来てくれた店だわ」
「明日からは、心霊スポットになりそう」
亡くなった赤チャイナの店主を見下ろす。ソコへ…
「コチラは、亡くなったヲルタ店主のお姉さんです」
「…姉のハヴェ・イユンと申します」
「お気の毒に。何か心当たりは?」
ハヴェ・イユンも赤チャイナだ。妹より背が高い。
「"ジェド団"の仕業だと思います。妹は、用心棒代を払わなかったから…」
「もう永遠に用心棒代は払わないわね」
「入"秋"税関取締局のサリスょ。ウチの潜入捜査官が他の女性2人と失踪したわ。彼女が第1容疑者ナンだけど」
サリスは、死んだヲルタ・イユンを見下ろす。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
同時刻。ルイナのラボ。
ルイナは、史上最年少で首相官邸の首席アドバイザーになった超天才だ。相棒のスピアは、ストリート育ちのハッカー。
「今日はテリィたんが来ないね。お陰でヤケに静かだわ」
「同窓会だっけ?」
「そう。ン周年のね。何年かは秘密だって」
クスクス笑う2人。因みに、ルイナのトレードマークは車椅子にゴスロリ。スピアはジャージ姿だが、下はスク水だw
その時、突然w
「ルイナ。私を覚えてる?」
ラボのモニターに、紫のワンピ型ジャンプスーツに生足のコスプレ美人が現れる。超天才のラボに堂々とハッキングw
「…シルモ。もちろん、覚えてるわ。で、用件は?」
「テリィたんと大事な話がアルの」
「今日は見てないわ。マチガイダじゃないの?」
マチガイダ・サンドウィッチズは、僕達の溜まり場だ。
「見せたい絵がアルと伝えて」
「もし会ったらね。じゃサヨナラ」
「貴女にもメールしておいた。彼に見せて」
ルイナの極秘メアドに着信。
同時にvideo回線は切れるw
「ルイナ、誰なの?」
「サイモ・シルモ。自称、超能力者」
「なぜラボの存在を知ってるの?」
「内閣情報調査室の元スパイだから、何処かで調べたんでしょ。ねぇテリィたんには連絡スルべき?」
言葉に詰まるスピア。
「決まりね」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
ラギィに呼ばれた僕は、短機関銃に掃射されてズタズタになった中華料理屋の2Fにいる。胸ポッケのスマホが鳴動。
「テリィです…今?殺人現場ナンだけど…昔、バンド仲間と通ったチャイナタウンの街中華」
「え。テリィたん、東秋葉原にいるの?何てお店?」
「"青龍亭"」
ルイナのPCに青鉛筆で描かれたドラゴンの絵の画像w
第2章 名画"カラスのいるアキバ"
万世橋警察署に捜査本部が立ち上がる。
「本件では、潜入捜査官が行方不明になってる。入"秋"管理局のサリスからの報告を聞いて」
「ありがとう、ラギィ警部。サリスです。失踪した捜査官は、キムリ・シャオ。中国語が堪能だから私がマルチバースの"中華217"から呼び寄せた。襲撃犯の1人ジミリ・キーンは"ジェイ団"のリーダー。キムシは、昨夜までジミリの労働搾取工場に潜入していた」
「ジミリは、女を返せと迫ってたらしいわ。お宅の捜査官とお連れのコトかしら?」
サリスは、溜め息をつく。
「可能性はあるわ。失踪した3人の足取りは、セントラルプラザまでは確認出来るけど、店の近くでキムリは姿を消し、周辺の監視カメラは、全て止められてた」
本部のモニターに、繁華街を歩く女3人連れの画像。
「応援は?」
「ついてなかった。9時15分に勤務が終了したとの連絡があったきり」
「キムリ捜査官からの最後の連絡を流します」
本部に留守録が流れる。
"… サリス、コード5!…(激しい爆竹の炸裂音)…(再び爆竹あるいは銃撃?)…キャー!"
「有名なSATOの超天才様に分析をお願い出来る?」
「承知。しかし、捜査官に追跡装置を持たせてないの?」
「恐らく、今でも身に付けているとは思うけど、反応するのは1.5km程度ょ」
南秋葉原条約機構は、アキバに開いた"リアルの裂け目"からの脅威に対抗する首相官邸直属の防衛組織だ。
因みにヲタッキーズはSATO傘下の民間軍事会社で"裂け目"関連の事件で、よく警察とは合同捜査を行う。
今回みたいにw
「1.5km?たったそれだけ?」
「今まではソンなモノ、必要なかった。でも、今思えば危険信号が出てたカモしれない」
「つまり?」
サリスは、眉間にシワを寄せる。
「東秋葉原のチャイナタウンでは、既に5件も捜索願が出されてる。不法入"秋"者達を考えれば、失踪者は数え切れない。そして今回、ついに"ジェド団"の労働搾取工場からも人が消えた」
「ヲタッキーズと少し洗ってくれる?」
「OK、ラギィ」
早速、サリスはヲタッキーズのエアリ&マリレと出掛ける。
「なぜジミリ・キーンは自ら襲撃したのかしら?下っ端がいるでしょうに」
「"サイロ"のコトね」
「ジミリは疑り深い性格なのカモ」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
捜査本部は、入れ違いにルイナとのリモート回線を開く。
「ルイナ。また色々教えてね」
「その前にラギィ、お宅のあのサイモ・シルモがウチに来たンだけど」
「え。SATO司令部に?!」
SATO司令部は、パーツ通りの地下深くにある。
「あ、リモートでだけど。ソレにしたって、衛星回線にスクランブルかけてるのに易々とハッキングして来た」
「奴の事は、あまり考えたくないけど何か?」
「この絵を描いたって」
モニターに青鉛筆で描かれたドラゴンの画像。
「"ブルードラゴン"?相変わらズ凄いわね。襲撃直後に来たんでしょ?」
「警察無線を傍受して"ブルードラゴン"と言うワードを耳にした可能性もアル」
「そうカモね。で、襲撃の現場付近で捜査官が行方不明になってる」
簡潔に説明するラギィ。
「連れ去られたの?偶然?それとも何か関連が?」
「わからない。でも、電話で助けを求めて来た。聞く?」
「もちろん」
"… サリス、コード5!…(爆竹の音or銃撃?)…キャー!"
