夢じゃない世界へ
「夢じゃないから。あなた達のいうところの」
レン、という少女はこちらも見ずに言った。
何なんだ。
僕の疑問に思ったことが、聞こえているかのような返答に、ぐっと詰まった。
「みんなそう言うのよ。信じられないことが起こると、『ここは夢なんじゃないか』とかね。
でもそんなの、あなた達がいる世界が現実なのなら、ここだって現実だわ」
流れる、水みたいな喋り方だと思った。
淀みもなく、真っ直ぐに降りてくる。
「じゃあ、どこへ向かってるの。このらせん階段はいつまで上り続けるんだ」
「上へに決まっているわ。いつまでといえば、上へ着くまでよ」
押し問答みたいじゃないか。
何か言おうと思ったけれど、僕は黙った。
だってこれ以上、何を聞けばいいのだろう。
僕は大きく溜息をついてから上を見上げた。
らせん階段の先は見えないひおど遠くにあり、その先は雲だった。
雲の上までいけばいいのだろうか。
それとも、そこに何か別の目的地があるというのだろうか。
ふと、隣をみたけれど、レンは少し上向きなだけで、真上ではない、その次に上る階段をみつめている。
ただ、黙々と。
階段を上り続ける。
止まっていても仕方がなかった。
それに、何故か、僕は息も切れていない。そんなに、運動が出来たり、体力がある方でもない僕が、どうやってここまで上り続けてきたのだろうか。
近くにも、遠くにも、らせん階段は他にも見える。
僕みたいに、意味不明なままで上り続けている人がいるのだろうか。
オレンジの世界は、なんだか不思議な光景だ。
僕がいた町の夕日より、ぬるくて、なんだかふわふわとした光がただよっているような気がした。