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今日、一日でいくつの命が誕生して、いくつの命が旅立ったのでしょうか?
それぞれに物語があって、その結末は必ずしも素晴らしいものではないと思います。
私の最後はどうなるのでしょうか?正直、とても怖いです。
突然、この後すぐに何かが起こって死んでしまうかもしれませんし、寿命が尽きるまで神様と幸せに暮らしているかもしれません。
終わった先に何があるのか。それを想像するだけで、なかなか眠れなかったりします。
さて、ここは紗倉見の東島。とある高層ビルの屋上です。
私、喜屋武小禄はそこでとある人物を暗殺することになっています。
冷たい風が強めに吹いていて、あまり良い状況ではです。でも、タイミングは少ないので基本的に中止になることはありません。
端っこに足を垂らしながら座り、ターゲットが来る予定のビルを眺めています。
深夜に近い摩天楼は独特な雰囲気で好きではありません。色んな黒がうごめいているからです。私もその黒の1つなのですが・・・。
『もう少しで到着する。準備をしておけよ』
通信魔法から声が聞こえました。
今回の作戦でフォローしてくれるのは木々島さん。男性の先輩魔導師です。
「了解です」
彼は裏仕事をメインにしている方ですが、私と同じように別の仕事を兼任されているらしいです。でも、何の仕事をしているか聞いてみるといつもはぐらかされてしまいます。
速達で色んな部署を回りますが、彼を見かけたことはありません。一体、何の仕事をしているのでしょうか?
その時、端末が鳴りました。
きっと神様でしょう。ちょっとイラッとします。
「すみません。少しいいですか?」
『ああ、電話か。いいよ。時間になったら呼ぶ』
「ありがとうございます」
通信魔法を切ってから端末を見ると、やっぱり神様でした。
仕事が終わるまで連絡しないようにと伝えていたのですが・・・。
「何ですか?」
『小禄ー。腹が減った。まだ終わらぬのか?』
この神様は本気で言っているのでしょうか?
「もう少しで作戦が始まるんですよ。終わったら連絡すると言いましたよね」
『そうじゃったかな?』
「そうです。もう一度、言いますよ。終わったら連絡します。それに何が食べたいか決めました?決まってないと思いますけど・・・」
何となく分かります。
『うむ。たしかに決まってない』
・・・こいつ。でも、グッとこらえました。
「では、何を食べるか決めておいてください。いいですね」
『ああ、分かった。わしに任せておけ』
不安でしかありません。
『では、失礼します』
電話を切りました。時間も迫っています。
また、通信魔法で木々島さんとの通話を繋ぎました。
「すみません。お待たせしました」
『大丈夫。ちょうど、時間だ』
目の前に魔方陣を作り出します。
望遠魔法や透視魔法などを組み合わせた魔方陣で、今回のようにターゲットにつけられた座標を見ることも出来る便利な魔法です。
ターゲットはすぐに見つかりました。
「一魔之万具」
魔力の塊を弓に変え、魔力で作り出した矢を装填します。
正直、弓矢の使い方はよく分かっていません。でも、目的が達成出来ればいいのです。
部屋に入り、一息ついた瞬間を狙います。
息を止めて集中し、長い長い数秒間待ち続けました。
そして、その時になり、矢を放ちます。
真っ直ぐに飛んで、建物をすり抜けて、命中しました。
当たった対象を小さな球体に変える変身魔法です。
息を吐きます。
今回も何とか成功しました。自分や物を変身させるのはそこまでの難易度ではありませんが、他者を変身させるのは難易度が跳ね上がります。
「終わりました。回収をお願いします」
「了解。今から忍び込む」
木々島さんが球体を回収し、処理をすれば終わりです。
空を見上げます。東島の夜空は強い光の星しか見えません。
いつもの癖で火星を探して見つけました。一番明るいので見つけやすいし、星座の知識がなくても見つけられます。
・・・今回の仕事で何がどう変わるのでしょうか?誰が救われて、誰が悲しむのでしょうか?
最初の頃は人殺しがお金になって吐いてしまうこともありました。それが懐かしいと思えるくらい続けてきました。
この先の未来のことを考えると不安になります。その度に葉月に頼ってしまうでしょう。私の一生はこんな風に悩み続けることになりそうです。
また端末が鳴りました。
相手はもちろん、神様です。後、少し早かったら怒っていました。
「もしもし、何ですか?それに私から電話するって言いましたよね?」
『すまぬ。だが、とんでもなく美味そうな食べ物を見つけたんじゃ』
とてもウキウキしているようです。
「何ですか?」
『びーふしちゅーと言うらしい』
それって喫茶店パールにもありましたよね。いつも甘い物ばかり食べていて、気づかなかったのでしょうか?そんな感じがします。
『とてもよい香りがしてな。自然と足が進んでしまった』
「分かりました。終わったら向かいますから、先に入っていてください」
『おう。出来るだけ早くな』
嬉しそうな声と共に通話が切れました。
まだ仕事中なのに・・・。
ため息が零れました。
『終わったか?楽しそうだったな』
木々島さんの声。通信魔法を切り忘れていました。
「すみません。仕事中に・・・」
「別にいいよ。回収は終わった。後はこっちで処理しておく」
「いえ、最後まで・・・」
「いいから。早く行ってあげな」
気を使ってくれたのでしょうか?ここは言われた通りにしましょう。
「ありがとうございます。では、失礼しますね」
『うん。お疲れ』
通信魔法を切りました。
切り忘れるのは初めてです。疲れていたのでしょうか?それとも、神様のせいでしょうか?
ほうきを作り出して乗ります。
血を浴びたわけではないので、このまま行っても大丈夫でしょう。この前に買った香水を使えば何とか・・・。
ほうきを走らせます。
人間というのはよく分からないものです。
さっきまで少し沈んだ気分だったのに、神様の声を聞いただけでこんな気分になるなんて・・・。
神様のいる場所は端末の位置情報で分かっています。
急ぎましょう。食事は一緒に食べた方が美味しいですから・・・。
四月は手直しを中心にやっていきたいと思います。
色々と書きたい物があったり、順番を変えたりして苦戦する日々です。でも、本編とじゃない方を最低でも月一で更新できるように頑張りたいと思います。