「あら。ナマの声が入ってるのね」
「何とかなりそう?」
「周波数領域プロセッサーを使うわ。スピアにもノイズ解析を手伝ってもらう」
早速、ルイナの背後でヘッドホンをつけるスピア。
「あ。スピアには別のコトを頼みたいの。コレ、お店のハードドライブなんだけど」
お互いの画面に膨大な数記号の行列が提示される。
「…うーん多層暗号みたいね。大好物だけど、私は何を調べれば良いの?」
「ソレが…わからない。何かあれば教えて」←
「無茶ぶりthank you」
ココで捜査本部に来客…サイモ・シルモだ。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
神田リバーに沿いには、江戸時代からの物流拠点の面影を残す倉庫が多い。その1つを音もなく包囲スル警官隊。
「倉庫を居抜きで使った労働搾取工場か。ミシンがズラリと並んでるけど無人だわ」
「労働者は何処に消えたのかしら?」
「突入」
先頭は拳銃を目線で構えたサリス捜査官。左右に音波銃を抜いた(でもメイド服のw)エアリとマリレが続く。ん?薬莢?
「薬莢が落ちてる…FN-P90だわ。店の襲撃に使われたのと同じ短機関銃。この毛布は何?」
毛布をめくると…死体が2体←
「ジェド団のメンバーだわ!」
「どーりで下っ端がいないワケね」
「なんでジミリは手下を殺したのかしら?」
倉庫の奥で、誰かがドラム缶を萌やしてる。
「おい!何をしてるの?!」
「ドラム缶から離れて!」
「どいて!」
何処から見つけて来たのか、エアリが粉末消火器で消火…すると、何処か遠くから女の悲鳴が響いて来る。
「サリス?」
「しっ。静かに!」
「ココだわ!」
本棚を倒すと、裏に人が入れる巨大な金庫。
ドアを開けると…中には拉致された女性達w
怯えた目でサリスを見る←
「安心して!もう大丈夫ょ!」
「キムシ!キムリ・シャオは?」
「この中に失踪した捜査官はいる?」
悲しげに首を振るサリス。
「いないわ」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
同時刻。僕は万世橋で厄介系の美人と向き合ってるw
「シルモ。キムリ・シャオを知ってるか?」
「テリィたん、いきなりステーキ、じゃなかった、いきなりビジネストークなの?つまんなーい」
「…まぁ座れょ」
メキシコ人のテンガロンハットみたいなデカい帽子。紫のワンピ型ジャンプスーツ。生足。コレが今時の占星術師かょ?
「やっと会えた。うれP(死語w)」
「"ブルードラゴン"の襲撃の日、この絵を描いたンだって?」
「あくまでビジネストークなの?じゃ私も事務的に話すわ。前回捜査に協力した時は、私とテリィたんは、お互いに便宜を図り合って2人の利潤を極大化するコトが出来たわ」
ん?便宜?2人の利潤?何だっけ?
「そ、そーかな」
「で、また頼みがあるのょ。先ずは条件を決めたい。今、法医学的な超能力に関するリアリティ番組を撮ってるの。"シルモの秘密"って番組」
「何だソレ?ウマいのか?」
思い切りイヤーな予感がスルw
「とにかく"いいネ"が欲しいの!」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「私も捜査に参加したい。ついでに、撮影もさせてくれるなら、事件を解決してあげても良いけど」
「ムリ。じゃサヨナラ」
「え。即決?全く検討しないの?」
さすがに悲しそうな顔をスル生足の占星術師。
「あら?ルイナに苦しめられているのね?科学者と占星術師の衝突がテリィたんを不幸にしている…」
「だったら仲良くやってくれょ。そもそも完全に俗世から隔離されてるルイナに良く近づけるな」
「"ブルードラゴン襲撃"は、ネットで初めて知った。最初はキューピーさんかと思ったの。でも、夢の中でよーく目を凝らしたら…女性の死体だった」
シルモは1枚の絵を示す。青い龍の中で折り重なる女子w
「死体なの。いくつもあるわ」
「…こんな絵じゃ証拠として使えない」
「わかってる。でも、死体は…まだ増え続けるわ」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
さらに同時刻。ルイナのラボ。
「ルイナ。例の音声を分析中だけど、いくつか使える断片がありそうょ。複数のノイズフィルターをかけて、やっとわかった」
「そもそもノッチフィルタじゃ不十分なのょ、スピア」
「あ。ラギィ、CGのプログラムを見たコトは?」
モニターにラギィの顔が映る。
「私ね、実はカルチャーセンターの週末CG講座に通ってるの。今週の課題はゴッホの"カラスのいる麦畑"の塗り絵を完成させるコトょ」
「あら。ゴッホってカラスに毒されたのょね」
「話が早いわ。ラギィ、コンピュータで麦畑を塗ったとスルわね。次は、カラスと雲の番ょ。本来より大きく、さらに密集させてみるわね」
何と黄金の麦畑は黒いカラスに覆われてしまうw
「あぁ!せっかくの麦畑がw」
「大丈夫ょラギィ。カラスと雲に隠れてるだけ。視覚的なノイズと言えるわ。で、どうすれば、ノイズを背景に出来ると思う?」
「カラスをクリックして縮小、色をボカせば、遠くにあるように見えるわ。雲にも同じ処理をスルの」
画面の巨大カラスや雲がみるみる縮小、背景に溶け込む。
「コレで麦畑が映えるわ。音も同じ。ノイズを小さくすれば、必要な音が映えて来る。つまり、フィルターでノイズは低減し、不要な音を周波数で特定して差別化スルの」
「先ず爆竹の音。次に車のクラクション。メーカー毎に音形が変わるから、単一周波数が必要なのょ」
「…ふーんそーなの?で、スピア。お店のハードディスクの方は何かわかった?」
モニター画面は、麻雀牌が山型に積まれた画像になる。
「このスクリーンセーバーが何か引っかかるのょね」
「引っかかる?コレって牌崩しの麻雀ゲームでしょ?」
「ソレが…プレイ出来ないのに、メモリ容量がヤタラ大き過ぎるの。まるで、ドアや窓のない家みたい」
スピアは、溜め息をつく。
「家の中には誰がいるのかしら」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
万世橋の取調室。
「お宅の工場で働いていた女捜査官が行方不明になった」
「俺は、何も知らねぇよ」
「アンタ以外の"サイロ"はどうしたの?」
ラギィ警部自らの取調べ。相手は、倉庫でドラム缶を萌やしていた男。コリンと名乗るブッキラボーな男だ。
「初めにハッキリ言っとく。俺は、誰も殺してナイ。誰かが死んでも、ソレは全部ジミリの仕業だ」
「じゃアンタのボスは、何で子分を殺したの?」
「…女が消えてキレてた」
ブッキラボーだがトンでもナイ内容を歌い出すw
「女って?」
「マルチバース中の貧しい女を"リアルの裂け目"を通して密航させ、自分の縫製工場で働かせている。いい商売だ」
「その気味悪いウィンクはヤメて。コリン、アンタはジェド団の唯一の生き残り。外は全員死んだわ。アンタ以外の全員がね」
スゴむまでもなく、スラスラ先を歌うコリンw
「あの夜、工場から3人の女が逃げた。ジミリが痛め付けたら子分達が白状した。"ハヴェ・イユンに女を売った"とな」
「ハヴェ・イユン?死んだ"ブルードラゴン"店主の姉?彼女が何で女を買うの?」
「娼婦にするためさ。買われた女達は"ブルードラゴン"からバンに乗せられる」
次元難民女子によるコールガール組織だw
「あのね。アンタには、既に殺人未遂と放火未遂の容疑がかかってる。子分達もアンタが撃ち殺したのね?」
「仕方なかった。ハヴェ・イユンと組んでないなら殺せと言われた」
「でも、ホントは組んでたンでしょ?そして、女達はソレを知っていた。ハヴェ・イユンと自分のボスを両天秤?」
フフンと鼻先で笑うコリン。
「所詮は血塗られた道さ。そーだろう?」
「危ない商売ね。アンタ、秋葉原中の人間と組んでるワケ?」
「アンタ以外のな」
ラギィは、溜め息をつき首を振る。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
その数分後。ラギィは動画を見ている。
「…ブラック、レッド、レッド…」
係官が隠し持つトランプの色を当てるシルモ…おや?
「やれやれ。コレで25枚連続で連続して"外してる"。コケにしてくれちゃって」
「係官の背後のガラスにトランプが写ってる。警部、やはり彼女はイカサマ師ですょ」
「以前、彼女の絵に助けられたコトがあった。今回もこんな意味不明の絵を描いて寄越したのょ」
青鉛筆で描かれた龍の中で折り重なる女子(の死体?)。
「警部、事件に加担してた可能性も否定出来ません」
「この前、友人の洪水教のラビが疑念について話をしてた。疑念も人生の1部。暗闇には理由がアルってね」
「…電球の発明とか?」
ラギィのスマホが鳴動。
「ラギィ…わかった。直ぐ行くわ」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
首都高上野線で派手な交通事故。パレード用のドラゴンを載せたイベント会社のトラックが横転。
上野線は全線通行止め。高速道路の上には、ドラゴンの破片や空箱が散らばる。そして…死体もw
「状況は?」
「あ、警部。首都高ポリスとカーチェイスの果ての横転です。運転手は重傷で救急搬送済み。だが、コチラは…」
「首が折れてる。事故る前から死んでた?あ、サリス。亡くなったのは誰だかワカル?」
白い布をめくり素早く確認するサリス。
「2人共ジミリの労働搾取工場の女性だわ」
「…お宅の潜入捜査官は?」
「違うわ」
頭をヒネるラギィ。
「ドラゴンに女の死体…シルモの絵そのものだわ」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
捜査本部の会議室。サリスが女子2名を連れて来る。
「ラギィ警部。彼女達が殺害について話したら口を開いてくれたの」
「←&〆「♫〓≧●」
「コリンに話を持ちかけられたけど、彼女は拒んだそうょ」
かなり崩れた中華語だが、スラスラ訳すサリス。
「ハヴェ・イユンの取引に応じれば、店から青いバンに乗って体を売る、こんな感じらしい」
「"ブルードラゴン"の配達車は確かに青いわ」
「‰〒Å∬≠⁑$◎」
サリスは、慎重に言葉を選びながら訳す。
「青いバンに近づいたら、私の写真が貼ってあった。私を探す人はいないのに、どうして写真が貼ってある?」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
捜査本部で会議が開かれる。
「消えた潜入捜査官の追跡装置が未だ作動しているとの前提で、螺旋状に捜査範囲を広げて行きましょう」
「ソレしか手はナイのかしら…」
「ねぇ警部。でしゃばる気は無いけど、ウチの捜査官を救うためなら異例の方法でも試してみたいの」
エレベーターのドアが開き、現れたのは…生足の占星術師w
「冗談でしょ!」
「ごめんなさいね。でも、上の許可は取ったわ」
「私、ぜひ救出劇の動画をUPしたい!ラギィ、私は貴女の助手席で良いかしら?」
ピシャリと遮るラギィ。
「シルモ。少しは黙って」
第3章 掘り起こされる女達
小さな紙の家に火をつけるハヴェ。メラメラと萌える。
「中華では、故人にまつわるものを一緒に萌やすの」
「ミニカーも萌やすの?あの世へは車で行くの?」
「来て。ハヴェさんは、この"中華アキバ館"のオーナーなの」
僕とミユリさんは、サリスに連れられ、ハヴェ・イユンがオーナーの"中華アキバ館"を訪問中。
行き先を聞き、てっきり中華ランチのお誘いかと思ったが、ある種のカルチャーセンターらしい。
「姉妹の仲は、必ずしも良くはなかった。妹のヲルタは、重度のヲタクだったから」
「質問があります。貴女ご自身は、妹さんの次元難民の女性によるコールガール組織を知っていましたか?」
「うすうす感じてはいたけど…あれでも私の妹ょ。ソレに売春組織ってチャイナタウンの1つの顔に過ぎない。今日は別の顔も是非お見せしたくてお招きした次第」
赤チャイナのハヴェは、会館の中を案内してくれる。
「私達の願いは、マルチバースの隅々まで、中華の伝統文化を残すコト。ココでは、語学を教えています。アチラでは麻雀。麻雀は孔子が発明したとも言われている。そして、コチラでやってる太極拳は、歴史ある武術です」
会館のアチコチで中華文化が継承されている。その一角で老夫婦が掲示板に貼紙を見上げている。顔写真入り?尋ね人?
「娘さんが行方不明なのです。未だ若いのに…」
老夫婦は、ハヴェにポスターを渡し、手を合わせて去る。
「行方不明?なぜ警察に通報しないの?」
「みんな"リアルの裂け目"経由の密航者です。不法入国だから、見つかれば逮捕される。2000万の中華の民がマルチバースのアチコチに不法滞在しています」
「なるほど。警察が捜索するのは事実上困難ね」
ハヴェ・イユンは、赤チャイナで肩をスボめてみせる。
「彼女達は"リアルの裂け目"経由の密航のために莫大な借金を背負い入"秋"して来る。国外退去させられるくらいなら、喜んで売春や搾取労働に身を投じます。私達の母のように…コレが東秋葉原の現実です」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
その頃、同じ東秋葉原を逝く万世橋の覆面パトカー。
「だから、ラギィ。螺旋状の捜索ナンて時間の無駄なのょ。ソレに何で私が後部座席なの…あら?パトカーの後部座席ってベルトしなくて良いのね?」
「警察の手順を知らないの?超能力者でしょ?」
「江戸時代の岡っ引きから進歩がナイと言ってるのょ」
"助手席"のラギィは苦笑い。
「とにかく、潜入捜査官の所持してる追跡装置は、1.5km以内なら反応があるハズ」
「先に超能力者の私が反応しちゃうワ」
「止めないわょ。いつからホンキを出すつもり?」
生足の占星術師シルモは、あくまで強気だ。
「あら、既にホンキょ。最初の死体は、タダで探してあげる。サービスょ。その後で正式に契約して」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
"… サリス、コード5!…(激しい爆竹の炸裂音)…容疑者の車は青いバン。ナンバーは…"
ルイナのラボでは、引き続き音声分析中だ。
「ナンバーの後の音は何かしら?」
「2種類の音の合成ね。金属音と何かがこすれる音かな」
「金属音は車のドアね。早速フィルタを作りましょう」
超天才ルイナと相棒でハッカーのスピアの話が進む。
「で、こすれる音はブラウスとか…チャイナドレスかも。スマホを隠そうとしたんだわ」
「あと2つね…あ、そうそう。ハヴェだけど、帳簿を横流ししてたわ」
「あら。ネットワークがアルのね。シンジケート?」
因みにルイナは車椅子。スピアは本気モードでスク水だw
「どーせ送信先はダミーアドレスでしょ?スピア、追跡出来そう?」
「もうしちゃった。世界中のサーバーを経由スルけど、結局最後は中華の国に飛ぶ」
「どーやら、秘密の文通がいるみたいね」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
東秋葉原を螺旋状に走る万世橋の覆面パトカー。
「青春真っ盛りだったのに…あのキャバ店長がJKバイトをレイプした。昨夜あのビルでね」
悲しげな顔で窓の外を指差すシルモ。
「何で通報しないのょ!」
「今、見えたの!」
「…ねぇアンタも性的暴行で捕まったそうね?」
シルモは、全く動じない。
「私はハグが好きなだけ…う!うげっ!」
「どーしたのシルモ?何か見えたの?」
「ソコを左に曲がって!さ、左折よっ!」
後部座席でハァハァ荒い息遣いのシルモ。大量の汗を噴く。
「警部!探知機に反応!失踪した捜査官は近くにいます!」
「シルモには何かが見えてる。本部に至急連絡!」
「右折!また右折!」
ラギィが無線機に叫ぶ。
「全捜査員!東イズミ霊苑に急行せょ!」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
覆面パトカーから転がり出るようにして降りたラギィ達は息ゼイゼイのシルモを押し立て、墓地の中を走る。
追跡装置に反応した探知機が発する"ピーピー音"の間隔はドンドン狭まり、やがて長く続く連続音となるw
「地面の下?生き埋めになってるのか?」
「ソレとも…早く掘り返すのょ!シャベル!」
「管理人を呼びます!」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
駆けつけた警官、職人総出で墓を掘り返す!
「スコップ、待って!この下に何かアルわ!」
ラギィが墓穴?に飛び込み底の土を手で払う。真新しい赤い布に包まれた"何か"だ。恐る恐る布をめくると…女の顔w
「まだ息がアル!至急、外に出して!」
「そっと上げルンだ!」
「神田消防に救急車を要請!病院搬送!」
現場は騒然だ。
「…ゼィゼィ、ラギィ。チャイナ、見た?ゼィゼィ」
「また、あのチャイナドレスだったわね」
「その通り」
さらに、掘り進んだ警官隊が白い箱を見つける。
「棺だわ。棺の上に彼女を埋めたのね。どうなってるの、管理人さん」
「私達には分かりません。ココは、火曜に埋葬した男性の墓です。因みに、ココは中華人の多い区画です」
「周辺をうろついてた者は?」
初老の管理人は明らかに当惑した風情だ。
「交番のおまわりさんから聞いてませんか?」
「何を?」
「先週、別の墓で怪しい人影を見かけました。顔はよく見えませんでしたが」
管理人は指差す。
「あの墓です」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
"あの墓"を掘り返すと、またも赤い布。めくると女の顔w
「コチラは既に死亡しています」
「そして…また赤いチャイナで綺麗に着飾っているわ」
「犯人は、被害者を墓に埋めて回ってる?」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
死体は、直ちに検視局に運び込まれる。
ストレッチャーの上に並ぶ3人の女性。
「被害者は、結局何人?」
「警部、今のところ4人です」
「その内2人は、注射によって麻痺させられてた。分析したトコロ、麻痺性貝毒に似た成分が検出されました」
白衣の検視官が所見を述べる。突っ込むラギィ。
「じゃ貝が死因なの?」
「貝性の毒がね。ソレから、マスカラが目の中に入ってるのに、涙が出てないし、マスカラも落ちてない」
「え。つまり?」
女子ならではの会話だw
「麻酔させられてからメイクされてる」
「先ず麻痺させ、着飾って、ソレから埋めたの?」
「ソレも4人とも同じドレスで着飾ってる」
検視官は、土まみれの赤いチャイナドレスをいじくり回す。
「ラギィ、ソレからドレスに生地メーカーのタグがついてるわ」
「え。コレは東秋葉原の労働搾取工場じゃナイの」
「ソレと良く似た赤いチャイナを着た母の写真を見たコトあるわ…あ、ママは娼婦じゃナイわょ!」
サリスは、怖い顔で睨む。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
その頃、ルイナのラボ。
「容疑者の車は青のバンだったンだって」
「絞り込めそうね」
「とりあえず、バンのドアが閉まる音を録音して来るわ。フィルターを作らなきゃ」
生音を録りに飛び出して逝くスピアを見送るルイナ。
入れ替わりに、万世橋とのリモート回線をオープン。
「ルイナ。ラギィょ。着飾った上で埋められた女性の遺体が出て来たわ。お墓自体は、14〜78才の中華男性のモノょ」
「キムリ・シャオ捜査官は?」
「注射針が骨にあたって貝の毒が体に回らなかった。助かるカモしれない。でも、暫く事情は聞けナイわね」
ラギィは溜め息をつく。
「念のため桜田門のデータベースに当たってみたけど、猟奇的過ぎて、似た手口は見つからなかった」
「インターポールにも問い合わせてみたら?」
「中華の公安部にも問い合わせてみるわ」
飛び出して逝くサリス。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
万世橋警察のセキュリティゲート。
スピアとすれ違うサイモ・シルモ。
「あら?超天才の相棒さんね?貴女のボスは、シャオ捜査官を探し出せなかったみたいね」
「…ルイナは、アンタの捜索パターンを見破ったから」
「私の捜索パターン?ハテ?何のコトかしら」
こっそりスピアを盗撮スル生足の占星術師w
「左折して2回、そして左折…アンタが指示した道筋はレヴィ飛行でしょ?」
「何ソレ?美味しいの?いずれにせょレヴィ飛行とやらを選んで正解だったんでしょ?」
「ソレはそーだけど」
ゲートを抜けたシルモは入館証を警官に投げる。
「お返しスルわ、おまわりさん」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
僕は、ブラリとルイナのラボを訪問。ルイナは、素晴らしい集中力で、電子データの解析に取り組んでいる…いた?がw
「あ。テリィたん。"ブルードラゴン"の会計プログラムなんだけど…何か気になるのょね。テリィたん、会計とか詳しい?」
「全然…でも、テイクアウトの欄を読み上げてみて」
「え。テイクアウト?…134、440、521?あら?3桁を足すとどれも8だわ。偶然にしては多過ぎる」
単なる当てズッポウだったがw
「次は結婚式の引出物メニューも読み上げてょ」
「1314、3231、それに1800。うーん今度は、どれも合計が9だわ。コレって何かの闇帳簿?何かの会計システムが隠されてる気がスル…あら?また謎の麻雀ゲームが現れたわ」
「牌崩しかな?」
一見、ランダムに積んだ麻雀牌の山←
「この画像に何か隠されてる?牌を積むパターンかしら?」
「牌の裏を見たいな。とりあえず"8"と"9"のキーを押してみてょ」
「うーん数字の組み合わせは全部試してみたけど」
そりゃ失礼。さすがは超天才だw
「コントロールキーは?」
「コマンドキーも全て絡めてみた」
「そっか」
僕は、思い切り背伸びスルw
「OK。ローテクだけど"8"を8回押してみて」
次の瞬間!画面の中の麻雀牌の1部が一斉にひっくり返り、今まで裏面に隠されていた女性の写真がズラリと並ぶ。
「コ、コレはハヴェ・イユンのコールガール達?」
「名前の下の数字は…きっと値段だわw」
「結婚式の引出物メニューは?」
ルイナが僕を振り返る。自信たっぷりに答える。
「ルイナ。今度は"9"を9回押してみて」
画面の中で一斉にひっくり返り女性の顔写真が並ぶw
「OK!捜査本部?首相アドバイザーのルイナです。ラギィ警部はどちら?」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
同時刻。万世橋の捜査本部。
「ラギィです。あ、ルイナ。何?…ええっ?!」
「警部!赤いチャイナドレスですが、生産は中止されてましたが、在庫を売ってるドレスショップが割れました。東秋葉原です!」
「ラギィ!中華な国の公安部から参考データが届いた」
サリスが本部のモニターに次々と顔写真を並べて逝く。
「あらあら。みんな、どう見ても犯罪者の顔ばかりね」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
東秋葉原にあるチャイナ服の専門店。
自らは翠チャイナを着た店主が応対。
「赤いドレスは多いからねぇ」
「この男に見覚えは?」
「あ!覚えてるわ。現金で赤チャイナを12着も買って行った。キャバでも始めるのかと思ったわ」
ラギィが見せたのはコリンの画像だw
「現金で買っていったの。多分マニアね」
「ありがとう」
「あら?シルモ?」
フト気づくと、シルモが店の前の広場で動画を録っている。
「おやおや。生足の占星術師さんに先を越されたみたいね」
「しかし、警部。彼女はどーしてココに?」
「あら、ラギィ警部!」
明らかに場違いな生足コスプレがラギィを呼び止める。
「アンタこそ何してるの?誰かとコスプレの合わせ?」
「まさか。昨夜、私が描いたスケッチを見て。私は、この場所を探しているの」
「うーんソレは確かにココかも」
急に歯切れが悪くなるラギィw
「勝手にイメージが浮かんで、もう1枚描いたみた。コレは地図には載ってナくて、何処だかワカラナイ。ねぇ何処かしら?」
シルモが見せるスケッチには手を繋ぐ男と女。背後に車。
「も少し探してみるわ。でも、ついて来ないでね。何しろ、私はシャイだから…うぐぐっ!」
突然、立ったママ金縛りに逢い、白目を剥くシルモ。
「ソレでホントにシャイなの?」
呆れるラギィ。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
捜査本部のモニターに麻雀牌の山の画像。
「テイクアウトは売春を意味してた。笑えないユーモアね」
「で、その数字は?」
「価格ょ。若い美女ほど高値がつく」
会計プログラムを"解析"したルイナのレク。
腕利きの捜査員達から驚きのドヨメキが発生w
「SATOのゴスロリ姐さん、何で全て合計が"8"に?」
「数秘術ょ。北京オリンピックの開幕は?」
「えっと。確か8月の…」
ルイナが自ら答えるw
「正確には2008年8月8日8時8分発表ょ。オリンピックの成功を祈り、国を挙げて縁起の良い"8"にこだわった結果なの」
「そう言えば、中華の国じゃ結婚式も8月が多いし、8のつく電話番号は高額で取り引きされてる。インバウンドがそう話してた」
「すると、女子の価格設定にも、何か縁起担ぎの意味がアルと?」
車椅子の超天才は自信たっぷりに回答。
「資産を守る意味もアル。"8"の力でダーティビジネスに金をもたらそうとしてるのね…でも、ソレだけじゃないわ。結婚式の引出物メニューを見て」
「ん?コッチは"9"にこだわってる?」
「YES。幸運の"8"に対して"9"は神秘的な数字ょ。現世を超えて天国へと導く数字。つまり"9"の女性達は貸し出しではなく、売り飛ばされてた…つまり人身御供ねw」
リモートで捜査本部から質問が飛ぶ。
「でも、ゴスロリ姐さん。捜査官のシャオ以外は全員殺されたんだぜ」
「"冥婚"だわ!そー言えば、被害者と同じような赤チャイナを母が結婚式で着てるのを見たコトがアルわ」
「サリス捜査官…東秋葉原のドレスショップで聞いたら、12着の赤いウェディング用チャイナをコリンに売ったらしいわ」
捜査員達も負けていない。
「警部!ゴスロリ姐さん!インターポール経由で入った情報だと、2年前、中華な国の陝西省で、ある一味が女性の遺体を夫婦に売り払う事件が発生してる。遺体の買い手は、いずれも独身の息子を亡くした夫婦だったらしい」
「マルチバースに散らばる中華圏の国々では、亡くなった息子の墓に独身女性を埋める"冥婚"の風習が残っていると思われます!」
「マジ?死者と生きた花嫁を結婚させる風習?」
本部のモニターに、新聞の切り抜きが映る。
見出しは"「冥婚」血塗られたビジネス"。
2年前の"冥婚事件"を伝える記事だw
「そー言えば、店の帳簿は共有されてたわね」
「未だ、何処かにパートナーがいる?」
「でも、ジミリは死んだし、コリンは逮捕された。あと誰が残ってるの?」
ソコへ若い刑事が駆け込んで来る。
「警部!捜査官を拉致した青いバンのナンバーが判明!」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
その頃。
生足の占星術師サイモ・シルモは東秋葉原を彷徨う。突然、女の悲鳴。シルモは走る。
拉致されそうな女が泣き叫ぶ。シルモは動画を撮る。女は車に放り込まれ車は急発進。
跳ね飛ばされ、地面に横たわるシルモ!
第4章 僕の人生に答えはない
"…サリス、コード5!…容疑者の車は青いバン…ナンバーはBA8…"
ルイナの相棒ハッカーのスピアが、数々のフィルターを設けた結果、捜査官の最後の連絡がクリアに聞き取れるようにw
「スピア、スゴい!爆竹の音や急ブレーキの音が消えて、素晴らしくクリアになってる!で、"BA"は何かのイニシャル?」
「中華系の言語で"8"を意味スル。俗に言う"ラッキー8"ね。因みに、ハヴェ・イユンの"中華アキバ館"の車は、縁起担ぎで全車"8"ナンバーなんだって!」
「ハヴェ・イユン?…やっと見つけたわ!ムーンライトセレナーダーを呼んで。ヲタッキーズも出撃して!」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
ムーンライトセレナーダーは、僕の推しミユリさんがスーパーヒロインに変身した姿だ。メイド服にレオタード←
「万世橋SWATは正面から、ヲタッキーズは裏へ回って!」
「ROG!」
「突入!」
覆面パトカーや黒のSUVが"中華アキバ会館"に到着。
分乗していた完全武装のSWATが次々と突入して逝くw
「ハヴェ・イユンは?オーナーのハヴェは何処?」
イキナリ短機関銃を突きつけられた人々は、必死に首を横に振る。一方、裏口の方にはヲタッキーズが"舞い降りる"。
「姉様。前に現場が被った占星術師のサイモ・シルモが倒れてる。生足コスプレなんて無理しちゃって」
「エアリ。生足が無理…なの?」
「え。あわわ!姉様のコトでは決して…」
地雷を踏んだエアリに代わりマリレが地面に横たわるシルモの脈を取り、静かに首を横に振る。占星術師は死んでいる。
「動画を撮ってたみたい。スマホを回収して」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
一方、正面から突入したラギィ警部と警官隊。
「警部!会館には水槽がたくさんありますが、魚が全く見当たりません!」
「あら、ホントだわ。水槽の底に巻貝がゴロゴロ転がってるだけで…」
「ラギィ!警官隊のみなさん!貝の毒ょ!気をつけて!」
タブレットから叫ぶラギィ。
「その巻貝は、ツブ貝の1種でエゾバイ科のヒメエゾバラだわ。だ液腺にはテトラミンと言う有毒物質が含まれてる。恐らく、冥婚相手を生き埋めにスル前に盛ってるハズょ」
「ええっ!ハヴェは何処にいるの?令状を請求して!」
「裏でサイモ・シルモが死んでたわ」
ムーンライトセレナーダーが合流スル。
「生足の占星術師が死んだ?なぜ?」
「車に轢かれた。彼女が撮った最後の動画に青いバンに連れ込まれる、恐らく冥婚相手の女性が拉致されるトコロが映ってたわ」
「ムーンライトセレナーダー!私、この画像の女子に見覚えがアリます」
サリス捜査官が前に出る。
「前にハヴェの案内で"中華アキバ会館"に行った時、老夫婦が彼女の写真をハヴェに手渡してたのを覚えてる」
「ソレは、きっと死んだ息子の"冥婚"相手を選んでいたのょ。レストランで料理を注文スルように、写真を指差してコレとかアレとか決めていたンだわ」
「なるほど。あの掲示板は尋ね人なんかじゃなかった。"冥婚相手を選ぶメニュー"だったのね!」
一斉に事態は動き出す。
「成約した彼女は、今まさに埋葬されようとしている?」
「緊急事態ょ。令状はナイけど、ソコにあるPCを押収、直ちに立ち上げて。会計システムの"9"を9回連続で押してみて!」
「警部。拉致された女性がいます。彼女の埋葬場所は、西イズミ霊苑。埋葬日時は…今?!」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
直ちに西イズミ霊苑に、覆面パトカー、SUVが駆けつけ、ヲタッキーズが次々と"舞い降りる"。
「万世橋警察署!万世橋警察署!ハヴェ・イユン!動くな!」
「ヤメて!来ないで!名誉を汚さないで!」
「落ち着いて!もう何もかも終わりょ。誰の名誉が汚されると言うの?」
冥婚は既に始まっており、墓掘り人夫が墓穴を掘っている。
着飾った老夫婦。そして、女を羽交締めにしているハヴェ。
女の首筋に注射器を当てている。貝の毒か?
「亡くなった1人息子に伴侶が出来れば、あの夫婦も慰められるの!」
「でも、生き埋めにされる彼女はどーなるの?」
「警部、コチラ練塀町03。犯人は注射器を所持。狙撃は不可能です」
スナイパーから悲痛な声。
「"冥婚"は、マルチバース全体に伝わる中華の古い伝統ょ。彼と一緒になるのが、この子の運命だった!」
「助けて!生き埋めにされたくたい!」
「誤解しないで!コレは葬式ではなくて、結婚式なの!」
その時…
「◇●⊇⇔√∵∬!」
ムーンライトセレナーダーが一声叫ぶ。
憤慨したハヴェが何か叫び返した瞬間…
銃声。
「コッチへ!もう大丈夫!」
ハヴェは狙撃され、血飛沫を上げて倒れ、赤チャイナを着た女は、泣きながら呆然と立ち竦む。折れた注射器が転がる。
ラギィが訊ねる。
「ムーンライトセレナーダー、何て言ったの?」
「中華圏の人が最も忌み嫌う言葉ょ」
「だから、ソレは何?」
ムーンライトセレナーダーは答える。
「"恥知らず"」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
その夜の"潜り酒場"。
御屋敷のバックヤードをスチームパンク風に改装したら、ヤタラと居心地良くて常連が沈殿。メイド長はオカンムリだw
「新秋楼の出前中華、ホントに美味しいな。やや?フォーチュンクッキーだ。"頭を使い、かつ心に従え"。うーんルイナ、聞いてるかい?」
車椅子のルイナは、ラボから"オンライン呑み"で参戦中。
「でも、テリィたん。私の場合、頭=心ナンだけど」
「じゃ問題ナイや。ラギィのおみくじは?」
「"目を覚まさなけれは夢もかなわない"か…フォーチュンクッキー、深いわ」
どーやらラギィは心の底から感心しているw
「漢王朝以前までさかのぼるそうょ」
「え。スピア、フォーチュンクッキーがか?」
「いいえ。冥婚ょ。元は、婚約者達が共に亡くなった場合の慣習だったらしいわ。占星学的に結ばれた2人が、永遠に連れ添うための慣習。東洋的な発想ね。詩的だわ」
何処かウットリしてるスピアにルイナは手厳しい。
「気味悪いわwねぇミユリ姉様、生足仲間のサイモ・シルモのコトはどう考えるの?」
「生足仲間って…まぁ謎に満ちた人生ょね」
「秋葉原は、彼女を必要としてたのかしら。透視や超能力戦争って、週刊誌の作り話じゃナイと思うの。高名な物理学者である…」
超天才の蘊蓄をアッサリ遮るラギィw
「シルモは、誘拐の瞬間に犯人のバンにたどり着いてた。彼女は、彼女が超能力者であるコトを自ら証明して…死んだ」
「でも、ラギィ。彼女は自分が轢かれるコトは予想出来なかった。超能力者でないコトも証明したのでは?」
「あら?ソレもそうね。私には判断出来ないわ」
お。ココは僕が〆るべきかw
「1つ話をスルょ。ティエラ・デル・フエゴにマゼランが上陸した時、出迎えた人々は、ただ水平線を見ていたそうだ。カヌーより大きな船を知らない人々には、目の前のガレオン船5隻が見えなかったんだね。信じない者の目には、その船団は映らなかったのさ」
「待って、テリィたん!ソレは、つまり無知な者には単純な真実も見えないってコトょね?」
「もしかして、霧が船団を隠してたのでは?」
ダメだwやっぱり〆ラナイ←
「ミユリさん、どーやら僕の頭も霧がかかって来たようだ。おやすみ」
「お出掛けですか?いってらっしゃいませ、テリィ様」
「シルモは星に問いかけ、秋葉原のマゼランには羅針盤が見えない。ミユリさん、どーやら僕の人生は、未だ答えが出ないようだ」
カウンターの中のミユリさんは微笑む。
「そのようですね。でも、もし答えの出る日が来たら、その時は、誰よりも先に教えてくださいね」
おしまい
今回は、海外ドラマによく登場する"死後婚(冥婚)"をテーマに、失踪する捜査官、後を追うチャイナタウンの女達、冥婚シンジケートを仕切る中華姉妹、女をさらわれたギャング団長とそのしたたかな団員、チャイナタウンに明るい入"秋"税関取締局員、超能力で捜査に協力する占星術師、冥婚のシンジケートを追う超天才と相棒ハッカー、ヲタッキーズや敏腕警部などが登場しました。
さらに、主人公にとって人生とは何か、人生に答えはあるのか、と言った問い掛けもサイドストーリー的に描いてみました。
海外ドラマでよく舞台となるニューヨークの街並みを、すっかりインバウンドも増え、国際観光都市としての顔を取り戻しつつある?秋葉原に当てはめて展開してみました。
秋葉原を訪れる全ての人類が幸せになりますように。